医師の目標として「いずれは開業する」という方も多いはずです。
研究を続ける医師、設備の整った病院で自分の技術を磨いていく医師、開業して自分の力を試したいという医師、それぞれにいろんなタイプの医師がいます。
そんな中でも開業するからには、やはり成功したいという野心はあるものです。逆に言えば、それぐらいの決意がないとクリニック経営は失敗してしまう可能性もあります。
現在は、コロナ禍で少しずつ緩和されつつありますが、医療業界にとって厳しい状況が続いていますが、開業する医師はいます。
ライバルの多い中に飛び込んでいくには勇気も必要ですが、最も必要なのは「他院には負けない強みを作る」ということです。
今から開業するということは、すでにライバルが多いことは心得ているはずです。そんな中で同じことをしていては経営も上手くいきません。
そこで、今回は、他院には負けない強みを作る方法をご紹介します。医療業界に長くいらっしゃることで、ご自身がお持ちなる強みや「これが強みとなる!」ということに気づいていない場合もあります。
「こんなことで他院と差がつくのか!」と気づくヒントを掴んでください。
クリニックは選ばれる時代
医師という職業は、人の命を救うことができるため周りから権力のある人、偉大な人と思われがちです。患者様がそう思われることは構いませんが、問題なのは医師がそれを鵜呑みにしてしまうこと、勘違いしてしまうことです。
こうした間違った志を持ったまま開業をしてしまうと、患者様に横柄な態度をとってしまったり、集患など大変な作業の必要性に気づけないことがあります。
世の中には、同じように医師がいること、患者様に選ばれないとクリニックは継続できないということを忘れないでください。
ライバルは多い
標榜する診療科によってライバルの数は違いますが、内科は圧倒的に多いです。手術が必要となる外科系は最近では減っていますが、耳鼻咽喉科、眼科、心療内科というのは増えています。
同じ診療科を標榜するクリニックは、全てライバルです。その中から勝ち残ること、選択肢の一つになることがスタートです。
実際に他院がどんなことをしているのかを知ることも大事です。
経営者目線で生き残りを考える
勤務医時代なら、ご自身の実力だけで患者様に選ばれる状況だったはずです。なぜなら、十分な医療機器があり、治療を希望する患者様は後を経たないからです。
診察や手術の順番を待つということもあったのでしょう。
しかし、これは病院やご自身の評価だけで選ばれることですが、実際にクリニックの経営に必要かというと、少し解釈が変わってきます。
馴染みがないかもしれませんが、数字を追うことが要求されるようになります。
初期投資の融資や医療機器の購入など、返済を考えながら診察や治療をする必要があるのです。
勤務医時代のように、ただ手術をするだけでなく、売上を確保していく治療をする必要があるのです。
数字ばかり追いすぎてもいけませんが、地元の患者様のためにもクリニックを続けていくには必要なことだと考えてください。
〇〇なら、このクリニック
理想の状況は「〇〇なら、このクリニックがいいよ」と、口コミで紹介されることです。実績とスタッフの対応など様々な評価のもと、評判を呼ぶ状況を作り、強みでさらに他院に差をつけるのが最も理想とされるところです。
強みとして挙げられること
それでは実際に、どんなことが強みとなるのかをご紹介します。
ご自身にとっては当たり前のことも含まれるかもしれません。しかし、これからご紹介することは患者様の立場になって考えると「助かるな」ということばかりです。
そして、同時に問題点となることもあります。強みとして取り入れたいと考える段階で、問題点を解決することも考えられたら、さらに良くなる事がイメージできます。
専門性を打ち出す
クリニックでできることに専門性を持たせてください。
例えば、内科の「内視鏡検査」です。今では、ほとんどの内科で内視鏡検査ができます。さらには径鼻からの内視鏡も当たり前になりつつあります。
では、どこを強みにするかといえば
・痛みも苦しくもない(麻酔使用)
・胃カメラと大腸カメラが同時にできる(忙しい人向け)
・検査目の個室がある(大腸カメラの検査前準備)
このように、内視鏡検査に対して患者様が不安視するところの解決策を伝えることも強みとなります。
問題点1:自ら発信することを忘れない
こうした患者様に喜ばれることは、クリニック側から発信をしないと患者様には伝わりません。これから検査をする患者様だけに伝えても意味がありません。これから検査が必要となる患者様(見込み患者様)に対しての発信が必要です。
問題点2:他院との違い
他院との違いとは、先ほどのような強みとなる部分はもちろんですが、使用しているカメラについても説明しておくと、安心してもらえます。実際にどんな医療機器を使っているのかは、気になります。鼻や口からカメラを入れることはイメージがつきません。検査の手順についても説明しておくといいでしょう。
土日、夜間の診療時間
クリニックの診療時間はどこも大きく変わりません。しかし、最近増えてきているのは、土日と夜間の診療です。
これまで歯科医院では、他院との差別化で仕事が休みとなる日時で診療をするケースが増えていました。
こうしたケースを踏まえて、最近ではクリニックでも増えつつあります。
土日に加え、平日の夜10時まで診療をするクリニックもあります。
平日では診察に来れない人にとっては嬉しいサービスです。こうしたニーズがクリニックの周辺でも該当するなら導入を検討してください。
問題点1:スタッフの確保
土日、夜間に診療をするというのは、サービス業なので当たり前と言えば当たり前ですが、スタッフの協力がないとできません。クリニックに勤める場合、昼間を働き方の条件とするスタッフもいるので、人数を確保することも必要です。
問題点2:周辺住民の理解
夜22時まで診療となると、周辺では寝静まる時間です。この時間にクリニックに患者様が来院されるということは、ライトが明るかったり騒音問題などが考えられます。苦情となる状況が考えられるので、事前に周辺住民に説明をして理解を得ることが必要です。
周辺住民とは揉めないように、協力してもらえるぐらいの関係性が理想です。
異なる複数の診療科を標榜する
二名以上の医師との開院で複数の診療科を標榜することができます。最近では、ご夫婦で開業をすることも増えているので、必然的に複数の診療科を標榜することが増えているようです。
また、同じ専門で複数の医師で開業する場合もあり、この場合は、診療や設備に信頼と充実さを感じられるので、集患の強みになっています。
問題点1:医師の確保
まずは、医師の確保です。大学の同期、職場の先輩、後輩などをきっかけに一緒に開業する医師を見つけることは不可欠です。
人柄や考え方、将来の目標など十分に話を聞いてから決めることなので、時間がかかるケースもあります。
問題点2:治療や医療機器への不安
先ほどのように、専門が同じで複数の医師がいる場合の開業は、周辺住民も「いいクリニックができる」と期待をします。
これが異なる診療科の場合、二つの治療が1ヶ所でできるというメリットはありますが、限られた場所で設備的にも大したことないのでは?と思われがちです。実際の治療に関係しなくても、患者様はこうした医療機器をみてクリニックの質を決めつけるケースもあります。
クリニックを開業して終わりではない
今回は、強みの作り方、何が強みになるのかをご紹介しました。
強みを作り開業した後も、安定したクリニック経営がすぐにできるのかと言われればそうではありません。
時間をかけて知ってもらうことが重要です。そうすることで信頼関係ができますから、自分からの発信以外に口コミをしてもらえるようになります。
ご自身の努力だけでなく、人が巻き込めるようになったら、それが一番の強みになること間違いなしです。