新型コロナウイルス、ロシアによるウクライナへの侵攻など、世の中の動きが目まぐるしく変わっていきます。
物価上昇が続く中で、2022年秋には深刻な食料など物が不足してくると言われています。
しかし、そんな状況の中でも、開業に向けて準備を始めている医師の方もいらっしゃるのではないでしょうか?
常に先を読み、どのタイミングで開業するのかは現在のところ悩ましいときです。
そこで今回は、開院時までに少しでもリスクが減らせるように、確かなスケジュールとポイントをご紹介します。
失敗は付き物とはいいますが、対策して被害を小さくできるならやらない手はありません。
ぜひ参考にしてください。
開業準備は約1年半まえから始まる
将来は自分でクリニックを建てて、経営者としても頑張りたいと考える医師の方は多いのではないでしょうか?
開院したいといっても、それぞれの状況によってニュアンスが変わってきます。
例えば、親族に開業医もおらず、自分の実力を試したいと開院するタイプ、親族や親が開業医で、すでに存在する親族のクリニックを継承するタイプとあります。
この二つはスタートラインから違うので、準備、考え方、関わる人たちも随分と違ってきます。
今回は、全くの新規で「自分の実力を試したい」という新規開業のスケジュールを紹介します(開業が具体的に決まっていることを前提とします)。
1〜1年半前に取り組むこと
開業する時期が決まれば、この時期に最初にやることがあります。それは、経営理念をしっかり考えて決めることです。ご自身のクリニックを成功させるためには経営理念が必要です。ここがブレないように、ご自身でしっかり考えてください。
なぜ、経営理念が必要なのか、考えたことはありますか?
実は、開業までに準備する中で、何度も書いたり聞かれたり、そして悩んだ時の選択基準となるからです。
経営理念に大切なことは、こちらです。
・ご自身が思い描くクリニック
医師を志した時のように、クリニックを開業したいというきっかけや出来事が誰にでもあるはずです。その思いから、どんな医師になりたかったのか、将来はどんな医療を提供したいのか、自ずと見えてくるはずです。
その見えてきたものを、自分なりにまとめて経営理念としましょう。あなたの思いを伝え共感してもらえる人たちが集まり、協力が得られるようになるのです。
そして次に必要なことは事業計画です。ここが最初に経営理念が必要となる場面です。
事業計画とは、簡単に言うと「思いを実現化させるための計画」です。ご自身の思い描くクリニックを作るためには、お金が必要になります。それは土地であったり、建物であったり、どれをとってもお金がかかるものばかりです。
自己資金で賄えるなら問題はありませんが、新規の開業で初期投資で約5000万〜1億2000万円かかるといわれています。不足分は銀行などで融資してもらうようにお願いしなくてはいけません。
融資も一度でうまくいけば事業計画も一度の作成で済みますが、うまくいかなければ何度も繰り返し作成することもあります。その時に、支えになるのが経営理念です。
経営理念をしっかり、熱い思いを伝えられるか?ここも大切なポイントです。
7ヵ月〜1年前に取り組むこと
この時期は、土地探し、物件(賃貸の場合)に入ります。
そのためのリサーチ、そして探すことを始めます。
ご自身が思い描くクリニックを建てるだけでは、経営理念が叶えられたかというとそうではありません。
建設したクリニックに患者様に来ていただくことで、思い描く医療、クリニックになります。
こうした経営理念に合う土地探しは、細かく調査するために3つの候補から探っていきます。
・都心、中心地
・郊外、住宅地
・医療モール、医療ビル
ほとんどのクリニックは、このいずれかに当てはまります。当てはまるところから、さらに深掘りをして探してください。
医療モール、医療ビルといった場合には、物件の空き状況にもよるので、場合によっては仮押さえ、契約をする必要があります。
土地、物件共に、少しずつお金を必要とする場面が増えていきます。融資先を積極的に探し、決まっていると理想的です。
4〜6ヵ月前に取り組むこと
この時期までには、土地、物件、融資先を決めてください。決まっていない場合には、スケジュールが遅れていると認識してください。遅れている場合は、無理に進めるよりはスケジュールをもう一度見直しましょう。うまくいかない時に焦って行動すると失敗する確率が上がります。
どこに原因があるのか、ご自身だけでなく専門家の力を借りて原因を見つけて立て直してください。
順調に決まったら、次は建物の外観や内装、医療機器や設備について決めていきます。
建物については、患者様の興味を引くので使う建材や素材にはこだわりたいところです。
また、内装は温かみのある色や素材、ユニバーサルデザインを意識した設計にこだわりたいところです。
こうした建物に関する打ち合わせは、細部までしっかり打ち合わせするようにしてください。勤務医で時間はないかと思いますが人任せにすると、必ず後悔することになります。
医療機器、設備というのは、デザインにこだわりすぎると使いにくいものもあります。ここでも経営理念に沿ったものを選ぶようにしてください。
上記のものが決まれば、動線など考えながら設計の打ち合わせに入っていきましょう。
1〜3ヵ月前に取り組むこと
この時期には建物の建設が終わり、内装がメインになってくる頃です。なるべく現場に行ける時間は作りたいところです。違和感やわからないところがあれば、現場監督に質問をして確認しましょう。
もし、行けない時は、画像や動画、ライブで状況を報告してもらうのもありです。
いよいよ始まるのが、PRとスタッフ募集です。
スタッフは、求人サイトや職業安定所などで手続きをしましょう。よく見かけるパターンとしては医事コンピュータを担当する会社が窓口となって採用を担当します。
書類の送り先であったり、連絡の代行などをしています。
内覧会、開院日は広告などを利用して、地域の人たちにしてもらいましょう。この広告を出すタイミングでホームページができていると理想的です。
1ヵ月前に取り組むこと
いよいよ完成した建物の中に医療機器や設備が整うと、開院に向けて緊張感が出てきます。
ここまでくると、申請、手続きが必要となってきます。
保険医療機関としての申請など、難しい書類を用意するのでチェックリストを作ったり、専門家にアドバイスをもらいながら進めていきましょう。
承認がされないとクリニックを開院させることができないので、必要とする日数なども確認してください。
スタッフの研修はこの時期に始まります。
経験者、未経験者、実績や経験値の違う人たちが集まってくるので、トラブルにならないように注意してください。
内覧会を経て、開院日を迎えるまでやり残したことはないか、スタッフは働ける状態なのか、いろんなところに目を配っていきましょう。
まとめ
いかがでしたか?
実際のスケジュールに合わせて、時期の見方、うまくいくポイントを紹介しました。
開業までに日数を要しますが、随所にやるべきことは明確になっています。だからこそ、このスケジュールに乗っていない時には問題があったり、うまくいかない原因が必ずどこかにあります。
こうした部分を見逃さないことが大事です。うまくいっていないままに開院してしまうと、開業後に軌道に乗せるのが遅れてしまいます。
ご自身の考えだけで走るのではなく、多くの協力者を得て相談できる状態で進めるのがうまくいくポイントなので、忘れないでくださいね。