待ち時間が長いのは、大規模な病院だけではありません。クリニックでも待ち時間が長くなることがあります。
これまでに待ち時間を減らせるように工夫されてきたクリニックも多いはずです。なぜなら患者様に苦情として挙げられるからです。
だからといって、診察時間を短くすれば返って苦情となってしまうので、待ち時間が長くなってしまいます。
この矛盾した状況を少しでも解消できるように、今回は診察時間を30秒短縮することをテーマにして、その方法についてご紹介します。
クリニック最大の悩み
クリニックもサービス業です。対応が悪ければ苦情となり、患者様の意見として取り上げられます。
そんな苦情の中でも解消することが難しいのが「患者様の待ち時間」です。長年、クリニック経営をしてきた医師の方にはご理解いただけると思いますが、日々状況が違うので対策が上手くいかないこともよくあります。
待ち時間
待ち時間が減らないのは、診察時間が患者様によって違うことが原因の一つです。患者様一人ひとり症状が違いますし、話す速度や内容が違います。また、初診時は急患が入れば治療の優先順位が変わるので、患者様にしてみたら「目の前で診察が止まった、いつまで待つんだ」と、言いたくなる気持ちも分からなくもありません。
現在は、新型コロナウイルスの感染防止のためにクリニックでも予約制にしていますが、それでも予約なしに来院される方もいますし、その患者様たちをお断りするわけにはいきません。
繁忙期はさらに待ち時間が長くなるので、窓口で苦情を言われることが増えます。
残業時間
待ち時間が長くなっても、患者様はご自身の順番が来るまで待ってくださいます。本当にありがたいことですね。
しかし、クリニックの経営者としては少しでも待ち時間を短くしたいと考えています。それは苦情や待たせるという理由ではなく、スタッフの残業時間が増えるという点です。
「クリニックの終了時間になったので、お先に帰ります」と、患者様を残して仕事を終わらせる医師、スタッフはいません。そのため、待ち時間が長くなる分、スタッフの残業は確定して残業代が発生します。
一生懸命働いてくれるスタッフに対して残業代は支払いますが、可能であれば少しでも減らしていきたいのが現状です。
待ち時間を減らすことができたら、費用削減につながります。
待ち時間を減らすのは無理ではない
では、実際に待ち時間を減らすことは無理なことなのでしょうか?
そんなことはありません。
例えば、カルテが紙カルテから電子カルテになり、診察終了後に速やかに会計準備を始めることができるようになりました。診察後に会計で待たされる時間を短縮することができます。
また、院内で採血をして結果を待つ時間も、導入する医療機器が優れていれば迅速に結果が出るので、結果を聞くまでの時間を短縮させることができます。
このように、待ち時間を減らすことは決して無理なことではありません。
診察時間を30秒減らせる方法
今回ご紹介する待ち時間を減らす方法は、大胆にも「診察時間を30秒短縮させる方法」です。
診察時間を短縮させることによる苦情の心配は一切ありません。むしろ患者様にもご協力いただきたいことなので、周知させることが必要となります。
診察時間を30秒短縮させる3つの方法をご紹介します。
カルテの記載分担
待ち時間とは別に、診察室に入ってからの苦情として挙げられるのは「医師が患者様の顔を見て話してくれないこと」です。これは紙カルテ、電子カルテどちらにも共通して挙げられる苦情です。
実は、カルテ記載をスタッフにお願いすることができます。医師の許可の元、診察室に同席して症状や検査の指示、薬の処方内容などをスタッフが記載をすることができます。この方法は、書きながら話すという負担から医師が解消されるだけでなく、患者様と向き合って話すことが可能となるので、二つの苦情を解消することができます。
スタッフが、カルテに記載することに慣れないうちは時間がかかるかもしれませんが、取り入れて徐々に慣れていけば、診察時間を30秒短縮することができます。
一つ注意点としては、医師と話しやすくなるため患者様が世間話を始めてしまうケースもあります。そんな時は気分を害さないように、退室を促すように医師であるご自身とスタッフで協力して対応してください。
問診票の活用
初診の場合、症状や体の調子を知るために「問診票」への記載をお願いしています。患者様にとっては大変かもしれませんが、問診票に記載してもらうことで診察をスムーズに進めることができます。
定期受診の患者様には必要ありませんが、初診の場合は検査等があり必然的に待ち時間が長くなるので、30秒の短縮でも短くすることができたら患者様の負担を減らすことができます。
問診票を見て、簡単な質問をするだけと思われがちですが、これによって医師の頭の中では疑われる病気を選択することができます。簡潔すぎて患者様にしてみたら「手抜きしている」と疑いたくなりますが、これは患者様が問診票に記入をしてくださったことで可能となることで、そのおかげで30秒短縮できると伝えたいぐらいですが、勘違いされやすい内容でもあるので、ここは触れないことが一番の得策です。
事前準備を促す
最近では様々な手帳を持参される患者様がいらっしゃいます。
例えば、高血圧で日々の血圧を記入する血圧手帳、妊婦が胎児の様子を記入してもらう母子手帳、現在服用している処方の内容が分かるお薬手帳などがあります。
これらを診察室に入ってから用意をしてもらうと、患者様によっては非常に時間がかかる人もいらっしゃいます。ほんの数分でも、この時間は非常に長く感じてしまいます。だからこそ、中待合などで事前に見てもらいたい、記載してもらいたいページを開いてお待ちいただくようにお願いをします。
この短くも長く感じる時間は、少しでも短縮していくことで待ち時間を着実に減らしていくことができます。
診察室を増やす
診察のために服を脱いだり、先述のように手帳を用意したりと、診察時間を長くしてしまいます。事前に促すことに抵抗があるという医師の方には、診察室を複数設けることをオススメします。
例えば、触診や腹部エコーなど服の着脱が必要な場合、あらかじめ脱いで待っていただいたり、逆に終了後にゆっくり着ていただくことができるので、患者様を急かせることなく診察時間を短縮することができます。
あらかじめ待ち時間が長くなるケースは伝える
診察時間を短縮して待ち時間を減らす方法が該当しない患者様がいます。
・初診の患者様
・検査が必要となる症状の患者様
上記に該当する患者様は待ち時間を減らすことはできませんので、あらかじめ伝えておく必要があります。
事前に口頭で伝えたり、お知らせとして院内に掲示をしてお待ちいただけるように、ご了承いただけるように対応してください。
実践してみてわかること
実際に取り組んでいただけると分かるように「こんな些細なことでいいの?」というぐらい簡単なことで待ち時間が減らせます。そして一人の患者様の診察時間を30秒短縮することは小さなことかもしれませんが、その日の待ち時間が減ったことに気づいてもらえます。
まずは何事にもチャレンジしていき、ご紹介した以外の場面でも時間短縮できる部分がありましたら、スタッフと相談しながら対策を考えてくださいね。