開業医を目指す方々にとって、考えるべきことや課題は山ほどあります。
理想のクリニックとは何か?
それを実現するためにどれほどの資金力が必要か、クリニックの立地はどこにするか、経営は自分でするのか、マネジメント会社を頼るのか、など数え上げればきりがありません。
これらの大変な苦労をしてクリニックを開業できたとしても、経営が軌道に乗るまでには、さらに様々な問題に直面することになるでしょう。
その中でも、集患対策は安定的な経営のために避けては通れない、とても重要な課題です。
ここからは、患者さんがリピートして通院したくなるクリニックづくりのノウハウや、特に力を入れたいスタッフの教育についてご紹介します。
クリニックの認知度を上げる方法
自院のホームページの作成
ひとりに一台スマホを持つのが当たり前になっている世の中では、調子が悪くなった場合に人々が取る行動として、症状を検索したあと、その症状でかかることができる医院を検索することが多いそうです。
つまり、クリニックのホームページを持っていないことは集患対策で大きく出遅れてしまうこととなるのです。
そうならないために、ホームページは多少予算をかけてでもプロに依頼して作成することをおすすめします。
クリニックの認知度を上げる方法としても即効性があるわけではないですが有効です。
ポイントとしては、受診可能な科、診療時間、曜日を分かりやすくすることが大前提です。
そのうえで、クリニックのイメージを視覚化した色合いやフォントを考えたつくりにするとオリジナリティーあふれるホームページとなるでしょう。
クリニックの外観への配慮
しかし、いくらホームページが魅力的な内容になったとしても、いざ来院したクリニックの雰囲気が暗かったり、中の様子がまったく見えない様子では、入ることをためらってしまうかもしれません。
カフェやショップでも、店内の様子が見える、またはイメージできる外観や入口のつくりになっていると、自然と足が向くものです。
クリニックを開業する際には、患者さんが入りたくなるような外観、外構を意識した設計にしたいものですね。
看板設置の際の注意点
先ほどホームページ作成の重要性についてお伝えしましたが、高齢者のかたなど、まだまだネット環境に慣れていない患者さんも多数いらっしゃいます。
そのような方にとって、看板は重要な情報源となり、クリニックのことを認知するツールにもなるので気をつけたいポイントです。
看板はクリニックの入口付近に設置することになると思いますが、その材質、大きさ、カラーリングなど選択する要素はたくさんあります。
また、クリニックの立地によっても看板のわかりやすさ、見栄えの良さは変わってきます。
たとえば、バス通り沿いのクリニックなら、バスの乗客からも見えやすい高さや大きさの看板にする、大通りから少し外れた路地などの立地ならライトなどで看板を目立たせる、などです。
地域によっては看板についての条例が定められているところもありますので、きちんとルールに従いながら、かつクリニックという品位も落とさない上質な看板にしたいものです。
もちろん、見た目ばかり気にした内容では意味がありませんので、患者さんが安心して入る気になれるよう、ホームページ同様、診療科目、時間、曜日などの基本情報はきちんと載せましょう。
もし可能なら、「土日診療可」「予約システム採用」など集患に有効な情報も入れられると、来院目的ではない通行人などにも記憶に残りやすく、次の来院につながるかもしれません。
クリニックの満足度を上げる方法
丁寧で親しみやすい診察、診療
ホームページなどで情報を得て来院した患者さんは、すでに期待値を自分の中に持っているはずです。
ここで、期待値以上の感覚を持ってもらうことができれば、患者さんは高い確率でリピートするでしょう。
そのための大前提として、調子が悪かった箇所、状態が改善されることと、診療に当たった医師、スタッフの接し方が丁寧であることが挙げられます。
医師の説明が威圧的だったり、患者さんの疑問点、不安感を取り除くことができなければ満足度は上がりません。
勤務医時代に患者さんと接することが苦手だったという方も、開業するならば覚悟をもって、患者さんにはフレンドリーな雰囲気で接するよう心がけたいものですね。
