医院やクリニックの開業は、勤務医としてキャリアを積み、医師として次のステップでもあります。
新しいスタートはより良くしたい、成功へとつなげていきたい。そう思うのは間違いではありません。
そこで、重要となってくるのは建物や内装です。適切な施工業者を選び、患者様にとって心地よい空間を作り出し、効率的な診療を行うことが成功を左右するともいえます。
しかし、多くの選択肢の中から最適な施工業者を見つけるのは、決して簡単なことではありません。医療の専門家であっても、建築や設計については馴染みが薄い分野ですか。どのような点に注目して比較すればよいのか、戸惑ってしまうはずです。
そこで今回は、クリニック施工業者の選び方について、詳しくご説明いたします。
施工業者選びのポイントから、クリニック建設で大切なことまでご紹介していきます。
なかなか聞けない設計・施工方法の選択、医療機関建設の実績と専門性の重要性、要望の聞き取り方、相見積もりの比較方法などのポイントもあります。
また、患者様第一の設計や地域に根ざしたクリニック作りの重要性、関連法規への対応など、クリニック建設特有の注意点についても参考にしてください。
クリニック施工業者を選ぶ時の注意ポイント
クリニックの設計・施工方法には 2 つのパターンがある
クリニックの設計・施工を依頼する際、大きく分けて 2 つの方法があります。それぞれの特徴を見ていきましょう。
「設計・施工が一括(建設会社)」
一つの建設会社に設計から施工までを一括して依頼する方法です。
メリット
- 窓口が一本化されるため、コミュニケーションがスムーズ
- 設計と施工の連携が取りやすく、工期の短縮が期待できる
- 予算管理がしやすい
デメリット
- 設計の自由度が限られる可能性がある
- 比較検討の機会が少なくなる
「設計(設計事務所)・施工(建設会社)をそれぞれの会社に依頼する分離」
設計を専門の設計事務所に、施工を建設会社に別々に依頼する方法です。
メリット
- 設計の自由度が高い
- 専門性の高い設計が期待できる
- 複数の建設会社から施工を選べるため、コスト面で有利になる可能性がある
デメリット
- 設計と施工の調整に時間がかかる場合がある
- 責任の所在が不明確になりやすい
どちらの方法を選ぶかは、要望や状況によって異なります。理想的なクリニック作りのためには、それぞれの特徴をよく理解した上で選択することが大切です。
医療機関の建設実績と専門性の有無
クリニック施工業者を選ぶ際、最も重要なポイントの一つが、医療機関の建設実績と専門性です。
豊富な施工実績によるクリニックの特化した知識があるのかがポイント
医療機関、特にクリニックの建設には、一般的な建物とは異なる専門的な知識が必要です。
例えば、基本としてこの辺りを押さえていて欲しいです。
- 医療法や建築基準法などの法規制への対応
- 感染対策を考慮した動線や設備の設計
- 医療機器の配置や電源の確保
- バリアフリー設計
これらの要素を適切に考慮できる施工業者を選ぶことが、理想的なクリニック作りにつながります。施工業者の過去の実績を確認し、クリニックや医療機関の建設経験が豊富かどうかを見極めましょう。
要望をどこまで聞いてくれるか
良い施工業者は、先生の要望をしっかりと聞き入れ、それを実現するための提案をしてくれます。
こちらの要望を聞いた上で、丁寧な説明や費用のことなどをきちんと話してくれる
施工業者との打ち合わせでは、以下のような点に注目してみましょう。
- こちらの要望を積極的に聞こうとする姿勢があるか
- 要望に対して、実現可能性や代替案を丁寧に説明してくれるか
- 費用面での透明性があるか(見積もりの内訳を詳細に説明してくれるか)
- 専門用語をわかりやすく説明してくれるか
これらの点で誠実な対応をしてくれる施工業者は、プロジェクト全体を通じて良好な関係を築ける可能性が高いです。
相見積もりで施工業者を比較する
クリニック建設のような大規模プロジェクトでは、複数の施工業者から見積もりを取る「相見積もり」が一般的です。しかし、単純に金額だけで判断するのは避けたほうがいいでしょう。
金額だけでは分からない、内容を比較して決める
見積もりを比較する際は、以下のような点にも注目してみましょう。
- 使用する材料の品質
- 設備の仕様
- 工期
- アフターサービスの内容
- 保証期間
金額が安くても、これらの点で劣っていては長期的には不利益になる可能性があります。各項目を細かく比較し、総合的に判断することが大切です。
担当者の人柄、対応も大事な比較ポイント
施工業者を選ぶ際、見落としがちなのが担当者の人柄や対応の質です。
なぜなら、これらの要素がクリニック開業の成功を大きく左右することがあるからです。
- コミュニケーションがスムーズにとれるか
- こちらの疑問や不安に丁寧に答えてくれるか
- 積極的にアイデアを提案してくれるか
- 信頼できる印象を受けるか
良好な人間関係を築ける担当者がいる施工業者を選ぶことで、建物の建設や内装がスムーズに進む可能性が高まります。
クリニックの建設で大事なこと
最後に、クリニック建設において特に重要な点をいくつかあります。
これらの点を意識している施工業者を選ぶことで、理想的なクリニック作りができます。
患者様第一の設計・・・過ごしやすさに配慮した施工ができること
クリニックは、患者様が心身ともに弱っている状態で訪れる場所です。
だからこそ、患者様の快適性を最優先に考えた設計・施工が求められます。
- わかりやすい案内表示
- ゆとりのある待合室
- プライバシーに配慮した診察室
- 清潔感のある内装
- 車椅子の方も利用しやすいバリアフリー設計
これらの要素を適切に取り入れることで、患者様に「また来たい」と思っていただけるクリニックになります。
患者様のための空間を意識・・・地域に根づくクリニック作り
クリニックは単なる診療の場ではなく、地域医療の拠点となる存在です。地域の特性や患者様の年齢層などを考慮し、その地域に根づくクリニック作りを心がけましょう。
- 地域の景観に調和するデザイン
- 地域のニーズに合わせた診療科目の構成
- 地域コミュニティとの交流スペースの設置
これらの要素を取り入れることで、地域に愛されるクリニックとなり、長期的な経営の安定にもつながります。
法律や条例の確認・・・提案してくれる、相談できる施工業者を選ぶ
医療機関の建設には、一般の建築物以上に多くの法律や条例が関係します。これらを熟知し、適切に対応できる施工業者を選ぶことが重要です。
- 建築基準法
- 医療法
- 消防法
- バリアフリー法
- 各地域の条例
これらの法規制に精通し、適切な提案や相談対応ができる施工業者であれば、許認可の取得もスムーズに進み、将来的なトラブルも避けられます。
まとめ
クリニックの建設やリニューアルは、医師としてのキャリアにおける大きな挑戦です。その成功の鍵を握るのが、適切な施工業者の選択です。
今回ご紹介した比較ポイントや注意事項を参考に、じっくりと検討を重ねてください。金額だけでなく、実績や専門性、コミュニケーション能力など、多角的な視点で施工業者を評価することが大切です。
また、患者様第一の視点を忘れずに、地域に根づくクリニック作りを目指しましょう。法律や条例にも精通した施工業者を選ぶことで、スムーズなクリニック経営が期待できます。