「最近患者数が減っている」「もう少し増患したい」そういった悩みはクリニック経営につきものです。経営する中で、より良い立地に競合クリニックが開業する等で思うように売上がアップしていかないこともまれではありません。
本記事ではそんな悩みへのアプローチ方法を、具体的な事例を交えて説明していきます。
選ばれるクリニックがやっていること
管理指標を設定して変化を読み取る
様々な数値をとる仕組みをつくり、その数値の変化を日々のスタッフの行動にブレイクダウンしているクリニックがあります。方法としては、日報をつけることでその数値を取得します。日報と言っても、エクセルでフォーマットを作成し、毎日の診療終了後に医療事務スタッフが決まった項目を入力するという簡単な作業です。入力項目例としては以下の9つを参考にすると良いでしょう。
(1)担当医師
(2)出勤スタッフの数と名前
(3)天気
(4)一日の患者数
(5)新規と再来患者の割合
(6)一日の売上(保険・自費別)
(7)新規患者の来院きっかけ(どこでクリニックを知って来院したか)
(8)経営上で重要視している検査等の実施数
(9)特別な要因(イベント等)
これらの項目を記録しておくことで、院長不在時でもその日のクリニックの様子を把握する事ができます。また、売上等に変化があった際、なぜそうなったのかを分析する事が可能になります。
経営では、日々起きていることを正しく把握するための管理指標の設定が大切です。そして、その指標から見えた工夫の積み重ねが増患につながっていきます。
クリニック内ミーティング・勉強会に全員参加
毎月1回、スタッフ全員参加の院内ミーティング・勉強会を実施しているクリニックがあります。全員参加のため、その日は丸一日特別休診としています。
ミーティングの議題、勉強会のトピックスは毎月異なるものを取り上げ、開催にあたっては以下のようなルールをいくつか設けます。
(1)1日の時間割を決めて複数のミーティングを実施する
(2)各ミーティングのテーマと主担当は毎月替え、全スタッフが何らかの担当を持つ
(3)担当者が進行役をし、時間内で決めるべきことを明確にし、話し合いを始める
(4)議事録を必ずとり、ミーティングでの決定事項を即座に共有
(5)勉強会は医療に限らず、スタッフのスキルアップに繋がるテーマを取り上げる
このようなことを実施することで、スタッフ教育はもちろん、クリニック経営に対するスタッフの参加意識の向上に繋がります。クリニック運営にはスタッフの協力は欠かせません。クリニックの評判を上げるのも下げるのもスタッフであると言っても過言ではありません。
パートタイマーのスタッフが多くなるクリニックだからこそ、あえてスタッフ主体による職場全体のミーティングを開催することで、スタッフの自主性が高まり、スタッフの定着率がアップします。
スタッフ一人一人が、どうすれば患者さんを増やす事ができるか自ら考える機会を設けることで、受付などの接遇面がレベルアップし、それにより患者さんからの評判も良くなるという相乗効果が生まれます。
小さいけれど大切なこと
選ばれるクリニックが実施している気遣いを以下に紹介します。
(1)待合室に加湿器と体に良い水が置かれていて、程よいアロマの匂いを漂わせている
(2)待合室に薄型テレビが2台置かれており、1台は環境ビデオ、もう1台はクリニックの診療内容を流している
(3)待合室の掲示板に予防医療の情報が書かれていて、無料の小冊子も置かれている
(4)待合室の掲示板に近くの駐車場案内図が貼られていて、そこを使用した時の無料チケットを配っている
(5)玄関に手すり、小さな椅子が置いてあり、トイレもバリアフリーに改造されている
(6)スタッフが患者さんの名前を覚えていて、話をする時は必ず立ち上がっている
(7)受付で患者さんのコートを預かってくれる
(8)患者さんを診察室に入れる時、スタッフが深くお辞儀をしている
(9)会計のときに、患者さんに院長から直接メッセージカードを渡している
(10)診療予約システムが導入されており、患者さんが待つ時間が短縮されている
いきなり全てを導入することは難しいかもしれませんが、実施出来る事から取り入れていくと良いでしょう。
集患に効果的な4つの方法
予約システムを導入する
予約ができない診療所というイメージを患者さんが持ってしまうと、それだけで来院しなくなる可能性があります。特にビジネスマン等をターゲットとしたクリニックは要注意です。気軽に予約できないという理由で通院候補から外れてします可能性が高くあります。
ホームページの対策強化
ホームページがあるのは大前提で、診療時間などの他にアクセス(Googleマップへのリンク)やクリニック内の雰囲気、院長のあいさつや大事にしている考えなど、このクリニックに行ってみようと思える安心感を与えるコンテンツが重要です。
患者満足度向上の施策
地味な活動に思えるかもしれませんが、例えば院内で健康に関する勉強会などのイベントを開催することで、患者さんの満足度を上げる他、既存の患者さんの家族や友人も来院してくれる可能性があります。特に、日中の時間がとりやすいお年寄りや主婦の方を対象としたイベントが効果的です。
PR活動
身近な活動内容としては、地域のイベントでの講演や地域雑誌などへの寄稿などが挙げられます。
患者さんとしては、やはり信頼出来るお医者さんに診てもらいたいというのが心理です。積極的に地域の集まりに顔を出したり、商工会や老人会、学校などが主催するイベントで講演したりするのも良い方法でしょう。話すのが得意ではない方は、地域雑誌などへの寄稿も良い手段になります。
リピート患者を増やすポイント
クリニックの売上アップ、集患・増患を考えたときに重要なのがリピート患者さんを増やすことです。一般的に、新規顧客を獲得するには、既存顧客にかけるコストの5倍のコストがかかると言われています。ですので、顧客離れを防ぐこと、すなわちリピート率の向上が、売上の向上に非常に有効です。
リピート患者を増やすためのポイントを以下に紹介します。
(1)再受診の目安日をしっかり伝える
再受診の日程を患者さんに伝える際、口頭のみで伝えることは多くの先生がしていることですが、もう一つ工夫して、紙で次回の受診の目安をお渡しする方法をおすすめします。
紙があると手元に残るため、自宅で家族に報告したり、診察券と一緒に大事にとっておいたりと、患者さん自身が忘れにくく、また家族にも再受診の日程が情報として伝わりやすくなるため、適切な再来院を促す効果があります。
また、紙として残るので、患者さんからの再確認の問い合わせが減るなどの効果も期待できます。
(2)患者さん目線のスタッフ対応
医師との接触時間に負けず劣らず、スタッフと患者さんの接触時間や回数は多くなります。
例えば、受付時の案内一つにしても、「お名前をお呼びするまでお待ちください」だけの場合と、「30分ほどでご案内しますので、あちらの空いている席でお待ちください」とで比較すると、後者の方が患者さんに不安や不快を気持ちを抱かせる可能性を減らすことができます。
患者さんの満足度は医師とのコミュニケーションだけでなく、クリニック内での体験すべてが影響します。満足度を上げ、再来院してもらえるように様々な場面で患者さん目線の対応を心がけましょう。
まとめ
すぐに実施できそうなものから本格的に取り組む必要があるものもありますが、まずは取り入れられそうなものを試験的に始めてみても良いでしょう。
また同時に、お年寄りの集患が減ったのか、若い人が減ったのか、どのような人たちを集患・増患させるべきなのか、現状を振り返ることも大切です。