何事も新しいことを始める際は、予期しないトラブルが起こるものです。
どのようなトラブルが起こり得るのか、その内容と対処方法を知っておくことで、問題が大きくならずに切り抜けることが出来るでしょう。
今回は、クリニック開業時に起こり得るさまざまなトラブルと、その対処法について説明していきます。
モンスターペイシェントとは
医師や看護師に対して、理不尽なクレーム等を長時間繰り返す患者のことをモンスターペイシェントと言います。「待ち時間が長い」「処方してもらった薬が効かない」「診察料が高い」などの怒りの原因が理解できる不満ならまだ納得できますが、ひどい場合、診察の順番を守らない、看護師にセクハラまがいのことをする、診察料を払わない等、著しくモラルの欠けた振る舞いをする患者も中にはいます。
こういった患者は、クリニックに深刻なダメージを与えかねないため、エスカレートする前に慎重に対処することが必要です。
理不尽なクレームとはいえ、クレームの根っこにあるのは感情のもつれであることが多いため、その怒りを刺激することなく解消してあげるような会話を心がけましょう。
例えば、長時間待たされてイライラしている患者に対しては、まず待たせて申し訳ないと言う気持ちを言葉にして伝えてあげてください。他の患者さんも待っているのだからあなたも待つのが当然という姿勢をとっては、火に油を注ぐだけです。その上で患者に急いで診察して欲しい理由を尋ねます。多くの場合は、理由の有無に関わらず自分の都合を聞いてくれたことで納得してくれます。
納得してくれない場合でも、なぜ時間がかかるのかを丁寧に説明し、再来院を提案するなど、相手の立場になって対話することで事態の悪化は防げるでしょう。
クレームや苦情の対応方法について
クリニックへのクレームや苦情があった際にどのように対処すべきかを説明していきます。以下の6つのポイントを意識することが重要です。
クレームには複数人で対応する
複数で対応することにより患者を落ち着かせることができ、更にスタッフの負担を減らすことが出来ます。スタッフが一人でクレームや苦情を受けた際は、一旦その場から離れて一緒に対処してくれるスタッフを呼ぶなど、複数人で対応するためのルールを設けておくのがよいでしょう。
別室に案内する
クレームや苦情が簡単におさまらない時は別室に案内します。そうすることで患者を落ち着かせ、また他の患者さんへの迷惑を避けるようにしましょう。
患者を否定せずに話を聞き、丁寧な説明を繰り返す
理不尽な内容と感じてもまずは否定せずに話を聞き、患者の気持ちを落ち着かせた上で、丁寧な説明を行うことを心掛けましょう。
正確なメモをとっておく
クレームや苦情が正確に伝わっていないと患者が感じると、更にクレームがエスカレートする場合が多くあります。クレームや苦情の内容や、それに対するスタッフからの回答内容は、正確にメモを残すことが必要です。
クレームや苦情の内容は病院内で共有する
クレームや苦情の内容、それに対するスタッフの対応内容はスタッフ間で共有することが必要です。
出来ない約束や特別扱いはしない
例えば、待ち時間が長いとクレームを入れてくる患者に対して特別に診療の順番を早めるなどすると、次回以降も同じ対応を求められることになります。
よくあるクレーム事例はマニュアル作成が重要
スタッフの対応を統一するためにも、クレーム事例にはあらかじめ対応マニュアルを作成しておくと良いでしょう。ここでは事例を紹介していきます。
診療や治療に関するクレーム
・誤診だと言われるケース
・検査について
・手術の内容、結果について
病院のサービスや対応についてのクレーム
・入院患者の食事内容について
・待ち時間について
・予約について
・時間外対応について
・患者の家族からのクレームや苦情
・クレームに対する回答時間について
・謝罪文や文書での回答を求めてくるケース
治療費についてのクレーム
・会計についてのクレーム
・生活保護受給者の患者が薬剤費の支払いを拒むケース
・返金を求めるケース
よくあるクレーム事例としてはこのような内容ですが、もちろん患者によって細かい内容は異なってきます。しかし、各事例に対しての対応基本マニュアル、考え方を決め、マニュアル化することで、スタッフ全員が同じ判断をすることができるようになります。
また、マニュアルをもとにクレームを対処する問題が起きた際は、更にマニュアルを改善していくことで、クリニックをクレーム対処に強い組織にしていくことが可能です。
スタッフ間のトラブルについて
一般的な企業と同じく、クリニックも他人同士だった人々が集まって毎日仕事をする場所です。遅かれ早かれ何らかのスタッフ間トラブルに見舞われることは間違いありません。人間関係のトラブルは起こって当然と考えていた方が良いでしょう。
そして、クリニック内で起こるスタッフ間のトラブルの多くは、院長自身の心掛けや、スタッフへの配慮で防げる可能性が多くあります。
新しいスタッフが定着しないクリニックでは、長く働いているスタッフに新人教育を任せっきりにしていたのかもしれないですし、いじめがあったクリニックでは、院長自身に自覚がなくても不公平と受けとられかねない不用意な態度や発言があったのかもしれません。院長の言動にわずかでも迂闊な点があれば、それが毎日積もりに積もってトラブルの起こりやすい雰囲気をクリニック内に生み出してしまっている可能性が高いのです。
特に開業の準備期間中はスタッフ同士もお互いよく知らず、ちょっとしたことでストレスが溜まりがちです。わずかなことでも見逃さないように気を配ることを心掛けましょう。
スタッフのトラブル防止のための事前策
スタッフ間のトラブルはつきものですが、勤務態度などが悪く、注意してもなかなか改善しないといった問題は早急に対処する必要があります。
そういったスタッフに対して退職を促す際、トラブルが起きないように事前に対処することが重要です。
試用期間の活用
クリニックでは、業務能力・協調性・コミュニケーション能力など、院長が求める人材像が不明確な場合が多くあります。そのため、試用期間中に適格な判断をすることができずに本採用し、後に苦労するケースが少なくありません。
「勤務態度」「能力」「勤務成績」「協調性」「コミュニケーション能力」など、評価する項目と基準を明確に作り、試用期間中にスタッフの資質を見極めましょう。
本人に問題点を自覚させる
まずは問題行為を分析します。指導の際には感情的にならず、何が問題で、それによりクリニックにどんな影響があるのかなど客観的な事実を整理できるようにして、正しく伝えましょう。普段からこまめに指導することで問題点を自覚させ、心の準備をさせておくことが必要です。
問題行為を記録しておく
記録しておくことは、指導する際の客観的な事実の整理にもなりますし、解雇や退職推奨をする段階になった際にも役立ちます。問題行為を繰り返した時は、始末書を取ることも有効でしょう。
伝え方を工夫する
一方的な否定をすることで、反発されトラブルになる可能性も考えられます。
「頑張ってくれたけど・・」「職業意識は高いけど・・」などといった前置きを入れ、スタッフの仕事に対して認めている部分があることを先に示してから本題に入るようにしましょう。
まとめ
トラブルは起こらないことが一番ですが、起きることも想定して事前準備を行うことが必要です。いざという時に慌てないよう十分に対処しましょう。