クリニックを建設する時に気になるのは、どれぐらいの土地が必要となるかです。「建物と駐車場のスペースがあればいいんじゃない? 」と簡単に思われがちですが、治療をする医師やスタッフ、来院される患者様のことを思うと、あまりいい加減な決め方はできません。
また、最近では、クリニックは飽和状態とも言われ、閉院してしまうところも少なくはありません。近隣にはない医療設備を導入するなど、他にはないクリニックとしてアピールも必要です。そうなった場合には、さらに土地の広さも必要となり悩んでしまいますね。
そこで今回は、クリニックの建物で必要となるスペース、そして診療科目ごとに必要となるスペースと面積についてご紹介します。
クリニックを建設する時に十分な広さが必要な理由
郊外でクリニックを新設して開業する場合に、基本的に必要となるのは、診察をするための建物と駐車場です。
これだけなら、カフェや美容院など他のサービス業と何も変わりはありませんが、クリニックは医療施設であり、他のサービス業より広さが必要となるため狭い土地では開業することが困難となります。
では、どんな理由で広さが必要となるのでしょか?
建物編(医院・クリニック)
クリニックには、診察室以外にもこんなスペースが必要となります。
・待合室
・処置室
・検査室
この他にもありますし、診療科目にもよりますが、診察に付随した部分がありまた、医療機器が大きい場合には、それだけのスペースが必要となるので、より広さが求められます。
そして、院内での動線についても考えておきたいことがあります。
来院
↓
受付
↓
診察(検査等も含む)
↓
会計(クリニックより退出)
誰でも、体調が悪い時は体を動かすことも辛く、最低限の動きで済ませたいと思います。さらには、デリケートな事情で来院している患者様なら、たとえ他人であっても顔を合わせたくないものです。
患者様に負担のかからない動線にするためにも、土地には広さが必要となります。
駐車場からみる理由
郊外や住宅地での交通手段といえば、やはり車です。ご自身が通院する他にも、家族が不調で診察を希望する場合には、近くても車で来院することになります。
クリニックにおいて駐車場は決して「おまけ」ではなく、必須であり、これが経営を左右すると言っても過言ではありません。
クリニックの駐車場として考えた場合、一番に求められるのは「一台ごとの駐車スペース」です。
例えば、不調を訴える家族、小さなお子さんや体の不自由な方を車から下ろしたり、また乗せる時には、広く場所をとります。その時に気になるのは、隣の車です。ドアなどに傷をつけてしまっていけませんし、そちらに気を取られるあまり家族に目がいかず、頭をぶつけてしまったりと、なんとも不快な思いになります。
こうした経験はストレスとなり、通院の負担にもなるため別のクリニックにかかりつけを変えてしまうことも考えられます。
商業施設のように駐車台数確保のために、一台分のスペースを狭くするよりは、余裕があることが望まれるので、土地の広さも必要となります。
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クリニックに必要となるスペース
建物と駐車場に十分な広さが必要な理由が分かったところで、具体的にどんなスペースが必要となるのかを確認しておきましょう。
診療科目に関係なく共通して必要となるスペースと、診療科目ごとに必要となるスペースに分けてご紹介します。
共通して必要なスペース
クリニックに共通して必要となるスペースは、3つあります。
・受付
・待合室
・診察室
・処置室
この3つは、診療科目に関係なくあり必要なスペースとなります。
受付・待合室について
クリニックの顔とも言える受付は、体調悪く不安な患者様に少しでも安心していただけるようにと考えます。
保険証の確認や問診票の記入など、医療スタッフと話す機会も多くなるため、人が行き交うだけのスペースが必要です。
また、内科や小児科では人への感染が考えられる症状で来院される患者もいます。インフルエンザやノロウイルスなど、「クリニックに行ったら、病気になった」と言われてしまっては、患者様への印象も悪くなります。
そこで、対策として増えているのが、待合室を分けるという方法です。事前に申告してもらい、感染を防ぐために別の待合室で診察を待っていただくことで、クリニックの待合室が感染経路とならないことを防ぎます。とてもよい方法であり、患者様にも喜ばれますが、この場合には、待合室のスペースを通常より広く必要があります。
診察室について
クリニックのメインとなるのが、診察室です。
診察室に最低限必要となるのが、医師用に机と椅子、患者様用に椅子、症状を診るベットです。そこに、医師・看護師・患者様(付添人がいる場合あり)が入ります。
診察室で求められるのは、やはり医師と患者様の距離です。近すぎても遠すぎても診察に影響するので、デスクや椅子の配置にも悩みます。
