6月を過ぎて新型コロナウイルスの感染リスクが減少したと言われますが、クリニックや医療機関においては、必ずしもそうとは言えません。
発熱など症状の有無に関わらず感染することが分かっているので、院内感染を防ぐことを徹 底するほかありません。
そこで今回は、院内感染を防ぐためにできること、そしてスタッフへの感染を防ぐためにできることをご紹介します。
新型コロナウイルスの院内感染を防ぐ
冒頭でもご紹介しましたが、新型コロナウイルスに感染していても、必ずしも症状があるとは限りません。
全く関係ない症状で来院された患者様が感染していることも考えられます。
感染状況が分からない中でできることは、クリニックで院内感染をしないことをです。
そのために、医師やスタッフだけでなく、患者様にもお願いすることもあります。
感染疑いの受診を明確に伝える
まずは、「当院で新型コロナウイルスの感染について診察をしているのか?」を明確にしてください。
感染を疑う人が、受診できる医療機関や受診方法を知らないことがあります。
整形外科や産婦人科など標榜している診療科によっては、受診を希望されることはありませ んが、内科や耳鼻咽喉科などは、受診を希望されることがないとは言い切れません。
クリニック、感染疑い者ともに、不安を払拭するために、感染疑いの受診ができるかを明確にしておきましょう。
診療制限がある
受診について明確にすることができたら、次に診療に制限を設けているかの有無です。
発熱や倦怠感があっても、「ただの風邪だから」と受診を希望する患者様はいます。
こうした新型コロナウイルスの感染を疑う症状の患者様に対して、診療制限をしている場合、また は手順を設けているなら、誰にでも分かるように、院内やホームページにお知らせとして掲 示してください。
1.診療制限が必要だと考えられる症状について
・体温が37.5度以上ある
・発熱 ・咳など風邪の症状がある
・倦怠感がある
・その他、医師が制限が必要だと判断する場合
2.感染予防の協力を呼びかける
患者様への配慮として、理解を求める内容を掲示しておくことが必要です。
誰もが感染しないように努力をしていますが、ただ一方的に言われると納得がいかないこともあります。
特に診療制限については患者様の理解が最も必要なことです。
丁寧な対応を行ってください。
院内感染しないためにできること
来院される患者様に対して、院内感染を防ぐためにできることを行っていきましょう。
1.来院時の検温とマスクの着用
来院される全ての患者様に検温とマスクの着用をお願いしてください。
可能な限り末端で感 染を防ぐことに力を入れてください。
37.5度以上の発熱時に感染を疑われることがあるので、院内のマニュアルに沿って患者様を対応してください。
いまでは外出時のマスクは当たり前のようになっていますが、忘れることもあると思われるので、予備を用意して患者様に渡してください。
2.問診を徹底する
定期薬をもらうだけの患者様もいますが、一人ずつ来院された理由と体調について問診を 行ってください。
問診を嫌う方もいらっしゃいますが、協力していただけるように配慮してください。
3.人数制限と間隔を空ける
待合室やリハビリ室など、患者様とスタッフが密接になりやすい場所では、事前に人数制限 や間隔が空けられるようにしてください。
例えば、間隔を空けたい空間には張り紙をしてください。
明確にしてもらうことで患者様の 不安もなくなります。
4.消毒の徹底
院内の各所に消毒液を配置して、患者様が消毒しやすい環境を整えてください。
・玄関
・診察出入り口
・洗面所
・器具に触れる検査室
・廊下
院内で患者様の目に止まりやすい場所、「いま消毒したいと思うタイミング」などを考えて配置してください。
5.換気する
院内は衛生、プライバシーなどから診察室など解放することが難しい場所が多くあります。
診察や治療に影響がない高い位置にある小窓などを開けてください。
また、換気することを掲示して一時的に診察室や待合室の窓を開けることを促してから、数分でも換気を心がけてください。
どうしても無理な場合は、加湿器を設置して対応してください。
スタッフが感染しないためにできること
やはり院内で働くスタッフが感染しないことが最も重要です。
院内感染でのクラスターは避けたいので、一人ひとりが高い意識で行ってください。
1.毎日の検温(起床時と出勤後)
毎日の検温は、起床時と出勤後の二回行ってください。
何より自分の健康状態をしっかり確認してください。
何らかの症状はないかを把握してく ださい。
2.院内ではマスクを着用する
院内でのマスク着用は徹底してください。
一時は、医療機関ですらマスクを確保することが難しいといわれましたが、少しずつ流通し ています。
可能な限りマスクを使い回さずに、使い捨てて使用してください。
3.患者様ごとに手洗いと消毒を実施する
患者様ごとに消毒をすることで、医師やスタッフが感染の媒体になることが避けられます。
診察、治療のいずれでも消毒を実施してください。
4.共有する物品や器具の清掃と消毒
検査に使う物品や、リハビリで使用する器具は多くの人が触れます。
こうした共有する物に対しても、使用する都度に消毒を実施してください。
また、汚れが気になる場合には清掃も行ってください。
5.診察・治療時の距離と配慮
診察や治療時の接触は避けられません。
これは、患者様自身も理解していますが、できることなら接触する回数を減らしてください。
話を聞くときにも声が届く範囲で距離を保ち、患者様に配慮してください。
電話診療と処方箋発行について
新型コロナウイルスの流行に伴って、これまで診察のルールが厳しかった「電話診療」が緩和されています。
システムを整えて実施することで院内感染を防ぐことができます。
1.対象者を明確にしておく
電話診療では症状や処方についてルールを明確にしておく必要があります。
対応できる時間などはもちろんですが、対応できる、対象となる患者様を明確にしてください。
・症状や状態が安定している
・薬の管理ができる
・対面診療が必要ないと判断できる慢性疾患
・緊急性がない
対象となる患者様は、医師の判断によって行ってください。
上記に該当しない患者様については、感染のリスクがあっても必ず診察に来てもらえるよう に説明してください。
2.会計や処方をスムーズに行う
電話診療で感染のリスクは減らせますが、会計と処方箋の発行があるので一度は来院していただくことが必要です。
院内が混雑してお待たせすることがありますが、少しでもスムーズに行えるようにスタッフ同士が協力して行えるようにしましょう。
また、薬は院外処方となる場合には、事前にかかりつけの調剤薬局にFAXしておくなど、医療機関同士が協力してお待たせしないように心がけたいところです。
3.処方箋の有効期間を伝える
電話診療となって診察は済ませても、薬をもらい忘れることがあります。
電話診療後、速やかに会計のために来院していただけたら問題はありませんが、仕事などで当日の来院ができない人もでてきます。
こうした場合、ご存知かと思いますが「処方箋の有効期間について」改めて伝えておきましょう。
発行日から4日以内であることを加えて伝えてください。
トラブルにならない工夫も必要です。
まとめ
院内感染を防ぐことをご紹介しました。
診察や治療を多くの患者様が必要とする中で、新型コロナウイルスの影響でそれができないケースもあると聞きます。
また、やむを得ず診療制限をすることで、経営に影響が出ているクリニックも多く存在して います。
今は感染のリスクを少しでも減らし、経営的に乗り越えることが最も大切と考えます。
医師やスタッフだけでなく、患者様とともに乗り越えられるように、対処してください。