クリニックの良し悪しを決めるのは、医師の評判だけでなく、外観・内装などといった建物やインテリアなどの印象によっても評価されます。
クリニックの設計から設備に至るまで、医師やスタッフに働きやすさと同じ様に、患者様目線で考えるべき場所があります。
それが、待合室やトイレです。患者様が最も気にする場所です。
では、患者様はどんな所を気にして見ているのか?どうしたら、良い印象となるのか?それぞれのポイントを確認していきましょう。
患者様への配慮
クリニックの建設時には、患者様への配慮を忘れないでください。
診療科によって、来院される患者様の性別・年代は全く異なりますが、それぞれに適した場所である必要があります。
・痛みがある患者様
・サポートが必要な患者様
・感染が疑われる患者様
医師やスタッフは、受け入れる側として上記のような患者様が来院された時に、何が必要なのかを考える必要があります。
または、開業する時に医師は設計士に相談することもオススメします。
極端な言い方をすると、医療現場であっても、百貨店などのサービス業と変わりません。患者様への配慮に欠けるクリニックには、患者様も来院されません。
患者様の立場になって、考えてみましょう。
待合室に心がける3つのポイント
クリニックの顔とも言える待合室は、来院される患者様が最初に目にする場所です。
この待合室において心がけたいポイントをご紹介します。
椅子へのこだわり
診察室に呼ばれるまで、患者様は待合室にいます。
繁忙期や診察時間によっては、長くお待たせすることも考えられるため、座る椅子にも配慮が必要となります。
いかにもクリニックにあるような長椅子でなくても構いません。
こんな所に注目して考えてみましょう。
椅子の座り心地の良さ
繁忙期には、診察までに1時間程度お待たせすることも考えられます。同じ姿勢のまま座っているのは苦痛なので、適度な柔らかさのある座り心地の良い椅子がオススメです。
また、待合室といえば長椅子を連想されますが、一人がけの椅子を用意したり、背もたれのある椅子を用意することで、患者様自身が楽に座れる椅子を選択することができます。必要であれば、クッションを用意しておくのも喜ばれます。
座面の高さ
座面の高さは、非常に重要なポイントです。
健康な状態であれば、立ったり座ったりも楽にできますが体調が優れない場合には、その動作そのものを辛いと感じます。
また、高齢者、足腰に不安のある患者様にとっても同じことがいえます。
椅子を選ぶ時には、実際に座ってみることはもちろんですが、可能であれば業者やスタッフにも協力してもらい、座った感想を聞いてみましょう。
患者様に喜ばれる椅子が見つかります。
色合い
椅子の座り心地と同じぐらい大切なのが、色合いです。
待合室を快適な空間にするべく、天井の高さや照明、壁なども選ばれています。この快適な空間を損なわない色合いを選ぶ必要があります。
さらには、色の持つ印象もあります。
・暖色系
気分を高揚させ、時間の流れが早く感じる作用があるとされています。オレンジやベージュなど。
・寒色系
副交感神経に作用し、興奮状態を鎮める作用があるとされています。青・白・黒など。
こうしてみると、クリニックの待合室では、寒色系が多い感じる人もいると思います。寒色系には、誠実さと清潔さが伝わる色だとも言われていることが理由の一つです。
また、診療科別にみると、小児科や産婦人科では暖かみのあるピンクや黄色などが使用されるケースもあるため、色の持つ印象から「癒しや元気がもらえる」イメージが伝わります。
待つ時間を感じさせない工夫
クリニックで抱える悩みの一つとして、「待ち時間」があります。誰一人、待たせることなくスムーズに診察・治療ができたらよいのですが、患者様の症状や繁忙期には、それができないことがあります。
そんな時に待ち時間を負担に感じさせない工夫をしておくことも、患者様への配慮として必要となります。
テレビや雑誌を置く
最もポピュラーな方法である、テレビと雑誌です。
来院される患者様の年齢層に合わせた番組や雑誌を用意しておくことで、時間を潰すことができます。
また、テレビ番組ではなく、水槽に見立てた映像を流して癒し効果を期待するクリニックもあります。
子供への対応
大人でも診察を待つ時間は苦痛です。子供の場合は大人以上に待てない、調子が悪くグズってしまうこともあります。仕方のないことだとは分かっていても、調子の悪い時には辛く感じてしまうのが本音です。
待合室の片隅に子供のおもちゃや、絵本を用意しておくことで、待合室の雰囲気も良くなります。
