近年の医療環境の変化は激しく、「開業すれば誰もが成功する」時代ではなくなった、勝ち組でなければ存続できないとまで言われるようにもなっています。
クリニックを「ひとり院長」で運営するのは困難になってきています。そんな「ひとり院長」の大きな助けになる応援(非常勤)医師、それもクリニックに相応しい医師の見つけ方、見極める方のコツについてのお話です。
院長が直接実感をもって「いい」と見極めるための「面接ツール」を披露してあります。
最近のクリニック事情について
最近の医療環境の変化は激しく、病院中心の医療体制から地域医療へ、「治す」から「支える」などに方向転換がはかられようとしています。
方向としては地域に根付いた医療が目指される状況です。
このような状況を受けて、これを担うべく地域と向き合うクリニックを理念として開業しよう、あるいは地域に受け入れられ成長してきた事業を今後拡大していこうとの意欲を持った院長も多く見受けられます。
「患者からのアクセスを考えれば、年中無休で何時でもやっていることが大事」などとの思いが示されることもあります。
院長の思いは様々ですが、クリニックの実情は「開業すれば誰もが成功する」ような時代は、すでに過ぎ去り、「医院は飽和状態」だともいわれます。
厚生労働省統計(H29)によれば、全国的には開設・再開(5437件)を廃止・休止(5521件)が上回り、勝ち組・負け組が明確になる時代といわれます。
また、患者が医院を「選ぶ」時代になったとも言われます。
ひとり院長
このような状況の変化、時代の要求に対応しようとすれば、従来のようにクリニックを「ひとり院長」で運営できるかどうかは疑問です。
診療、経営のあらゆる面に過重な負担がかかってきます。
一方で医師に対しても「働き方改革」が求められています。
「ひとり院長」で頑張るには負担が大きすぎます。
このような状況に対処するには「ひとり院長」を力強く支える、協力してくれる存在がぜひとも必要です。
「ひとり院長」を脱却する軸となる存在は応援(非常勤)医師です。
「ひとり院長」脱却のためのどのように応援してもらうか、各クリニックの実情、将来構想のよって違いがあり、どのような応援のかたちが適切か明確にしておく必要があります。
非常勤医師
診療負担の軽減を考え、非常勤医師の協力を仰ぐことが出来れば、過重なクリニックの診療負担軽減を図りながら、地域のクリニックとして期待にも応えることが出来ます。
一口に非常勤といっても、非常勤医師には二種類あります。週1日や2日など勤務日を決め、定期的に勤務する「定期非常勤」と、特定の日だけ勤務依頼する「スポット」です。
クリニックが必要とする勤務形態に見合った医師を受け入れるわけですが、ここで注意しなければならないのは、いずれの勤務形態であっても直接診療に携わる医師ですから、その評判はそのままクリニックの評価に結び付きます。
医師の流動化
やはり「いい医師」を選びたい。従来は医局のアルバイトも多く、大学と関連病院の関係維持などの目的も含まれ、クリニック側からの選択がしにくかったという状況があったかもしれません。
そのため「いい医師」を選択するという意識が確固としていたとはいいがたい。
しかし、近年は医師の流動化が起き、非常勤として稼働する医師の割合も大きくなっています。
自院サイト、広告媒体、人材紹介、スカウト、ハローワーク、縁故紹介など様々な形態での医師探しが可能となっています。
医師の人材紹介ビジネスの増大も目につきます。
一見便利で期待に応えてくれそうですが、「いい医師」を最後に見極めるのは院長自身です。
いい医師の条件
「いい医師」の条件とは、様々に言われますが、「スキル」が確かで、「コミュニケーション力」が高いことに尽きるようです。
医療に向き合う医師として日々研さんを忘れない真面目さが「スキル」の確かさとなり、患者さんに安心感を与えられる接し方が「コミュニケーション力」として示されるともいわれます。
「この先生に診てもらうだけで安心する」と患者さんが言ってくれるような医師が「いい医師」ということになります。
「いい医師」の基本はこのように言うことが出来ますが、より具体的には院長のクリニックにとって「いい」つまり「相応しい」医師でなければなりません。
院長とともに診療にあたるわけですから、クリニックの顔としてふさわしい、院長のパートナーとして認められる存在でなければなりません。
そのような医師は院長自らが見極めるのでなければ、求めることが出来ません。
欲しいドクターの見極め方(身体言語による)
院長とともにクリニックの診療を担当してくれる医師の見極め方を紹介します。
特に、言葉や話される内容だけでは見極めにくい側面、パーソナリティーの本質にもかかわるところを抑える「観察」と「面接」のコツを紹介します。
人を見極めるには直接会ってみないとわからないものです。必ず面接が行われますが、これがどのように行われるか辿りましょう。
面接場所
まず面接が実施される場所です。
面接はクリニックで実施するのが原則です。
クリニックのある地域をどのような気持ちや意識で訪れるかというところから当該医師との出会いが始まります。
当該医師にはこの地域を受け入れてもらう必要があります。
地域密着クリニックの対象患者はこの地域に生活する人々です。
その地域での診療であれば、この地域に対する姿勢がその後の診療姿勢に影響を与えます。
第1のチェックポイント 「クリニック訪問」
