クリニックに患者様が来院された時に、目にするのは受付窓口となります。
診察券や保険証の提示など、患者様との応対がメインとなり、ここでの対応がクリニックの評価ともなりかねません。
では、どんな受付窓口をイメージして設計をすることがポイントなのでしょうか?
今回は、受付窓口について応対編と機能編と分けて、それぞれのポイントをご紹介します。
窓口の印象=クリニックの印象
クリニックの顔とも言われる受付窓口は、最初にスタッフと接する場所でもあります。
外観の印象はもちろんのことながら、中に入ってきた時の印象は、そのまま患者様から見たクリニックの印象ともなります。
・清潔感がある
・開放的である
・スタックの姿が見える
体調が悪く来院される患者様にとって、受付が暗く冷たい印象だった場合には、気分がさらに下がり、悪化する感覚を覚えます。
壁やインテリアの色などにも気を配り、院内に入った時に落ち着くような印象になるよう、設計を考えてください。
昔のクリニックが小さな窓口だった理由
いまでこそ、クリニックの受付窓口は、開放的でスタッフの姿も見えます。
しかし、過去にはクリニック(診療所と呼ばれていた頃)の窓口は、全く逆で閉鎖的で小さな窓口でした。
こうした対照的な作りになっているのは、もちろんクリニックのイメージのためでもありますが、実は建物の構造にも理由があります。
現在は、鉄骨造などがメインとなって建物が建設されますが、それまでは木造が主流でした。これは、クリニックも同様です。
木造は、建物の骨となる柱を立てて、梁で支えます。そして間取りに合わせて壁を作ります。つまり、カウンターをわざわざ作るよりも出来上がった壁に穴を開けて、受付窓口とする方が、適していたのです。
また、こうすることで利点があるのは、働くスタッフの動線です。
現在は、当たり前のように医療事務員がいて、受付や会計などを準備するスタッフがいます。しかし、過去には看護師が兼任して受付をすることが普通とされていました。そのため、診察室・処置室・受付を近くするまたは、一つの部屋として間取りする方が動線として効率良くなるとされていました。
いま思うと、受付でスタッフの顔が見えない状態で、会計を済ませ薬をもらっていたのですから、違和感を感じてしまいますが、当時の小さな窓の向こうでは、働きやすい環境が整っていたのだと理解できます。
受付のポイント(応対編)
患者様の応対から考えた場合、どんな受付であることが喜ばれるのでしょうか?
いまのクリニックにおいて、考えなくてはいけないことが2つあります。
・患者様との距離感
・患者様ファーストであること
クリニックとして大切なことは、体調の悪い患者様を気遣い、寄り添うことです。これは、診察する医師や、処置をする看護師だけの問題ではなく、受付スタッフも同じです。
つまり、受付の設計を考える時に、ポイントとなる2つを可能にする設計を考える必要があります。
カウンター型にする
受付を開放的にするには、やはりカウンターにすることが適しています。
スタッフの顔が見えることはもちろんですが、患者様に話しやすい環境であることをアピールできます。
カウンターは、建物や院内の広さにもよりますが、奥行きには20cm〜30cmあることが理想です。これ以上あると、患者様と離れてしまい、応対が不便になります。
例えば、初診の患者様に問診票をお願いする場合です。
通常であれば、椅子に腰掛けて記入していただくように声をかけますが、全ての患者様がそうされるとは限らず、カウンターで記入されることもあります。この作業、地味にストレスでもあります。狭いところで書くと、よりそう感じてしまいます。
さらに、カウンターには、診察券入れやお知らせを掲示することがあります。患者様にとっても使い勝手の良いカウンターにすることも求められます。
待合室に出られる
患者様との距離などを考慮すると、カウンターから待合室に出られる設計も理想的です。
患者様にもいろんな方がいらっしゃいます。協力的な方、非協力的な方、体調が悪いのですから、仕方ありません。また、婦人科の不妊治療のように、診療科によっては名前で呼ばれたくないという患者様もいらっしゃいます。そのため、声をかけ受付まで来ていただくことが当たり前ではないケースもあります。
・嘔吐や発作など、緊急時に早急な対応ができる
・足腰が悪い、体の不自由な患者様のサポートができる
高齢者や体の不自由な方は、呼ばれてもすぐには受付まで行くこともできませんし、立つ動作も困難な場合があります。患者様に呼ばれたからサポートするというよりは、率先してサポートできることが望ましいので、待合室に出られるのはベストな状態だといえます。
しかし、守秘義務があるので待合室への動線を広く取ることはできません。カウンターの横を少し開けておくなど、出入りする位置は設計時に決めておきましょう。
受付のポイント(機能編)
では、次にスタッフの業務から見た、受付のポイントについてご紹介します。
診察時間はもちろん、診療報酬請求など事務処理をする場所にもなるので、ただのカウンターというわけにはいきませんので、設計時にはこうした配慮も必要となります。
カウンターの高さ
クリニックのカウンターには、2つの異なる役目があります。
1つ目は、患者様の応対です。基本的には患者様もスタッフも立った状態でのやりとりとなります。身長にもよりますが、約1mの高さが理想となります。
2つ目は、スタッフの作業です。クリニックでは医療事務員の作業は、カウンターでとなります。医事コンピュータがあるため、診療報酬請求の業務や日常業務には最適です。業務の場合には、座って行うので高さは、70cmほどが理想です。
いずれもカウンターの理想とする高さが違うため、悩んでしまうところです。また、クリニックで扱うカルテや書類は、守秘義務があるため患者様に見られないようにする工夫が必要です。
対応策としては、患者様と対応するカウンターをトップカウンターとして高く作り、内側に作業をするカウンターを設けます。
こうすることで、医事コンピュータや書類を隠すことができるので、患者様の目のは止まりません。
機能を重視するあまり、内装との違和感が生まれないように、素材や色などデザイナーと打ち合わせをして考えてください。
カウンター内側スペースについて
カウンターの内側スペースには、ある程度の広さを確保したいところです。
スタッフ同士が行き交うこともありますが、パソコンやFAXなど多くの電気機器が設置されます。機材を搬入したら、思っていたよりスペースがなく、狭くなることがあります。狭い空間にスタッフが3、4人いると、待合室から患者様が見た時に、圧迫感があり苦しそうにも見えます。
現在は、電子カルテを導入するクリニックも増えているので、既存のクリニックよりは、カウンターの内側にスペースが確保しやすくなっています。こうして空いてスペースを効率良く利用してください。
防犯対策
建物の防犯対策に加えて、受付にシャッターを備えるなど防犯対策をしているクリニックもあります。医療機器や電気機器などが盗まれるだけでなく、患者様一人ひとりの情報を守らなくてはいけません。
こちらもどんな防犯対策ができるのか、設計時に相談してください。
まとめ
いかがでしたか?
今回は、受付窓口に関する設計時のポイントをご紹介しました。
病院のように初再診・各診療科・会計などといったように、担当ごとに窓口があるわけではなく、一つのカウンターで全てのことを担います。
繁忙期や混雑時には、カウンターも患者様で溢れてしまいます。
少しでもお待たせすることなく、スムーズな応対ができるよう、クリニックの設計実績のある建設会社と相談しながら考えたい場所です。
クリニックの顔として、受付窓口が患者様の安心となり、スタッフが快適に作業できる場所となるようにしていきましょう。