個人のクリニック経営ですと、問題や課題については院長が主となって考えなくてはいけません。
しかし、収支・集患・人事・今後の目標など、問題や課題は多岐に渡る上に、どの問題から取り組んだらいいのか、いまいちわからない時があります。
今回は、院内での問題や課題の優先順位の決め方、またどこから取り組むのか、効率よく対応していく方法をご紹介します。
院内のことに目を向けていますか?
クリニックを開院することで、これまでの勤務医と大きく違うことは「経営者」としての役割です。
勤務医時代には、外来、入院問わずに診察と治療を繰り返す毎日だったと思います。しかし、クリニックの開業と共に収支、集患、人事など、院内での問題や課題は全て院長であるあなたが、経営者として取り組み、解決していく必要があります。
これらから目を背けていれば、クリニックの継続は難しく、赤字となり納得のいくクリニック経営にすることはできなくなるのです。
短い時間でも取り組むことが大事
最悪な事態を回避するためにも、医師であり経営者であるあなたが、取り組んでいく必要があります。
毎日、がっつり取り組むのは大変ですし、そこまでしなくても構いません。短い時間でもいいので、スケジュールの中で「取り組む時間(クオリティタイム)」を作ることを、まずは意識することから始めてください。
問題や課題に取り組む時間が取れない理由
院内の問題や課題に対して「分かっているけど、できていない」という医師の方は、多くいらっしゃいます。決して、あなただけではありません。
なぜ、多くいらっしゃると断言できるかといえば、ほとんどのクリニック経営をしている医師の方が、同じような特徴があるからです。
毎日が忙しい
クリニックの毎日は忙しいですよね。診察、検査、在宅医療など、次から次へと辛い症状や痛みを抱えてクリニックに来院されます。
そんな待った無しの状況の中で、クリニック経営のことを考える時間を作ることは非常に難しいです。きっと何度も「明日やろう」と、心で思われたことでしょう。
医療という現場での仕事と、クリニックの経営をバランスよくこなせるだけの余裕がないのです。
集中して取り組みたい
「集中して取り組みたい」という言葉は、一見いいことのようにも思いますが、これも「後回し」にしているだけです。実際に、しっかりと時間を作り取り組んでいたら、こんな風には思わないですし、言葉にすることもないはずです。
また、もう一つの理由として「完璧にやりたい」という完璧主義の方が、多いのではないでしょうか?物事を一つ一つ丁寧に取り組みたいあまりに、後回しにしてしまう傾向が強いようです。
人任せにしている
人任せにしているということは、コンサルタント、税理士といった専門家に任せている状態です。彼らはプロですから、やるべきことはきちんとやってくれますから、結果もついてくるはずです。
しかし、彼らが結果を出してくれるわけではありません。「どんなクリニックにしたいのか?」というクリニック経営者である医師のビジョンや、経営理念があるからこそ成功へと導くことができるのです。
医師であるあなたの考えなしでは、彼らも十分な仕事ができないのです。
取り組む前に整理する
院内での問題や課題に対して取り組むといっても、実際には「何からやるのか?」と、分からない医師の方が多いはずです。どれもやるべきことだからと、目の前のことをやっているだけでは、効率が悪いので結果に繋がりません。
そこで、問題や課題に取り組む前に、やるべきことは「整理する」ことです。
規模の大きな病院では、それぞれに役割があり、それだけに集中して取り組むことができました。
・医師
診察、治療、今後の治療方針
論文の作成と発表
病院の将来ビジョン
・事務、医事課
収支計画
人事の採用
資金繰り
窓口業務
診療報酬の請求
・医療現場スタッフ
人材の育成
患者様への対応と処置
現場でのリスク、安全、感染対策
主に3つの仕事に分けることができます。クリニックは規模は小さいですが、同様の問題を一人で考える必要があります。
まずは、上記のように問題や課題を分類することから、始めてください。
時間管理のマトリックス
そして、次に考えるのは問題や課題に対して「優先順位」をつけることです。
「時間管理のマトリックス」をご存知でしょうか?時間を有効に使え、なおかつ「自分がやるべきこと」を明確にすることができます。
まずは、問題や課題を下記のような4つの領域に分けてください。
1.緊急であり、重要であること
2.緊急ではないけど、重要である
3.緊急ではあるが、重要ではない
4.緊急ではなく、重要でもない
1は、クリニックへの苦情、災害などが該当します。
2は、長期目標、人事採用、育成などが該当します。
3は、電話、メール、営業などが該当します。
4は、ネットサーフィン、ゲームなどが該当します。
なんとなく、イメージできるでしょうか?この中で、あなたが優先して取り組むのは何番でしょうか?
自分で考え変えていくこと
答えは「2」です。この時間管理のマトリックスでは、4つの領域に分けることである特徴が見えてきます。それは「外から影響されること、そうではないこと」この2つに分けられるのです。
「1・3・4」は、外からの影響によって発生したり、あなたでなくても問題ないことです。
「2」は、逆にあなたがやらなければ、誰もやることはありません。
つまり、2の領域に当てはまった問題と課題を優先して取り組んでいくことで、クリニックを改善していくことができるのです。
モチベーションの上がる取り組み方
やるべきことが明確になると、取り組み方が変わってきます。
ここでは、さらに効率よく取り組んでもらえるように、方法をご紹介します。
タスク管理と達成
毎日、一週間、1ヶ月、半年、1年というように、目標を立てます。この目標をただ立てるだけでなく、達成するまでの行動を「タスク」として書き出すのです。毎日や一週間では小さなことから目標達成のためのタスクを考えます。この積み重ねによって、1ヶ月、半年、一年とタスクをクリアしながら、目標に到達することができるのです。
タスクができると、不思議と達成感を感じられます。この達成感も積むことで自信になりますから、取り入れてみてください。
短く集中する
日々の業務で忙しい中で、がっつり時間を取ることは不可能に近いです。そのため、短期集中のスタイルで進めていくのもオススメです。
最初は、1時間、30分、15分と「ちょっと短くない?」と思う時間で構いません。その方がハードルが下がりやりやすくなります。
そして、意外にも「集中してできた、もっとやりたい」と、気持ちが変化していく時期がやってきます。その時に時間を伸ばすのか、集中する時間を1日のうちに何回も作るのか、自分に合った方法を考えてみてください。
ワクワクする方法で取り組む
そして、何より自分が「ワクワクする」やり方で実践しているということが大切です。ノートやスマホアプリ、文房具、環境作り、こうした些細なことで、やる気は随分変わってきます。自分がワクワクする楽しいやり方を考えることも、ぜひ取り組んでください。
まとめ
今回は、後回しにしてしまう問題や課題についての優先順位の決め方、取り組み方についてご紹介しました。
経営者であるあなたが、後回しにすることで、クリニックの売上やスタッフへ負担は大きく変わってしまいます。休むことは大切ですが、やるべきことから逃げる癖がつかないようにご注意ください。
やることが明確になると、自然と動けるようになるので、時間管理のマトリックス、タスク管理など一度チャレンジしてくださいね。