患者層のニーズに合わせたサービス
診療する科目によって、患者層もまちまちです。
小児科や産婦人科ならもちろんお子さんとその保護者が多いでしょうし、整形外科であれば、日常的にリハビリが必要な高齢者層が多くなることが予想されます。
クリニックが対象とする患者層に合わせたサービス提供を考えることは患者さんの満足度にそのまま直結することが期待できます。
お子さんが多い場合はキッズスペースを作ったり、感染予防のため待合室を分けたり、車中で診察を待つ場合にも対応する(順番がきたらメールや電話で知らせる等)などのサービスが考えられます。
逆に高齢者が多いなら、バリアフリーに配慮したフロア、トイレの設置や、受付カウンターのそばに杖ホルダーを備え付けたりもできますね。
スタッフによる患者目線での対応
患者さんの満足度を上げるために有効な手段は色々あります。しかし、どのようなニーズがあるか把握することはなかなか難しいことです。
ニーズをすくいあげるのは、診察室でしか対応する機会が少ない医師よりも、待合室から会計まで、患者さんのすべての動きをみているスタッフのほうが適任といえます。
スタッフの質を上げる方法
医師の診療指針を明確化し、採用時での共有
ここからは、クリニックのイメージを大きく上げることにもつながる、スタッフの質を上げる方法をご紹介していきます。
まず、クリニックの長であり、雇用主でもある医師と従業員であるスタッフとでクリニックの医療コンセプトを共有しておくことが重要です。
できれば採用時からコンセプトを伝え、理解してくれる人材を採用できればその後のスタッフ研修もやりやすくなるでしょう。
定期的なスタッフ研修会の開催
スタッフは医療行為を医師が行う際には助手のエキスパートです。それと同時に患者さんにとってはよき相談相手だったり、サービスを提供するコンシェルジュのような役割までも担っています。
そのレベルを高い水準で維持するためには、定期的な研修会が必須となります。テーマや開催時期、間隔は必要に応じて決定すれば良いでしょう。
患者へのアンケート実施
医師とスタッフ側で努力をしていても、患者さんの満足度が上がらなければ集患にもつながらず、自己満足で終わってしまうかもしれません。
そのようなことを防ぐ手だてとして、患者さんにアンケートを取ることをおすすめします。
しかし、アンケートの取り方にはいくつか注意が必要です。
推奨したいのは、気持ちいい対応をしてくれたスタッフの名前を書いてもらったり、今後さらにクリニックがよくなると思われる改善点を挙げてもらうなどのポジティブ型アンケートの取り方です。
反対のネガティブ型アンケートにすると、名指しで対応にケチをつけられたスタッフはもちろんモチベーションが下がりますし、同僚も次は自分が書かれるかも、と常に緊張してしまい、クリニック全体の雰囲気もギスギスしたものになってしまうかもしれません。
アンケートはだいたい最後に書くものなので、患者さんもいやな思いをしたことを列挙していくと、マイナスイメージのままでクリニックから帰ることになってしまいます。
ポジティブ型アンケートを上手に活用できれば、スタッフも患者さんも、居心地のいいクリニックへと進化させられるでしょう。
医師とスタッフ間での情報共有
人は、自分の伝えたことがきちんと伝わっていないと一瞬でもイライラしてしまいます。
クリニックに来ているということは、何らかの不調があるわけですからなおさらです。
患者さんから発信された情報は、症状以外のことでも、医師からスタッフへ、スタッフから医師へときちんと共有しましょう。
診療に関係ないことだとしても自分のことをわかってくれる医師やスタッフには、自然と信頼を寄せてくれるようになります。
そうなれば、姑息な集患活動などしなくてもリピートしてくれる確率が高いです。
まとめ
今回は集患対策について有効な方法と、クリニックのイメージアップを図るために重要な役割を担っているスタッフの質を上げる方法についてご紹介しました。
たくさんクリニックがある中で、わざわざ選んで通ってもらえるクリニックになるためには、努力し続けることが大切です。
医師一人で成し得ることではありませんので、スタッフとともに患者さん目線で考え、よりよい医療、サービスを提供できるといいですね。