また、他の部分でスペースを確保したいと考え診察室を狭くすると、車椅子やベビーカーが入らなくなったり、付添人も入って満員状態になってしまいます。
様々なケースを考えて、診察室のスペースも確保する必要があります。
処置室について
採血したり、点滴したり、外科系のクリニックであれば外来でできる手術を行う場合もあります。処置室も重要なスペースとして考えられます。
診療科目によって必要となるスペースに違いがあります。
・点滴する患者様が多い
・吸入器などの医療機器を複数用意する
こうした処置の場合は、時間がかかり、体調の悪い患者様をお待たせすることもできないので、ベットや医療機器を複数用意するため、処置室のスペースは広くする必要があります。
診療科目による必要なスペース
診療科目によっても、クリニックで必要となるスペースが違います。
どんなスペースがあるのか、ご紹介します。
・レントゲン室
・検査室・カウンセリングルーム
・手術室
クリニックの施設基準にもよりますが、体を動かすリハビリ室や、不妊治療のように培養したり冷凍保存が必要なる場合もあります。さらには、デイケアを含むクリニックなどもあるので、開業する時には土地を決めるためにも診察・治療をどこまで行うかを明確にしておくことをオススメします。
レントゲン室について
内科・整形外科などにあるのが、レントゲン室です。骨や内臓の状態など外から触れるだけでは分からない体の状態を確認することができます。
レントゲンを撮影するためには2つのスペースが必要です。
・レントゲンを撮影する部屋
・レントゲン機器を操作する部屋
全身の撮影が必要であれば機器やスペースも広くなり、部分的な撮影のみであれば広くする必要はありません。
また、最近ではクリニックでもCT・MRIの撮影を可能とするところもあります。この場合は、レントゲン室とは別にスペースが必要となるので、さらに土地を広く確保する必要があります。
検査室・カウンセリングルームについて
クリニックで行う検査としては、心電図やトレッドミルなどがあります。検査が多い診療科目として、イメージしやすいのは眼科です。視力・眼圧・眼底・視野など、それぞれに検査機器があり、患者様を誘導する動線を考える必要もあります。
また、診察室とは別にカウンセリングルームを設けるクリニックがあります。精神科や心療内科がその特徴であり、医師の診察以外に臨床心理士と呼ばれる専門家と「話しやすい個室」として用意されています。
手術室について
開業したクリニックでも、手術室が必要となる診療科目はあります。
・整形外科・・・人工股関節など
・眼科・・・白内障
・産科・・・帝王切開
どれも施設基準をクリアしてとなりますが、クリニックでも手術は可能です。
手術のためには医療機器を完備しなくてはいけないので、スペースの広さとしては手術台や医療機器の配置やスッタフの動線などを考えなくはいけません。
クリニックの必要面積の目安
実際に、クリニックを開業する時に必要となる面積の目安についてご紹介します。
診療科目 | 必要面積 | さらに広さが必要となること |
内科 | 30~40坪 | |
小児科 | 30~45坪 | 待合室を一般と隔離室と分ける |
整形外科 | 50~70坪 | リハビリ室とMRIを設ける |
眼科 | 30~40坪 | 手術室を設ける |
皮膚科 | 15~40坪 | レーザーや脱毛などの治療をする |
耳鼻咽喉科 | 30~45坪 | |
脳神経外科 | 25~50坪 | MRIを設ける |
精神科・心療内科 | 20~30坪 |
こちらは、建物に必要な面積の目安となります。
駐車場などを含む場合には、さらに面積は広くなります。
医療機関には、定められた施設基準があるので設計をする場合には、クリニックの建設実績がある業者に依頼することで、より良いクリニックを建設することができます。
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4.まとめ
いかがでしたか?
クリニックを新設する場合に、建物で必要となるスペースについてご紹介しました。
病院ほどではなくても、クリニックでもやはり広いスペースと土地が必要となることが分かります。
設備を整えるだけでなく患者様に負担のないように動線にする必要があるため、通常のスペースより広くする必要があります。どんな患者様が来院されても対応できるようにしたいですね。
また、CTやMRIのように特殊な医療機器や手術室に関しては、病診連携などを利用して近隣の病院でお願いすることもできます。こうした横の繋がりができることもクリニックとして強みとなるので、開業の際に相談してみてはいかがでしょうか?
そして、医師であるご自身とスタッフが働きやすい環境であることも忘れないでくださいね。