情報提供の場所として活かす
患者様に待っていただく間に、病気や食事などについて、正しい情報を知ってもらえる場所として活用しましょう。
「○○クリニックの先生が言ったから、続けている」と、言ったように、患者様は医師に言われたことを正しい情報として理解して実践しています。また、良い治療法があるクリニックとして口コミしてもらえることも期待できます。
情報提供の方法として以下のような方法があります。
・ポスターを貼る
・病気の予防や改善の資料を設置する
・治療や体をサポートする医療用品を紹介する
こうしたものは、製薬会社などから無料で提供されるので、常に新しい情報を提供することができます。
また、設計時に壁は、ポスターが貼れる素材を選んだり、掲示スペースを考えた設計を相談しておくと、開院後に問題なく行えます。
トイレに心がける3つのポイント
クリニックに限らず、トイレが綺麗であることは絶対条件です。トイレは、あればよいと捉えず、来院数を左右すると考えるべきです。
さらには、どこに配置すると患者様が利用しやすいのか、設計士と相談することが必要です。
十分な広さ
患者様の中には、車椅子や介助を必要とされる方もいます。どんな方でも快適に使用できるように、トイレの広さには配慮しましょう。
例えば、車椅子の患者様が使用される場合です。
介助者様の有無によらず、個室内で車椅子を方向転換する必要があります。この場合、必要とされる広さは、約2メートルとされています。最低でも奥行きに1.8メートルは欲しいところです。
トイレは分ける
トイレの基本として、男女は分けてください。特に女性の場合、男女兼用というだけで使用をためらう方もいます。待ち時間が長くなりトイレも使えないとなれば、気分も悪くなり来院もためらうようになります。
さらに、可能であれば、車椅子や介助が必要な患者様用も分けることも望ましいです。
常に衛生的に
衛生面には最も配慮が必要です。
機能や内装を充実されるというよりは、綺麗な状態を保つことで衛生的に保たれていることが伝わります。
便座周り、洗面台周りの汚れは、不衛生に見えます。また、怪我の状態や処置によっては出血する場合もあります。血の汚れには患者様も敏感になります。
定期的に点検をしたり、スタッフ自身が使用する時に掃除をしてください。
開業する際には、こうした面を踏まえて、設備を業者と打ち合わせしておきしましょう。
さらに心がけたいポイント
ここまでのポイントを心がけるだけでも、来院数は伸びてきます。
さらに、可能であれば実現させたいポイントをご紹介します。
待合室の隔離について
隔離と聞くと、大袈裟にも聞こえますが、感染が考えられる患者様用の待合室を意味します。
内科や小児科では、インフルエンザやノロウィルスといった空気や飛沫による感染が考えられる症状で来院される患者様がいます。待合室は複数の患者様がいらっしゃるので、症状によっては隔離できる待合室でお待ちいただくことも考えましょう。
隔離する場合には、入退室、待合室から診察と可能な限り他の患者様と接しない様に、配置してください。
オムツ交換台について
トイレ内に設置されるケースもありますが、別々にすることで他の患者様に気を使うことなく使用できます。
こうした配慮は、小児科・産婦人科で必須だと考えます。
動線を考える
待合室から診察室へと、また逆に診察室から待合室への動線を考えてみましょう。
患者様は必ずしも診察室に入って、診察室から出るとは限りません。処置室やレントゲン室に移動する患者様もいらっしゃいます。
こうした場合に、スムーズな移動が必要となります。
また、診療科によっては、他の患者様と接触しない配慮が必要となる場合もあります。
歯科医院の場合には、治療後に歯や口腔内の様子を見たい患者様もいます。トイレも動線の一つとして考えたいですね。
まとめ
いかがでしたか?
クリニックにおける待合室とトイレの重要性をご紹介しました。
どちらも必要であり配置はするけど、特に気には止めていないというクリニックは少なくはありません。
しかし、患者様は医師への信頼度と同じぐらい、クリニック内の様子を見ています。人の記憶は悪いことほど印象として残ってしまうものです。
口コミやインターネットでのレビューから、良くない情報が広がると、そのまま患者様の来院数にも響きます。
インテリアや設備に関しては、良いものが次々と発表されていますから、クリニックに相応しいものを業者と選んでみましょう。
体調の悪い患者様が、クリニックで少しでも快適に過ごしていただける様に考えてみてください。