新型コロナウイルスの流行以降、クリニックの診察はこれまで通りとはいかず、やり方を変えて新しいスタイルを取り入れるクリニックが増えています。
多くのクリニックでは、マスクの着用、消毒、事前の症状確認を実施しています。そして一部のクリニックでは、診察を完全予約制にしています。
大規模な病院では、予約をすることは当たり前になっていますが、クリニックで予約制というのは前例がほとんどありません。
集患はクリニックの売り上げを左右することなので、完全予約制にすることは得策なのか、メリット、デメリットから追求してみましょう。
クリニックでの完全予約制が増えている
新型コロナウイルスの流行により、感染拡大予防として「密を避けるため」に診察を予約制にしたクリニックが多くあります。
診察を予約制にすることで、待合室の密を避けることができるので患者様だけでなく、スタッフに感染する確率を下げることができます。
一度予約制にすると、患者様は次回の予約をして行くようになるので、完全予約制の形にすることができます。
これまでは限られた診療科のみ
大規模な病院では当たり前ですが、クリニックの診察で完全予約制にすることは、ほとんどありませんでした。
クリニックで完全予約制にするのは、限られた診療科のみでした。
・手術を目的とする診察をする形成外科、美容整形
・カウンセリングをメインとする精神科、心療内科
・不妊治療など人目に触れない診察を希望される婦人科
また、診療科以外にも、小児科のワクチン接種などは時間外に実施することがあるので予約制にしているところがほとんどです。
完全予約制のメリット
新型コロナウイルスの感染予防のためとはいっても、何かしらのメリットがなければ完全予約制にすることは避けるはずです。
実際にどんなメリットがあるのか、ご紹介します。
待合室の密を避け、感染予防できる
待合室の密を避けるために、クリニックも様々な対策をされています。
例えば、座る感覚を空けたり、換気をすることは一例になります。
体調が悪くて来院される患者様にとって、座る場所がないというのはとても辛いことです。人が多いと空気中にウイルスが浮遊することも考えられます。
どんな対策をしても、不安を取り除くことはできません。
完全予約制にすることで、自然に来院数を減らせば患者様の来院する不安を取り除くことができます。
時間通りに診察が終わる
クリニックの診察時間を標榜通りに終わらせるのは、意外と困難なことです。地域性があるとも言われますが、診察時間ギリギリに来院される患者様が少なくありません。また、繁忙期となれば、終わりが見えない状態になるクリニックもあります。
患者様が多く来院されることは、クリニック経営としては喜ばしいことですが、クリニックで働くスタッフとしては辛く感じて、やめてしまう原因ともなります。
これまでの状況を考えると、完全予約制は患者様の来院される時間が分かっているので、時間通りにクリニックを閉めることができますし、スタッフも残業なく終えることができます。
1日の集患数が把握できる
毎日の集患数は、1日の最後に集計をして初めて分かりますが、完全予約制になれば事前に集患数を把握しておくことができます。
日によって人数の差はありますが、予約が少ない日があれば予約変更を希望される患者様をご案内することができますし、急な予約にも対応することができます。
予約人数が多い日には、予約してあるとはいえ、診察時間が遅れないように事前に対応を考えておくこともできます。
多い日、少ない日が分かることで業務への対応ができるので、スタッフも働きやすくなります。
完全予約制のデメリット
完全予約制にすることでのメリットは多いですが、デメリットもあります。
どんなことが問題となるのか、ご紹介します。
新患獲得が難しい
完全予約制にすると、新規の患者様を獲得するのが難しくなります。
例えば、以前にご自身のクリニックに通院してくださった患者様が、体調不良で直接来院されたとします。もちろん予約をしていませんから、診察をすることは難しいです。
このようなケースの場合、苦情になりやすい案件でもあります。
予約制になった理由に納得してくださる患者様ばかりではありません。予約外で診察をするとしても予約の患者様が優先ですから、すぐに診察することは困難です。
ホームページや院内掲示をしてあると、クリニック側は「理解してもらえている」と思いがちです。
新患を増やすこともクリニック経営には大切なことなので、完全予約制にする中で、獲得して行く方法はかんがえる必要があります。
予約にムラができる
予約制にして患者様の人数を把握することは容易くなりますが、予約数にムラができることは防げません。
表向きは完全予約制ですから、予約数の少ない日に大勢の患者様が来院されるということはありません。休診明けの月曜になら予約外の患者様を期待できますが、確実なことではありません。
予約数が少ない日の対応は、事前に考えておく必要があります。
予約変更が困難
通院されている患者様は、基本的に次の予約をして帰られます。しかし、急な用事によって予約の日時を変更を希望されることがあります。
すぐに連絡をしてくださいますが、変更希望の日時を確約することができません。
なぜなら、薬を1ヶ月もらう患者様の予約は、同様の患者様で1ヶ月前には埋まってしまうのです。前後の日にちも同様のことがいえます。
そうなると、空いている日時を探して、患者様の予定と照らし合わせながらの変更になるので、非常に困難になります。
場合によっては、こうしたやりとりが面倒ということで、別のクリニックに変えてしまうケースも考えられます。
薬がなくなる
予約変更で挙げられる問題として、薬がなくなることが懸念されます。
通常、次回予約時には処方された薬は無くなっています。飲み忘れで手元にあることも考えられますが、それでも2、3日のことです。
服用される薬によって、体調を崩す患者様もいますし、命に関わる患者様もいらっしゃいます。
予約変更時にスタッフが薬を確認すること、もしくは薬だけ処方をするのか、対応マニュアルが必要となります。
事前に対策を考える
メリットとともに、デメリットを紹介しましたが、事前に対応マニュアルが必要となる場面が多そうです。
ここでは、ポイントとして抑えるべき問題点をご紹介します。
患者様離れを阻止する
完全予約制というのは、患者様も慣れてしまえば、待ち時間が少なくスムーズに診察ができるので喜ばれるシステムですが、慣れるまでは大変ですし、知らずに来院して診察できないとなれば、二度と来ないことも考えられます。
まずは、患者様が戸惑うあらゆる場面を考えてみましょう。
・予約なしの来院
・予約変更
・薬がなくなった
・予約が違っていた
予めトラブルとなりそうな場面を予想して、その時の対応方法を考えておきましょう。
この時に注意しなくてはいけないのが、対応方法を全スタッフに伝えて周知させることです。
対応を間違えると、患者様は名指しでスタッフを責めます。そして、診察室で苦情を聞くことになります。
間違えないように徹底しましょう。
トラブル対応のマニュアルを作る
対応方法を伝えるだけでは不安に思う時には、マニュアルとして残しておきましょう。電話や窓口はもちろんですが、処置室でも聞く患者様もいらっしゃるので、こちらにも置いておくと、看護師も安心して対応ができます。
マニュアルは事前に対応できることばかりでなく、実際にあったトラブルと対策を追加して書き込んでいくと、その後同じ失敗をすることはありませんし、スタッフの対応にも不安がなく、自信を持って患者様と接することができます。
まとめ
診察を完全予約制にすることのメリット、デメリット、対策方法についてご紹介しました。
予約制には賛否両論あります。導入するかどうかはクリニック次第ですし、来院される患者様の年齢層にもよります。
ご自身のクリニックに合う方法なのか、じっくり検討してください。