クリニックの開業形態は、いくつかあります。
そんな中でも華やかで、目立つのは「ビル診」と呼ばれるものです。
ビル診とは、ビルのテナントに入居して開業するスタイルをいいます。
華やかなイメージがあるように、ビル診で開業するメリットがあるように、もちろんデメリットもあります。
しかし、デメリットとなる部分も、ご自身の専門によっては、大きなメリットなることがあります。
今回は、開業形態の一つ「ビル診」について詳しく紹介するとともに、デメリットを強みにするポイントをご紹介します。
クリニックの開業形態とは
クリニックを開業するといっても、実は開業形態はいくつかあります。
戸建て
土地を用意して、自身でクリニックを建設タイプをいいます。
自分の思うデザインで建設ができたり、設備を導入したりと、これまでご自身が思い描いてきたクリニックスタイルを実現することができる、最もポピュラーな開業形態です。
十分な土地が必要となること、初期投資も掛かるので、地域医療として欠かせない地位を築くことで、長く愛されるクリニックにすることができます。
ビル診
ビルのテナントに入居して、開業するクリニックです。
テナントの広さが決まっているので、できることは限られます。空間を有効に使えるように工夫することが重要です。
しかし、場所が駅近であったり、都心にあることで、認知度が高いので知ってもらうための宣伝費用は抑えることができます。
医療モール
広大な土地、もしくはビル一棟に様々な診療科の医師を集めて開業を目指します。オーナーが他にいることで、医療モールが目指す理念やコンセプトに共感できる医師が集まってきますから、クリニック同士で患者様を紹介しあうことや、意見を聞くことが容易いので、コミュニティの中で、患者様の治療をすることができます。
以前は、郊外のベットタウンを中心に多く存在していましたが、最近では都心のビルワンフロアを医療モールとして、健診ができるクリニックを入れています。企業と契約が取れたら、安定した報酬がクリニック、オーナーにも入るので、入居を希望する医師も多くいらっしゃいます。
どの開業形態でも、初期投資から安定してクリニックが経営できるようになるまでは、苦労することはもちろんあります。
ご自身の考えるクリニックは、どの形態で開業することで可能となるのかを、よく考えてから決める必要があります。
ビル診のメリット
ビル診は、すでに形が決まっているので、戸建てのように建設する必要がありません。また、場合によってはクリニックが入居することを前提にして作られている時もあるので、診療科は限られますが、医療機器への費用も抑えることができます。
このように、戸建てや医療モールと比べると、初期費用の予算を下げることができます。
また、ビル診を希望する医師の方なら、誰もが「駅近く、または駅と直結」であることを望みます。これは、患者様の通院のしやすさを考えてのことです。
万が一、郊外でと考えらるなら、医療モールの中、もしくは周辺に人の行き来があるのかを確認してから入居することをオススメします。
さらに、ビル診の場合は、常に人の行き来がありますから集患に困ることが少ない可能性があります。これは立地条件によるので、十分に検証しておきましょう。
ビル診のデメリット
ビル診の魅力は、やはり華やかさです。都心のビルは誰もが知るような、有名なビルばかりです。最初は、そんなビルでの開業を目指すつもりはなくても、いろんな物件を見ていくことで、知らぬ間に高望みな物件も候補に入れてしまう可能性があります。
初期費用は抑えられても、開業後のランニングコストは予想以上に掛かることも考えられます。
・初期表は返済できるのか
・ランニングコストは支払っていけるのか
あまりにかけ離れている時には、冷静に考える必要があります。
また、駅近で患者様を集患しやすいというメリットはありますが、逆に定着しにくいということも考えられます。出先で体調を崩した。健診や企業と契約しているからと理由で来院される患者様は、2回目からは自宅近くのクリニックへの転院を希望されることが多くあります。
さらに、ビル診の場合、内装や看板などについて制限が入る可能性があります。オーナーの意向であったり、ビルのセキュリティ面から制限が入ります。セキュリティ面から考えると診察時間や曜日にも制限が出る可能性があります。
ビル診のデメリットを強みにするポイント
一見、ビル診のデメリットとなることも、実は強みとして活かす方法があります。
今回は、下記の3つのデメリットを強みとしてご紹介します。
・患者様が定着しない
・ビルの中で見つけにくい
・テナント料が高い
患者様が定着しない
通院してくれることで、安定した収入に繋がります。また、郊外の戸建てのくりになら、患者様の家族や知人に紹介してもらうこともできます。
しかし、ビル診では「出先で仕方なく」、「決められたクリニックだったから」という理由が考えられ初診の一回で終わる可能性があります。
定着しないことを強みにあるには、最初から一回、または決められた回数だけで完結するような治療をメインとすればいいのです。
先に先述したように、健診はそれに該当します。他にも眼科であれば、コンタクトレンズの定額制を導入して買い物のついでに購入することをメインとすれば患者様は切れることはありません。
さらには、美容外科であれば、あらかじめコースでの契約が多いですから、それを見込んで患者様の回転数を上げていくことで、返って予約が取りやすくなります。
ビルの中で見つけにくい
都心のビル診ともなれば、案内図に看板はあるけども、場所を正確に知っている人はほとんどいません。
つまり、場所が分からないから通院しづらいという患者様もいらっしゃいます。
しかし、この「場所が特定しづらい」といのも、大きな強みになります。
例えば、診療内容によっては、人に知られたくないという患者様もいらっしゃいます。非常にデリケートな問題で、クリニックに入る姿を見られたくということもあります。
・婦人科(不妊治療)
・美容外科
・泌尿器科(性病、生殖器)
上記のような診療科と理由では、通院する姿は見られたくない患者様がほとんどですから、ビル診のクリニックにすることがメリットとなります。
多くの人の中に紛れ込んでしまうことで、クリニックに通院していることは気づかれません。もっと言えば、どんな目的で来ているか興味もありません。
場所が特定されないことで、通院しやすくなるクリニックにとっては、非常に強みとなります。
テナント料が高い
都心で有名なビルのテナントとなれば、テント料は非常に高くなります。治療で得た報酬がテナント料で消えてしまっては、クリニックの継続が困難となります。
しかし、有名なビルにあるクリニックに通院することをステイタスとして売り出すことができます。
この場合、認知度を上げることも必要ですが、口コミで広がることも期待できます。なぜなら、患者様自身が「◯◯ビルにあるクリニックに通っている」と、話のネタにしているからです。
特に、美容外科系は患者様が、どこ通院しているかもステイタスにしているからです。有名なビル、駅近、内装の綺麗なところ、これらも通院の条件に選んでいる人が多くいらっしゃいます。
診療報酬ではなく、自由診療を含む診療科であれば、テナント料は高くともステイタス(有名税)だと思い支払うことで、経営を成功させることもできます。
まとめ
今回は、ビル診の紹介と、ビル診のデメリットを強みとするポイントをご紹介しました。
どんなことでも一方向から見ているだけでは、デメリットはデメリットのままです。
しかし、少しだけ角度を変えることで、実はデメリットがメリットとなり、患者様に喜んでもらえる医療を提供することができます。
ビル診で成功すれば、別に戸建てのクリニックを建設して、ビル診のクリニックを窓口として展開することも可能となります。
ぜひ、ご自身の専門とビル診のデメリットが繋がるポイントを見つけてください。