医療ニーズが多様化する中、多職種連携が対応策として期待されています。
複数の職種が多方面からサポートしていくことで、患者への質の高いケアが可能になります。
近年では、地域包括ケアシステムの構築が推進されており、地域のさまざまな医療や介護、福祉に関わる現場で必要とされています。
本記事では、多職種連携の概要や課題、解決策のほか、職種別の役割などについてご紹介します。
多職種連携の概要
多職種連携とは、医療や介護、福祉などに関わるさまざまな機関や専門家が連携して患者をサポートする体制を指します。
これにより、医療や介護サービスなどの効率化のほか、患者のQOLの向上などが期待できます。
近年、地域包括ケアシステムの構築強化が求められている中、このサポート体制は地域の課題解決の一つの手段として考えられています。
多職種協働
多職種協働という単語も存在します。
意味としては、異なる専門性を持った職種が集まり、同じ方針の下で協力して働くことを指します。
多職種連携の意味と似ていますが、ニュアンスは異なります。
多職種連携は、各専門職が多方面からアプローチする「システム」を指し、多職種協働は、その「プロセス」を指します。
チーム医療について
チーム医療の考え方は、2010年3月に厚生労働省が公開した「チーム医療の推進について」に盛り込まれています。
この報告書では、チーム医療を以下のように定義しています。
医療に従事する多種多様な医療スタッフが、各々の高い専門性を前提に、目的と情報を共有し、業務を分担しつつも互いに連携・補完し合い、患者の状況に的確に対応した医療を提供すること
つまり、チーム医療とは、医療に関わる専門職内でチームを組み、専門領域で協力し合いながら医療サービスを提供する体制を指します。
また、多職種連携の一部にチーム医療が含まれます。
この体制は、「緩和ケア」や「糖尿病ケア」「認知症ケア」のように分野ごとにチームを組み、患者のケアに努めます。
多職種連携に携わる職種
医療や介護現場では、多数の専門職が携わっています。
多職種連携の体制を整備することで、患者やその家族に応じたオーダーメイドのサービスを提供できます。
また、それぞれの役割を全うすることにより、サービスの向上や効率化などに繋がるでしょう。
主治医
医師は多職種連携のリーダーの役割を担っています。
常に最新の知識を把握し、技術をアップデートすることが求められます。
また、他専門職の連携メンバーが意見を出しやすいように配慮し、いつでもスムーズに情報共有できる環境を整備することが重要です。
看護師
看護師は、あらゆる医療現場において、多くの役割を担っています。
患者の診察や治療に直接関わる業務のほか、医師と他職種との間の情報共有や調整などの幅広い業務を全うすることが求められます。
また、医師に比べて患者に近い立場であるため、健康状態や生活状況などを多く知ることができます。
そのため、コミュニケーションを通して信頼関係を構築することも必要不可欠です。
薬剤師
薬剤師は、服薬指導や管理のほか、薬剤の組み合わせの確認や薬物血中濃度のモニタリングなどの幅広い役割を担っています。
また、近年は後発医薬品の種類が増加しており、薬剤の幅広い知識が求められます。
他専門職に高度化した薬物療法の情報を共有することにより、患者の治療効果を高めるサポートが可能です。
理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・リハビリテーション関係職
理学療法士・作業療法士・言語聴覚士などの専門職は、医師の指示の下、在宅生活で必要なリハビリテーションを提供する役割を担っています。
それぞれ別の視点から患者をサポートするため、他専門職との連携が重要と言えます。
また、身体や精神的な情報を各専門職と共有することにより、医療や介護サービスをよりスムーズに提供しやすくなるでしょう。
- 理学療法士:歩行、起き上がるなどの基本動作をサポート
- 作業療法士:料理をする、字を書くなどの応用動作をサポート
- 言語聴覚士:コミュニケーションや食事などをサポート
介護士
介護職員は、介護老人保健施設や自宅などで患者の生活面をサポートする役割を担っています。
主に、看護師などと連携し、患者のおむつ交換や入浴介助、食事介助などの業務を行っています。
また、看護師との連携は重要であり、患者をサポートするために常に情報共有することが必要不可欠です。
ケアマネジャー
ケアマネジャーは、利用者に適したケアプランを作成し、利用者と関係機関の間に立って連絡調整をする役割を担っています。
また、専門機関とうまく連携できるかによって、利用者のケアに影響が出てしまいます。
そのため、地域のさまざまなサービスを提供する方々と関係を作り、いつでも利用者に紹介できる体制を整備することが重要と言えるでしょう。
医療ソーシャルワーカー
医療ソーシャルワーカーは、社会福祉士資格と精神保健福祉士資格の国家資格保有者を総称した職種です。
患者やその家族の生活状況や経済状況を把握し、社会資源の活用ができるようにサポートする総合相談窓口のような役割を担っています。
また、患者の質の高い生活を支えるため、幅広い職種を理解することが求められます。
管理栄養士
管理栄養士は、栄養管理と食生活のサポートを行う役割を担っています。
主に、栄養管理が必要な患者やその家族に栄養管理指導を行うことのほか、他専門職と情報共有をする業務を行っています。
多職種連携の課題と解決策
多職種連携には、以下のいくつかの課題が存在します。
チームとしての機能を十分に発揮するためには、連携する中で生じる問題点を各専門職が把握し、適切に対処することが求められてます。
情報共有
情報共有の難しさが、課題の一つに挙げられます。
患者の状態が変化した場合には、迅速に情報共有を行う相手を判断し、報告内容を纏めることが求められます。
各職種ともに、それぞれの業務に従事しているため、スケジュールが合わず、突発的な情報共有が難しくなってしまいます。
また、関わる専門職が多いほど、異なる意見が多くなるため、さまざまな視点でコミュニケーションする能力が必要です。
そのため、 テキストやビデオ、ボイスなどのチャットツールを活用することが重要です。
場所や時間を問わず、オンライン上で情報共有・意見交換しやすくなり、スムーズに互いに不足している情報を補足し合うことも可能です。
また、定期カンファレンスの開催のほか、タスク管理やメモツール、データベースなどを活用することも解決策として挙げられます。
必要事項を常にチーム全員で把握できる環境を構築することにより、コミュニケーションエラーの発生リスクを軽減できるでしょう。
教育体制
教育の時間や資源が確保できないという課題も挙げられます。
現状では、医療や介護従事者の人手不足が深刻化しているため、教育や研修などの学ぶ機会が少なくなっています。
今後、多職種連携を実現するためには、これに特化した教育プログラムや研修機会の充実が求められます。
この教育体制の構築は、さらに推進していくことが重要と言えるでしょう。
まとめ
近年の日本では、医療・介護ニーズが多様化・複雑化しているため、多職種連携の体制を整備することは急務と言えるでしょう。
この体制を推進することで、サービスの質向上や各専門職の負担軽減が期待できます。
さらに、複数の専門性をかけ合わせることにより、サービスを総合的に提供しやすくなるため、地域包括ケア構築に貢献できるでしょう。