クリニック開業における重要なステップのひとつに、「開業地選定」があります。
開業地は、建物や設備とは異なり、1度開業すれば簡単には移動できません。エリアによっては競合が多かったり、提供予定の医療に需要がなかったり、ということも考えられます。
開業地選定は、集患につながる重要な要素を多く含んでいるのです。
また家族とともに開業地で暮らす場合には、自身や家族の生活にも大きく影響してきます。
円滑なクリニック運営や、家族と快適に過ごしていくためには市場調査・分析を繰り返しおこない、慎重に開業地を選定していく必要があります。
そこで今回は、クリニックの開業地選定について、立地選定のポイントや各エリアの特性、診療圏調査の内容を踏まえながらご紹介していきます。クリニック開業地選定の参考にされてみて下さい。
クリニックの立地選定ポイントとは
クリニックの開業地選定では、開業理念や診療科目、開業規模などをもとに、ステップを踏みながら希望地を選定していきます。
はじめての開業では、クリニックのイメージが沸きやすい地価や賃料、建物面積などの物件情報に注目しがちです。
しかし開業地選定で最も重要なことは、競合がいないことと、患者さんとなる住民が多いことです。
この情報を得るためには、診療圏調査を実施したり、時には希望地へ出向き自身の足で情報を集めたりすることも必要です。
またその他の立地選定ポイントとしては、下記のポイントが挙げられます。
- スタッフの通勤のしやすさ
- 問題なく病診連携や診療連携がとれるか
- 来院の際、アクセスが良い場所なのか
- 駐車場や駐輪場が整備しやすい場所なのか
- 自身の通勤のしやすさ
- (家族と暮らす場合)家族が暮らしやすい場所か、など
経営面だけでなく自身の利便性や、家族の暮らしやすさなど、生活面も検討内容に含めていく必要があります。
以上の点を踏まえながら、開業立地を選定していきます。
クリニック開業における各エリア特性とは
先述したポイントを踏まえ、希望の開業地を検討していきましょう。
いざ希望地を挙げようとすると、大きく「都心」と「郊外」のどちらで開業すれば良いのか、悩まれる方が多いのではないでしょうか。
また希望地が決まれば、駅前のような「繁華街」と、住宅街が立ち並ぶ「住宅街」など、具体的な開業場所の選定を行う必要があります。
ここからはクリニックの開業エリアや、開業場所におけるエリア特性を、メリット・デメリットを交えながらご紹介します。
都心と郊外における開業メリット・デメリット
まず都心と郊外それぞれの、クリニック開業におけるメリットとデメリット挙げます。
都心で開業するメリット
- 人口が多い
- 今後の人口増も見込める
- 生活の利便性が高い、など
都心で開業するデメリット
- 土地や賃料が高額になる。運営コストが高い
- 競合が多く、明確な差別化が必要、など
郊外で開業するメリット
- 土地や賃料が少なく運営コストを抑えられる
- 競合が少ない、など
郊外で開業するデメリット
- アクセスしにくい
- 近隣に調剤薬局がない可能性がある
- 病診連携や診療連携がとりにくい、など
都心開業では人口が多いため集患が見込めますが、運営コストが高い点や競合が多くなる可能性があります。
一方、郊外開業では、運営コストは抑えられます。しかし人口が少ない可能性や、交通網やアクセスなどの利便性における問題点を念頭にいれておく必要があります。
繁華街と住宅街における開業メリット・デメリット
次に繁華街と住宅街それぞれの、クリニック開業におけるメリットとデメリットを挙げます。
繁華街で開業するメリット
- アクセスがしやすい
- 通勤・通学中の患者が通院しやすい
- 通勤しやすいため、スタッフが採用しやすい、など
繁華街で開業するデメリット
- テナントが多いため、クリニックが目立ちにくい
- 駐車場や駐輪場が整備しにくい、など
住宅街で開業するメリット
- 患者さんを含む家族の様子を把握しやすい
- 駐車場・駐輪場を整備しやすい、など
住宅街で開業するデメリット
- テナントが見つかりにくい
- スタッフがアクセスしにくい(採用しにくい)、など
駅前のような繁華街での開業は、通学や通勤中の患者さんをはじめ、遠くに住んでいる患者さんもアクセスしやすい利点があります。
しかし繁華街には、飲食店や各店舗のテナントが軒を連ねています。クリニックを認知してもらうためには、広告や広報面の対策を検討していく必要があります。
一方、住宅街での開業は、家族単位での集患が期待できることや、駐車場・駐輪場を整備しやすいというメリットがあります。
しかしアクセスが悪い場合には、人材面における不安要素も念頭に入れておく必要があります。
診療圏調査を実施する
開業候補地が絞れてきたところで、診療圏調査を行います。
診療圏調査では、開業予定地の来院予想人数を割り出し、エリアの市場価値を調査・分析していきます。用いられるデータとしては、人口統計や各行政が公表している受療率資料などが挙げられます。
業者へ診療圏調査を依頼する際の注意点
診療圏調査を業者へ依頼をすることは、競合データを用いた分析や、経験をもとにしたエリア分析が可能なため、非常に有用です。
しかし調査依頼を行う場合には、調査エリアの設定方法や使用データ、競合データは各業者によって異なる、という点を留意しておく必要があります。
例えば、使用するデータが古ければ正確な分析はできません。また調査エリアは、エリア内の幹線道路や公共交通機関、競合データなど、複合的な情報をもとに設定する必要があります。この調査エリア設定も、各業者によって設定方法が異なります。
業者へ調査依頼をする際は、調査基準や用いられているデータ、設定方法などを自身でも確認するようにしましょう。
開業エリアは実際に歩いて確認する
ここまでエリア選定のポイントや、エリア特性、診療圏調査についてご紹介しました。
希望立地の選定や、エリアの市場分析を検討・実施しはじめた方は、自身でエリアに出向くことも重要な情報収集になります。
エリアに出向く際には、次の項目を確認するようにしましょう。
- 最寄り駅の雰囲気
- ショッピングセンターや公共施設など、人が集まる施設の把握
- 近隣のクリニックや、調剤薬局の把握
- 病診連携施設へのアクセス方法の把握、など
地図やインターネットを活用すれば、ある程度の情報は収集できます。しかし、人やエリアの雰囲気、年齢層、土地柄などは、実際に足を運んでみなくては理解することができません。
また、自身が提供したいと考えている医療の患者層を観察することも、有益な情報収集になります。
例えば、「忙しく働いている人が、無理なく通えるクリニックにしたい」と考えている方は、働いている人の雰囲気をよく観察してみましょう。また、「家庭医療を提供したい」と考えている方では、街の家族連れを観察することで雰囲気がよく分かるはずです。
実際に目にした雰囲気によって、休日診療や夜間診療などの、まだ検討していなかったようなサービス案が出てくる可能性があります。
なお開業地選定は、クリニックの開業地としてだけでなく、自身の生活基盤としてもふさわしいエリアなのか見極める必要があります。
時間が許せば家族と一緒に訪問し、相談することも検討してみましょう。
まとめ
いかがでしたか?
今回はクリニック開業における開業地選定について、立地選定のポイントや各エリアの特性、診療圏調査についての内容を交えてご紹介しました。
開業地選定は、クリニック開業における1つのステップとしてだけでなく、自身や家族の生活にも関わる重要なステップです。
今後のエリア選定や市場調査・分析など、開業地選定の参考にされてみて下さい。