面接予定の医師の最初の観察ポイントはクリニックの玄関に訪れた時です。顔を上げクリニックの正面にまっすぐ立ってくれれば第一関門合格です。
訪問者は周辺地域を目にしながらクリニックに至るまで、地域の雰囲気を感じており、なじめるものであれば問題ありませんが、どこかに違和感やなじみにくさを感じながらであれば、その様子がここで示されます。
このなじみにくさはその後の診療に対する姿勢に影響します。
第2のチェックポイント 「スタッフへの態度」
院長が作り上げるクリニックの理念とイメージの構成要素であるスタッフとのコミュニケーションの予測がここで可能です。
来訪の告げ方、案内に対する態度、面接場所までの様子。視線、歩行姿勢、歩幅、声の調子など基本項目を観察することでクリニックスタッフへの基本態度が確認できます。
基本は視線、歩行、声いずれも自己の印象付けが優先するか、場との調整が優先するかここに視点を定めて観察することが大切です。
第3のチェックポイント 「面接場面」
いよいよ面接室です。院長との出会いです。
医師としてクリニックを支えてくれる存在であってほしいわけですから、院長をどのように受け入れるか、本音のところを知りたいものです。
双方の位置としては1mの間隔を置ける応接ソファーか椅子、その間に小テーブル。自己を演出できる余裕を残しながらも、二者関係のうちに取り込む状況が設定できます。
第4のチェックポイント 「二者関係」
二人が正対することになり、双方逃げることはできない場面です。重要なのは院長を当該医師がどのように見るかであり、そのうえでどのような反応を示すかです。最初に観たいのは姿勢です、正立、前傾、後傾、一貫して同じ姿勢か、状況によって変化するか。正立であれば中立、前傾であれば同意、共感、後傾であれば回避、拒否といった見方で観察するのが有効です。話題に伴って変化を見せます。院長の理念、方針、クリニックへの思いなどに対してどのような対応になるかよく見てください。
第5のチェックポイント 「確認操作」
院長自身は相手に対する状況刺激であると同時にそれを評価する基準でもあり、その意識をもって面接にあたることが前提です。
これがあれば必要に応じて院長側から刺激要素を加えることが出来ます。院長の側から、経営理念、診療方針、望ましい人材像、求めるスキル、院内のルールなどを説明する。
院長の話に応募者が共感しながら聞いているか観察すれば、自院に合う人材かどうかを判断できます。
相手が受け入れるのかどうかわかりにくいときは、話題に伴って院長側から前傾姿勢になることで、相手の反応を見極めるという手法が可能です。
姿勢と同時に視線、声の調子、仕草の活用もできます。
第6のポイント 「相性」
ボディラングエージに不案内であったとしても、二者関係にある場で面前の医師の存在がなじめるものであり、場を共有することに違和感がないと感じ、コミュニケーションにおいて「間」の良さを確認できるのであれば、いわゆる院長との相性がいいということになります。
開業、あるいは事業拡大を積極的に考える院長と「相性」のいい存在は重要です。
また、この二者関係における「間合い」は診療場面での患者対応にもそのまま反映されます。
第7のポイント 「結論」
面接終了場面は評価の結論を得る機会になります、院長の終了を示唆する言動への反応がこの面接の総合評価に結び付きます。
面接開始時と終了時で声の調子が上向きであるか、視線はより院長に向けられているか、動作速度は速くなっているか、仕草に迷いはないかといった様子が観察ポイントになります。
面接を通して院長とクリニックをどのように受け止めたかがこれらの観察ポイントに示されています。
話された言葉と内容以上に、このクリニックへの本音が如実に表れます。院長がこの結論を心地よく感じ、受け入れることができれば「本物のお助けドクター」を得たことになります。
「いい医師を見つけたある院長のお話」
永く地域住民の健康を守り続けてきた院長の決断。
患者増への対応と「ひとり院長」の限界を感じていた院長。
老朽化した既存医院の改築・新築についての迷いに結論を出すに至ったところには「信頼できる協力医師」を得たことが大きいと言われました。
新たな院の軸が決まることで、それに相応しい新たなクリニックが求められることになります。
院長の理念や思いを生かしながら、建造物としてのクリニックを築き上げる作業がこれに続きます。
ここで院長の理念と思いを建造物として具現化する「設計」が重要になります。
「設計」についてはクリニック建築を熟知した専門業者の力を借りるのが肝要です。診療科目によって異なる医院の診察室や医療設備までも承知したうえで、院の構成、面積などについてひとつひとつ話し合いを重ねることになります。
地域に信頼されている現在の診療スタイルのいいところを生かした設計、それを踏まえながらも、より優れた動線計画を作り上げ、院長の理念である「患者様のQOL」お第一に考えた医院づくりが完成することになります。
院長の理念の集大成ともいえるクリニックの誕生です。
まとめ
地域に受け入れられ、患者様に認められるクリニックであるためには、クリニックの積極的な姿勢が欲しい。
このような院長の理念と思いを共有してくれる応援医師を見極めるツールをご紹介しました。
医師の流動化に伴って、採用ルート、採用手段は多様になってきてはいますが、その中から「本当に」欲しい応援医師を見つけるためには、最終的に院長が直接視て、院長自身が確認することが一番です。
「いい医師」が見つかることを願っています。