クリニックの開業をお考えの先生方、クリニックの広さはお決まりでしょうか?
開業に向けて土地探しをする際に、どのくらいの面積が必要なのか悩まれる方も多いはずです。
適切な広さを確保することは、医療機関として機能するためや医療機器を設置するための他にも、患者様に快適な医療環境を提供し、スタッフが効率的に働けるクリニック作りに繋がります。
今回は、クリニック開業に必要な面積の目安についてご紹介します。
クリニックの機能に応じた必要面積
クリニックに必要な面積は、診療科目や提供する医療サービスによって異なります。
以下に、主な機能に応じた面積の目安を示します。
また、標榜する診療科によって各場所のポイントが異なります。どんなところに注意が必要なのか、こちらのポイントについてもご紹介します。
診察室・処置室
- 1 室当たり:15 ~ 20㎡ 程度
- 必要室数:診療科目や患者数に応じて決定
診察室は、医師が患者様を診察するための部屋です。処置室は、点滴や注射、創傷の処置などを行う部屋です。
これらの部屋は、診療科目や予想される患者数に応じて必要な広さと室数を確保しましょう。
一般的に、診察室と処置室を合わせて 1 室当たり 15 ~ 20㎡ 程度の広さが必要とされています。
眼科の診察室は他の診療科と違い、部屋を暗くして行います。照明を抑えるだけでなく、カーテンなどで光を遮断させてます。広さとカーテンレールなど設置するサイズも考慮してください。
エックス線室
- 1 室当たり:20 ~ 30㎡ 程度
- 必要室数:一般的に 1 室
エックス線撮影を行うための部屋です。
放射線を扱うため、法令に基づいた放射線防護設備が必要です。
また、機器の配置や操作スペースを考慮して、十分な広さを確保する必要があります。
内科と整形外科においては、躯幹や足など幅広く撮影することが考えられるので大きな寝台が必要です。また、逆に耳鼻咽喉科、乳腺外科のように一部の部位のみを撮影する診療科では、比較的狭くても問題ありません。
待合室
- 1 室当たり:20 ~ 30㎡ 程度
- 必要室数:患者数に応じて決定
待合室は、患者様が診察までの待ち時間や会計を待つ間に利用する部屋です。
患者様が快適に過ごせるよう、十分な広さとゆとりあるレイアウトを心がけましょう。
また、感染症対策として、患者様同士の距離を保てるスペースも必要です。
隔離室と呼ばれるスペースが必要なのは、小児科です。感染する疾患が多い子供の場合、隔離室を用意することで待ち時間をストレスなく過ごしてもらうことができます。
受付・事務室
- 1 室当たり:10 ~ 20㎡ 程度
- 必要室数:一般的に 1 室
受付は、患者様の対応や会計業務を行う場所です。事務室は、カルテの管理や事務作業を行う部屋です。
これらの部屋は、スタッフが効率的に働けるよう、十分な広さと適切なレイアウトを確保しましょう。
最近では、電子カルテが主流になっているので、カルテの保管スペースを確保する必要がありません。同様にレントゲンフィルムの保管スペースも不要です。
クリニックの場合、事務室がないケースもあります。受付にあるパソコンで業務を行い、会計をするということがほとんどです。設計の段階で、確保するスタッフの人数によって、事務室が必要なのかを考えるようにしましょう。
トイレ・洗面室
- 1 室当たり:3 ~ 5㎡ 程度
- 必要室数:患者用と職員用を別に設置
トイレと洗面室は、患者用と職員用を別々に設置する必要があります。
特に患者用トイレは、車椅子やベビーカーでの利用も想定し、広めのスペースを確保しましょう。
関連法規や診療報酬上の施設基準を満たすためには、それぞれの機能に応じた十分な広さを確保することが重要です。
各部屋の配置や動線にも気を配り、患者様とスタッフにとって使いやすいクリニックを目指しましょう。
患者用、職員用と別々に設置するほかに、男性と女性のトレイも別々に用意してください。LGBTQなど性別の問題はありますが、使用する側のストレスを減らすということは必要です。比較的、女性の方が男女一緒であることに嫌悪を感じます。
最近の傾向について、専門家に相談してみましょう。
広い面積が必要なのは内科と整形外科
診療科別に広い面積を必要とするのは、内科と整形外科です。
内科においては、処置室のベット数を多くする必要があります。繁忙期の点滴する患者様、内視鏡検査時に麻酔を使用した患者様、気分が悪く待合室で待てない患者様、一度に重なるとベットの数は圧倒的足りません。
整形外科では、レントゲンの他にCT、MRIの設置、リハビリ室の確保など、医療機器が大きいために広い面積が必要となります。こちらも患者様をお待たせしないように使用頻度、利用者数を考えて設置を決めてください。
意外なところでは耳鼻咽喉科
広い面積を必要とする診療科は内科と整形外科はイメージしやすいです。
しかし、意外にも広さを必要とする診療科が「耳鼻咽喉科」です。
耳鼻咽喉科では、検査用の医療機器が多くあります。聴覚検査などは電話ボックスぐらいの大きさと広さが必要になります。
子供の受診も多いので、待合室の工夫も必要です。
開業前には、クリニックを見学するなど設計を考えておくのがスムーズです。
患者数や将来の展望を見据えた面積設定を
クリニックに必要な総面積は、上記の各機能に必要な面積を合計して算出します。
ただし、 実際に必要となる面積は、想定される患者数や将来的な事業展開によって変わってきます。
例えば、開業当初は内科のみの診療で始め、将来的に他の診療科目を追加していく場合、
当初から将来の拡張を見越した広さを確保しておくことで、スムーズな事業展開が可能になります。
また、患者数が増加した場合に備え、待合室や診察室を拡張できるよう、ある程度の余裕を持った面積設定も重要です。
開業当初は必要最小限の面積で始め、徐々に拡張していくという方法も一つの選択肢ですが、再度工事を行うことにもコストがかかります。
将来的な展望を見据えて、適切な面積を設定することをおすすめします。
物件選びのポイント
クリニック開業に適した物件を選ぶ際は、前項で解説した必要面積を満たしているかどうかが大切なポイントです。
加えて、以下の点にも注目しましょう。
- アクセスの良さ(駅からの距離、バス停の有無など)
- 駐車場の確保(患者数に応じた台数)
- 周辺の医療機関の状況(競合の有無、連携の可能性など)
- 建物の状態(新耐震基準を満たしているか、バリアフリーに対応できるかなど)
物件選びは、クリニック開業の成功を左右する重要な要素です。
必要面積だけでなく、さまざまな観点から総合的に判断することが大切です。
まとめ:クリニック開業の成功のカギは適切な面積設定
クリニック開業に必要な面積は、診療科目や提供する医療サービス、想定される患者数などによって異なります。
機能ごとに必要な広さを把握した上で、将来的な展望も見据えて総面積を設定することが重要です。
適切な面積設定は、患者さんに快適な医療環境を提供し、スタッフが効率的に働ける
クリニック作りに繋がります。
物件選びの際は、必要面積だけでなく、アクセスや周辺環境なども総合的に判断しましょう。
クリニックの成功のカギとなる「面積」について、ぜひ参考にしてみてください。
開業に向けた準備が少しでも前進することを願っています。