新型コロナウイルスの感染は、緩やかに落ち着いてきました。
しかし、寒さが厳しくなる12月以降は、さらなる感染拡大が心配されています。
そんな中で、クリニック経営を続けることは、常に不安と隣り合わせのため医師、スタッフともに最善の注意をしていることでしょう。
こうした状況を踏まえ、診療報酬では特別措置として「院内トリアージ実施料」を算定が可能となりました。
すでに算定を開始していると思いますが、クリニックの診療報酬点数としては高点数(300点)です。会計の際に驚かれることも予想されます。トラブルとならないように、注意しておきたいポイントが3つあります。
今回は、院内トリアージ実施料の詳細と、注意しておきたいポイントをご紹介します。
来院拒否ができない医療機関の負担は大きい
新型コロナウイルスの感染が広がりはじめた当初は、専門の病院または「発熱外来」を設置して対応する医療機関への受診が促されていました。
しかし、徐々に医療機関の受け入れにも限界が生じはじめてからは、どこのクリニックでも対応ができるように体制が整えられました。緊急事態ではない限り、感染が疑われる患者様の来院を拒否することはできません。
感染している、感染が疑われる患者様の受け入れは、医師やスタッフへの感染だけだなく、受診にみえる患者様を不安にさせてしまいます。
不安な状況で診察、治療を必要とする患者様が来院されなくなっては、患者様の体調が心配ですし、クリニックの経営にも影響がでます。
すでに、二年近く不安な状態で、経営を続けているクリニック負担は大きいと考えられます。
診療体制の緩和
クリニックに通院する不安をなくすため、診療体制についても見直されました。これまで診察には「必ず来院して、医師の診察を受けること」が絶対条件でしたが、オンライン・電話での診察を良しとする改正がありました。
対象とする患者様、診療内容、治療薬に条件はありますが、クリニックとしてはコロナ前までとはいかなくても、ある程度の報酬を回復することができたはずです。
院内トリアージ実施料ついて
院内トリアージ実施料について、ご紹介します。
診療報酬の点数としては、2012年の報酬改正の際に設けられました。ご存知のように、トリアージと聞けば緊急を要する場面において用いられるものですから、算定条件を満たすクリニックはほとんどありません。
しかし、2021年10月1日より、特別措置(時限措置)としてクリニックでも院内トリアージ実施料を算定することができるようになりました。
詳細については、のちほどご紹介しますが、診療科問わず算定することが可能です。
算定についての詳細
算定するために把握しておきたいことを、確認しましょう。
届出は不要
院内トリアージ実施料は、診察・治療といった医療行為をした際に算定する点数とは違います。クリニックの施設、設備、体制について条件を満たしていれば算定できるものです。
つまりは、保健所等に申請をして受理されてから算定するものですが、新型コロナウイルスによる算定の場合には、書類の提出は必要ありません。
医事コンピュータのシステムが整っていれば、すぐに算定することができます。
また、感染を疑う患者様については、あらかじめ決められた時間を伝えるなど、対応をしているかと思いますが、受診時間の制限もありません。
対象者と症状
算定の対象となるのは、新型コロナウイルスに感染している、感染の疑いのある患者様です。それ以外の症状でのトリアージでは算定することはできませんので、ご注意ください。
また、患者様の来院状況は問わないので、初診・再診のいずれも算定が可能です(一部例外あり)。
小児科で算定される「小児科外来診療料」においても同様に算定できるとされています。
主に、感染が考えられる症状とは「風邪に似た症状」となります。
・発熱
・咳
・鼻汁
・のどの痛み
・倦怠感
・嘔吐
・下痢
算定のためにやるべきこと
感染を疑う患者様の診察をするだけでは、院内トリアージ実施料を算定することはできません。
算定できる条件を満たす必要があります。
ここでは、クリニックに関係する条件を抜粋してご紹介します。
トリアージの実施
まずは、来院時に院内でのトリアージを行なってください。
・患者様の状態を評価する
・来院時の緊急区分を判断する
・診察の優先順位を考える
トリアージは来院時に早急に行いましょう。
カルテに記載
トリアージを実施したこと、実施によって得た内容をカルテに記載することが義務付けられています。
本人と家族への説明
トリアージと聞くと、ドラマで見るような事故現場などでの実施をイメージされる患者様、ご家族様がほとんどです。
そうしたイメージから、現在必要とする理由を分かりやすく説明をしてください。
算定に関するトラブル防止のポイント
院内トリアージ実施料は300点です。3割負担の患者様で1,650円の負担が増えます。
また、新型コロナウイルスの検査料も点数が高いですから、一度の受診で支払いはこうがくとなります。
仕方ないと思う患者様ばかりでしたら、なんら問題はありませんが、診療明細書を見て質問をする患者様もいらっしゃいます。
そんな中で、患者様からみたら「院内トリアージ実施料」というのは、不要と思われがちですから、苦情となるケースも考えられます。
事前にトラブルが防止できるように、対策をしておきましょう。
院内に掲示する
まず必要なものは、算定することのお知らせを院内に掲示してください。なるべく患者様の目に止まる位置を考えて掲示をしておきましょう。算定を開始する前が理想的です。
また、クリニックのホームページがある場合は、トップページの目に止まる場所でお知らせしてください。
いずれも算定を始めたら掲示をやめるのではなく、算定を始めてからも掲示を続けてください。苦情の際の逃げ道になること、患者様に周知してもらえることに効果があります。
十分な説明をする
院内トリアージ実施料を算定する条件にも書きましたが、患者様とご家族様にトリアージを実施すること、必要性について説明をしてください。
先にも述べたように、テレビの影響によりトリアージは、災害現場などで混乱をただし治療の優先順位を決めるものだと思っています。「ただ体調が悪いだけでなぜ?」と思う患者様がほとんどです。
来院時にトリアージを実施するスタッフがきちんと説明ができるように体制を整えることが必要です。
会計窓口で戸惑わない
実際に苦情となる場合、窓口に問い合わせが入ります。
・院内トリアージ実施料とは?
・金額高い
・トリアージしていない
このような苦情において、可能な限り会計窓口で穏便に対応して終わらせたいところです。
体調が悪い中で、トリアージの説明を聞いていても「聞いていない」というでしょうし、医師や看護師ではない事務員には攻撃的な患者様も少なくありません。
こうした一部の患者様に戸惑う姿を見せたら、より強くでますから、分かりやすく理解してもらえる説明を事務員もできるように指導してください。
まとめ
院内トリアージ実施料について、算定時のトラブル防止についてご紹介しました。
診療明細書を発行するようになり、患者様には治療費に関する不安は減っていると思います。
しかし、診察・治療以外に関する点数については、どうでしょうか?直接、自分には関係ないことで支払いが発生している、ましては高額となれば、苦情の一つも言いたくなることが考えられます。
クリニック経営においては院内トリアージ実施料は、きちんと報酬として受け取りたいです。点数が高いからこそ、トラブルを避けられるように準備しておくことも必要です。
10月に実施され、件数としてはこれから増加することが考えられます。
スタッフと力を合わせて、より十分な対応ができるようにしていきましょう。