3月の半ばを過ぎ、毎年「来年は慌てない!」と思いながらも、準備に戸惑ったり、大事な書類がないなど慌てるケースが多いかと思われます。
では、どうしたら確定申告や決算月の慌ただしさを回避することができるでしょうか?
今回は、慌てない会計処理の方法と、それをやるメリットをご紹介します。
決算業務はこまめに行う
決算月や確定申告に慌ててしまうのは、日々の業務がおろそかになっているからです。
作業としては、日々の入力であり簡単な作業ですが、なぜか後回しにしてしまう傾向にあります。
・すぐできるから
・性急性がない
・まとめやれば早く済む
一度でも経理の仕事を経験したことがある人ほど、このように考えたことがあると共感できるのではないでしょうか?
スタッフが、簡単だからと後回しにしてしまう背景には「日常業務が忙しいから」という理由が考えられます。
クリニックへの来院数が多いことは、クリニック経営者としては嬉しいことですが、本来、スタッフが毎日やるべきことができないというのは、働く環境としては良い職場とは言えません。
・スタッフの怠慢なのか
・人手不足なのか
・業務を理解できていないのか
こうした原因が潜んでいることが考えられるので、決算業務以前に改善が必要となります。
もし、こうした現状がすでに起きていると思われたら、スタッフへのヒヤリング、全体でのミーティングなどを行い、いまするべきことを考えてみてください。
決算月に慌てないために3つのタイミングに分ける
決算月のためにこまめにやる業務のポイントは「3つのタイミングに分ける」ことです。
業務を溜め込まないようにスタッフに指示をするだけでは、決して上手くいきません。溜め込むことがスタッフの習慣になっているのですから、なかなか改善することは難しいでしょう。
スタッフの習慣を変えていくためにも、こちらからチェックするタイミングを設けて後回しにする習慣を自然と変えていけるような環境を整えましょう。
日次業務
日次業務とは、日々の来院数、売上を確認して数字を明確にすることをいいます。
多くのクリニックでは、1日に必要な金額をあらかじめ用意しています。そのため、簡易的な金庫にお金を入れてスタッフが扱いやすいようにしています。
窓口業務での負担を減らすために、とても良いことですが、金庫の中に売上金を貯めてしまうことが考えられます。
繁忙期となれば扱う金額が増えますから、後回しにしていると金庫にお金が入りきらなくなります。
終わるのが遅いから、お金を数えるのが面倒だから、いろいろな後回しにする理由も考えられますが、溜め込む苦労を知ってるからこそ毎日のことは1日の終わりに作業できるように工夫をしましょう。
例えば、繁忙期などお金の取り扱いが増える時には、午前の診察時間が終わったタイミングで仮の集計を済ませてしまえば、午後からの負担が減ります。
さらには、患者様が少ない時には会計業務の準備をしておくのも負担を減らせます。
この日次業務は最も大切にしたいことですから、毎日の報告を促すように指示を出してください。
週次業務
次は、一週間単位での確認業務になります。
週次業務で行うことは、一週間の振り返りと来週やるべきことの確認です。
ここでは決算に必要な数字を確認するというよりは、毎日の業務を丁寧にやり終えるための準備だととらえます。
クリニックの業務は忙しく大変ですが、毎日同じことの繰り返しとなりマンネリ化する雰囲気があります。
ある意味では、同じことができるのは患者様が来院されていて、クリニック経営が上手くいっている様子が伺えます。しかし、マンネリ化はスタッフの働く意欲を下げ、トラブルの原因になりやすいです。
こうした負の作用を断ち切るために、一週間の振り返りをします。
・忙しい日には何があったのか
・来院された理由
・売上の分類
どんなことがあり売上が伸びたのか、また、来院される患者様の来院理由なども考えてみましょう。
振り返りができたら、今度は来週に向けての確認です。
検査の予定、予想される来院数と曜日と時間など、スタッフに把握してほしいこと、協力してほしいことを、経営者と一部スタッフが知っているという状況でなく、スタッフ全員が共通認識が持てるように情報の共有は怠らないようにしましょう。
そして、来週やるべきことが明確になれば、必要な準備を早く始めることができます。目の前の業務に慌てることが減るので、日次業務もできるようになります。
月次業務
月次業務は、1ヶ月の情報をまとめて、クリニック全体の現状を確認する業務になります。
1ヶ月の売上、来院数、医薬品などの在庫数などを確認する必要があります。
開業して過去データが存在する場合には、クリニックの経営状況も分かりやすくなります。まだ、開業して一年立たない場合には、比較するデータが存在しませんから、先月と比べたり、経営計画とのズレはないかなど、予定していた通りにクリニックの経営ができているのかを確認してください。
月次業務になると、スタッフに任せるというわけにはいきません。クリニック経営者本人、外部に依頼しているコンサル、会計士などとミーティングをして、客観的にクリニックをみて順調な経営ができているのかを確認することになります。
日頃からクリニック内の動きを観察したり、情報共有をしておく必要があります。
報告を受けた数字ばかり数字ばかりで追っていると、問題点は見つかるものの原因m対策wいすることができません。
3つに分けるメリット
クリニックの現状がいち早く分かるようになると、良いことも悪いこともきちんと把握することができます。
ここでは、3つのタイミングに分けて決算月に備えるメリットをご紹介します。
被害が少ない
こまめにクリニックの経営状況を把握することで、いち早く赤字を防ぐことができます。
これは、月の売上、在庫管理、支出を確認することで分かることです。一年に一回、決算月にしか数字としてクリニック経営を見ていなかったら、赤字になっていることに気づくのも遅れてしまいます。金額的にも大きいですから、赤字を回避するための対策をしっかりしないと、回復させて黒字にするまでに時間がかかります。
月次業務で具体的な数字をいち早く確認ができたら、数字が伸びていない、それに対して支出が多いなど、月単位で確認すれば金額的には小さくて対策もしやすいので、軌道修正がしやすくなります。
また、経営計画に無理を感じる時にも下方修正させることもできるので、クリニック経営をより理解できるようになるきっかけにもなります。
対策と分析ができる
月次業務でクリニックの経営状況が分かると、対策を考えてすぐに実行することができます。
経営計画通りに進まないことは、決して悪いことではありません。予定通りにいかない時には、軌道修正をすれば問題ありません。
この流れが、すこしでも早く早い段階でできたら、対策→実行→分析をいち早くできます。
この経験が経営力を鍛えるので、ご自身の理解も深まり、どこに問題があるのか気づくことができます。
コンサル、会計士といったプロに頼るのも問題ありませんが、ご自身で気づけるようになると、さらにクリニック経営は強靭なものになります。
まとめ
決算月に慌てない1つの方法をご紹介しました。
確定申告、決算が終わると、ほとんどの経営者が「来年はきちんとやる」と決意します。
しかし、残念ながら改善できる方は、ほとんどいらっしゃいません。
「後回し」が習慣になっているので、なかなか直すことができないのが現状です。
ご自分だけでは無理もあるでしょうから、スタッフを巻き込むというのも一つのやり方です。良いスタッフとクリニックを盛り上げていくのは、スタッフにもやりがいになるので、ぜひ取り組んでみてください。