クリニックを開業することで収益の要として「健診事業」があります。診察や検査など、ご自身の専門と活かすのとは違い、行政や企業からの依頼によって行うものです。
開業をしたら全てのクリニックが健診をするかといえばそうではありません。
けれど、健診を提供することで、患者様の健康管理をより丁寧にサポートできるだけでなく、クリニックの収益アップにもつながります。
近年、予防医療の重要性が高まる中、健診に対する患者様のニーズも増加しています。クリニックが健診を提供することは、このニーズに応えるだけでなく、地域医療の質の向上にも貢献できる取り組みになります。
今回は、クリニックが健診を行うメリットについて、患者満足度の向上、収益アップ、地域医療への貢献の観点から詳しく解説していきます。
また、健診事業を始める際の注意点についても触れ、円滑に事業を進めるためのポイントを押さえていきます。
健診を提供するメリット
1. 患者満足度の向上
定期的な健診を通して、患者様の健康状態を継続的にチェックできます。これにより、患者様は自分の健康管理により積極的に取り組むようになり、クリニックへの信頼度も高まります。
健診の結果を基に、生活習慣の改善など、きめ細やかなアドバイスを提供することで、患者様との信頼関係をさらに深めることができます。
また、健診をきっかけに、患者様がクリニックに足を運ぶ機会が増えることで、継続的な健康管理につなげることも可能です。
2. 早期発見・早期治療の実現
健診で疾患の兆候を早期に発見することで、早期治療が可能となります。これは患者様の健康維持につながるだけでなく、クリニックにおいても予防医療として患者様への適切な指導をすることができます。
例えば、生活習慣病の予備群を早期に発見し、適切な生活指導を行うことで、重症化を防ぐことができます。
また、精査や治療のための転院など、患者様に不安を与えることもありません。
迅速な対応こそが患者様の安心となりますから、互いの関係性においてもより信頼でつながることができます。
3. 収益の安定化
健診は、保険診療とは異なる収益源となります。定期的な健診の提供により、安定した収入を見込むことができます。
特に、企業との提携による職場健診の実施や、自費診療としてのオプション検査の提供など、健診事業の幅を広げることで、収益の安定化を図ることができます。
そして、行政が市民を対象とする健診においても同様のことがいえます。病院へ行くのは苦手という人も、一年に一回は検査と思う人が多いので継続して来院されます。
何より、未収金となる心配がないことは、開業間もない時にはクリニックにとって安定した収益となります。
4. 地域医療への貢献
クリニックが健診を提供することで、地域住民の健康維持・増進に貢献できます。これは、クリニックの社会的評価の向上にもつながります。
地域のニーズに合わせた健診メニューを提供することで、住民の健康意識を高め、地域全体の健康レベルの底上げにも寄与できるでしょう。
また、健診を通して得られたデータを分析し、地域の健康課題の把握や対策の立案に活用することも可能です。
地域性もありますが、やや高齢化進んでいる地域などでは、近くに安心して診察をお願いできるクリニックが近くにあることは嬉しいことです。
こうした体の不安をなくし、日常を過ごせる安心を与えるのも医師の仕事であり、地域貢献となります。
健診を提供する際の注意点
1. 設備投資
健診を行うためには、検査機器などの設備投資が必要です。費用対効果を十分に検討し、計画的に投資を行うことが重要です。
初期投資を抑えるために、リースや中古機器の活用も選択肢の一つです。また、近隣のクリニックや大規模病院と機器を共同利用(提携先)するなど、効率的な投資の方法を検討することも有効でしょう。
主に、MRI、CTといったものは、先述に通り提携先を見つけて相談することをオススメします。
2. スタッフの教育
健診を円滑に実施するためには、スタッフの教育が欠かせません。検査の手順や結果の説明など、専門的な知識とスキルが求められます。
スタッフ全員が健診の意義を理解し、患者様に適切な説明と対応ができるよう、定期的な研修を行うことが大切です。また、健診に特化したスタッフを配置することで、より質の高いサービスを提供できます。
クリニックでの検診は、通常の診察患者様に混じっての検査になります。名前や番号などを間違えないように、クリニック内でルールを決めて対応することで円滑に行うことができます。
3. 広報活動
健診事業を成功させるためには、地域住民への広報活動が重要です。クリニックのウェブサイトやチラシ、地域のイベントなどを通して、健診の重要性をアピールしましょう。
また、地域の自治体や企業との連携を積極的に進めることで、健診対象者の拡大を図ることができます。健診の結果を踏まえて健康セミナーの開催など、健康意識を高めるための取り組みも効果的です。
行政の健診においては、クリニック紹介の一覧が患者様に用意されています。流れに沿って申し込みがありますが、問い合わせがあることも想定されます。こうした対応一つもクリニックの広報となりますから、好印象となるような対応を心がけてください。
4. 法的規制の遵守
健診事業を行う際には、関連する法令や指針を遵守する必要があります。個人情報の保護や医療廃棄物の適切な処理など、コンプライアンスに関する知識を習得し、適切に対応することが求められます。
企業や行政においては、専用の用紙がありますから間違えることないように記入をしてください。そして、スタッフに請求を間違えないように指導しておくことも必要です。
必要に応じて、専門家からのアドバイスを受けることも検討しましょう。
検査結果は速やかに報告
日々の忙しい業務の合間に行う検診ですから、つい後回しになりがちなこともあります。
しかし、患者様の気持ちになれば「早く結果が知りたい」、「異常なしであってほしい」という不安から落ち着きません。
大体、1〜2週間の間に結果が伝えられるように、取り組んでください。
こうした迅速な対応は患者様だけでなく、企業や行政に対しても好印象となりますので、時間を見つけて少しずつ対応していきましょう。
まとめ
クリニックが健診を提供することは、患者満足度の向上、収益の安定化、地域医療への貢献など、多くのメリットがあります。一方で、設備投資やスタッフ教育、広報活動など、注意すべき点もあります。
これらを十分に検討し、計画的に進めることで、健診事業を成功に導くことができます。
特に、患者様との信頼関係を築き、地域のニーズに合わせたサービスを提供することが重要です。
クリニック経営者として、保険診療と並行して健診事業を行うことを考えてみましょう。患者様の健康維持・増進と、クリニックの発展の両立を目指してください。
健診事業は、クリニックの新たな収益源となるだけでなく、予防医療の推進や地域医療の質の向上にも大きく貢献できる取り組みです。
まだ、導入されていないクリニックにおいては、健診事業の導入をご検討ください。