これからクリニックを開業しようと考える医師の方が、悩むことは開業のためにどれだけの資金が必要になるかということです。
ご自身で用意する金額が多いほど、借り入れを少なくすることもできます。また、担保となるものがあれば想像以上に借りることもできたりします。
どこで開業するのか、どんなクリニックにするのかで初期投資が違ってくるのはお分かりいただけると思います。
しかし、開業時の落とし穴として運転資金があります。ここまで考えて初期投資を用意している医師の方は少ないのではないでしょうか?
今回は、初期投資のお金、運転資金とは何か?など開業時に考えておくべきお金のお話をしていきます。
実際に資金はどれだけ用意したらいいの?
「開業資金にはこれだけ必要です!」と明確な金額があれば、それが一つの目標となり、開業に向けた準備が進められます。
しかし、実際のところはどれだけ必要なのか?と問われると、答えはありません。
・戸建てのクリニックは一億円以上
・テナントのクリニックは5000万円ほど
上記のような相場を様々なサイトでもご紹介されていますが、これもあくまでも目安です。
なぜなら開業する土地はどこなのか?これによって大きく変わってきます。
都心に近い土地を購入、テナントを借りるとなれば地場相場が、地方都市と比べたら大きく違うことは明白です。
さらには、標榜する診療科によっても違います。内科であれば内視鏡、レントゲンなど高額な医療機器を用意する必要があれば、金額は上がっていきます。せっかくなら新しいものを用意したいですよね。
このように状況が変われば金額も大きく変わってくるため「これだけ必要です!」という明確な答えにたどり着くことはできません。
開業時のお金を用途ごとに分けて考える
開業資金は、ご自身で目安となる金額を明確にしていく方が早いです。きちんと金額を算出したいということであれば、コンサルや銀行など専門家に相談してみるのも一つの方法です。
漠然と大きな額を用意するとなると、さらに分からなくなります。まずは「どこにお金が必要なのか」を自分で理解していく意味も込めて、項目を上げていきましょう。
・土地に関わる費用
・建設費用
・医療機器、設備の購入費用
・広告費
・電気代
このように考えられるだけの項目を挙げてください。
初期投資と運転資金を分ける
先述のように費用の項目を挙げていくと、自然と見えてくるものがあります。
・開業するために必要なお金(初期投資)
・開業後に必要なお金(運転資金)
開業するため、その時だけ必要となる費用と、開業してから今後必要となる費用の二つに分けることができます。これは経理の経験の有無は問いませんません。誰でも自分が開業した時に置き換えたら分かることなので、この二つに費用を分けていきましょう。
なぜ分ける必要があるのか?
ここに疑問を思われた方もいらっしゃると思います。
この二つは、全く違うタイプのお金です。これを一緒に考えていると、さらに混乱を招くことになるので、別々にして考える方が理解が深まります。
一つずつ説明していきます。
初期投資
開業資金、イニシャルコストなど、様々な言い方がありますが、純粋にクリニックを開業するために使う必要なお金という意味になります。
つまり、これらの費用が該当します。
・土地購入代
・テナント入居費
・広告費
・医療機器の購入
・建物の建設費
・建設に伴う内装工事、外壁工事費用
最初にまとまった金額が必要となる理由は、全てゼロからの立ち上げになるからです。ご自身で用意するお金、融資によるお金、それぞれ一括では無理なものもあるので、今後分割での支払いが必要となります。
運転資金
開業した後、クリニックを運営していくために必要となるお金をいいます。
こちらはランニングコストとも呼ばれます。
多額のお金を必要とする初期投資との違いは、金額は少ないとしても継続して払い続ける必要があるものです。
例えば、テナントを借りての開業の場合は毎月の賃貸料が発生します。この他にも電気、水道、人件費、返済など毎月の負担があります。
初期費用は予め必要なお金を用意するところから始まりますが、運転資金はクリニックの売上にて支払いをしていきます。
運転資金はどのように用意するの?
運転資金はクリニックの売上と言いましたが、これから開業しようと思う医師の方ならお分かりだと思いますが、クリニックの売上は二つの方法で受け取ります。
一つは、クリニックの窓口にて。
医療保険の10割のうち、窓口では負担の3割をいただくことになります。これは当日に受け取ることができます。
問題なのは、残りの7割です。こちらは診療報酬にて国へ請求します。こちらの請求分は内容の確認などがあるため、支払いがされるまでに2ヶ月〜3ヶ月ほどかかります。
きちんと受け取れるお金ですが、すぐに手にすることはできません。
つまり、開業してすぐの1ヶ月から半年ほどは、運転資金をすぐには用意することができません。この状況を考えると、初期投資にお金がかかりますが開業してすぐの運転資金も用意できるように、見込み金額をここまで考えておく必要があります。
ここが落とし穴!開業直後は赤字覚悟で考える
先述したように支払いが遅れるからその分を用意するというところに、実は落とし穴があります。
支払い分が用意できるというのは、開業時から黒字経営をイメージしていることになります。
しかし、実際は開業当初から黒字経営は難しく、売上、利益より支出の方が上回ることがほとんどです。
いつから黒字経営になるのか?これにも個人差はありますが、半年から一年後と位置付けているケースがほとんどです。
固定費、必要経費、赤字の補填など、厳しい状況を考慮して事業計画をしてください。働けど、働けど、利益を産まない状況は辛いと思います。
開業してからどのようにクリニックを運営していくのかは、誰しも課題です。低い収入の中でも少しずつプラスに転じることを目標にしていくことが重要です。
そして危険なのは、ある程度まとまった額が入ってきます。ここで派手に使ってしまわないように注意してください。入ってくるお金はすでに使い道が決まっているというイメージを忘れないでください。
落とし穴を上手に切り抜けるためのポイントです。
・収入は遅れて入る
・いきなり黒字経営は難しい
・赤字と固定費の支払いを予め予想しておく
・少しでもプラスを出す
・派手にお金を使わない
これらを意識して開業時を乗り越えたら、一年後には緩やかでも黒字に変える可能性が見えてきます。
まとめ
初期投資、運転資金、開業時の資金についてご紹介しました。
開業すると言ってもほとんどの医師の方が何もわからない状態から始めています。
「とにかくお金がいる!いくらいる?」お金を準備することにフォーカスしがちです。
しかしそれでは、実際にクリニックを開業させたり運営させていくことは、ざっくりすぎてどこにどれだけお金が必要なのか、自分では検討がつきません。
お金の動き、収支の把握は全てが理解できなくても、わかるようにしておくことをオススメします。この理解ができることで、お金を派手に使うことは必ず減ります。さらには次への展開を考えていくこともできるので、コンサルや銀行などでご自身の言葉でしっかり使えることができるようになります。
これは信用度が全然違うので、ぜひ体感してみてください。