これまでの医療は、「病気を治す」ということをメインにしてきました。
しかし、近年の動向を見ていると、患者様自身の意識が高くなっているため、「病気にならない体作り」に注目が集まるようになりました。
特に2020年は新型コロナウイルスの感染が拡大しており、私たち一人ひとりの予防意識がこれまで以上に高くなっているのを感じます。
そこで注目を集めているのが、予防医療を中心としたクリニックです。病気を治す医療ではなく、病気ならないための医療を提供しています。
開業を考える医師の中にも予防医療のクリニックに関心がある方は多いのではないでしょうか?
今回は、予防医療のクリニックがどんなところなのか?また、経営は成り立っているのかをご紹介していきます。
自分の健康と向き合う時代
冒頭でもお話したように、私たちの健康に対する意識は年々増加傾向にあります。
タンパク質の摂取を心がける食事生活や、ジムやオンラインを活用して適度な運動を心がけるなど、これまで言われていながらも出来なかったことに取り組み始める人たちが増えています。
こうした新しい時代に合わせて、どのように意識が変わってきたのかをご紹介します。
健康寿命を伸ばす
私たち日本人は長寿大国と言われ、高齢者数が増加傾向にあります。
平均寿命は、男性が80.21歳、女性が86.61.歳と発表されています。
しかし、この平均寿命は、ご存知の通り生存している人の年齢です。
その方々の健康状態が良好であるのかは分かりません。
元気に活動されているのか、寝たきりなのかは、全くわからないのです。
ここで、注目したいのが、健康寿命です。
健康寿命とは「病気にならないまま元気に長生き」することです。
この基準で改めて寿命をみていくと、男性は71.19歳、女性が74.21.歳になります。
国民一人ひとりがどちらを選ぶかと聞かれれば、やはり健康寿命になります。
つまり、今後クリニックに来院される方々は、健康でいるための方法が知りたいと訪ねて来ることも考えられるのです。
1-2.不調にならない体作り
誰しも病気にはなりたくはありません。
少しでも不調を感じた場合には早めに受診したり、休養を取ります。
病気の予兆といわれるものを感じながら、対処しない人たちが病気となっていくのです。
体作りの基本は、生活リズムを整えバランスの良い食事、適度な運動です。
忙しい日常の中でも、時間を見つけ取り組んでいる人たちが増えています。
予防医療のクリニックが増加している
実際に、予防医療クリニックとして、どんなことがされているのかを確認していきましょう。
あくまでも治療がメインではないというところがポイントです。
健診・検査をメインとする
多くの予防医療クリニックでは、予約制となっています。
その理由としては、健診や検査を実施するからです。
一度に多くの患者様を見ることは出来ませんし、プライバシー重視という意味でも他の受診と会わなくてもいいように配慮されています。
この辺りは、通常のクリニックと違いはありません。
病気になるリスクをお伝えする
次に、病気になることでのリスクをお話していきます。
予防医療では、未然に病気を防いだり、病気であっても早期発見ができるように、十分な設備が整えられています。
検査機器としてはCT・MRI・精度の高い画像検査機が用意されています。
健診・検査を通じて、病気の有無を確認していきます。
その結果に基づいて、病気になるリスクはもちろん、ご自身の身体的特徴を伝えていくことになります。
処方ではなく予防対策を提案する
通常のクリニックでは、病気を治すため症状を軽減するため、薬を処方します。
しかし、予防医療クリニックでは、病気ではありませんから、薬が処方されることはありません。
病気にならない体になるための予防対策を提案していきます。
主な予防対策を3つご紹介します。
点滴療法
健康な時でも行える点滴療法を行います。
体が感じている症状の改善または予防、病気に負けない強い体作りを目的としています。
抗酸化力や免疫力を高めることでも効果がある高濃度ビタミンC点滴は、予防対策の点滴療法に実施されます。
サプリメント
普段の生活では不足しがちな栄養素をサプリメントで補充することを目的としています。
栄養素の不足や過剰な摂取なども、一人ひとりの体質が違うように摂取するサプリメントの種類や用量が違います。
こちらもカウンセリング、問診票の情報を確認して決めていきます。
パーソナルトレーニング
適度な運動も理学療法士や健康運動指導士の有資格者が、一人ひとりに合ったメニューを作成していきます。
ほとんどの予防医療クリニックでは、筋トレ・ヨガ・マッサージなどを組み合わせたオリジナルのメニューを作成して、マンツーマンで指導をしていきます。
なかなか一人で出来ないという人に好評です。
チーム医療で支える
予防医療の大きな特長として、「医師と中心とした専門スタッフと連携したチーム医療」を行なっていることです。
それぞれに専門スタッフがいることで、違った視点で見ることができたり、予防対策のアプローチ方法を相談することができます。
忙しい医師をサポートする、また一人ひとりの予防医療のスペシャリストなんだという自覚が出来て、患者様に対して効率の良い対応を実現させることができます。
主な専門スタッフです。
・医師
・看護師
・検査技師
・理学療法士、健康運動指導士
・管理栄養士
予防医療の対象となる疾患
予防医療として全ての疾患が対象なることはありません。
クリニックによって多少の違いはありますが、主に下記の疾患が該当します。
・がん
・動脈硬化
・認知症
・骨粗鬆症
いずれも積極的な予防対策をすることで、病気になりにくい体作りができますし、万が一、病気を発症したとしても軽症で済ませることができるような体作りを目指していきます。
予防医療はクリニックとして経営は成り立つのか?
予防医療クリニックが増加しているとはいえ、経営が成り立たなくては開業することはできません。
ここでは、経営面から見た予防医療クリニックについてご紹介します。
自由診療
大前提として、医療保険には該当しませんので、全てが自由診療となります。
例えば、通常の医療機関では保険適用となる画像検査について目安となる金額はこちらです。
・全身MRI 61,600円(税込)
・胃CT 41,800円(税込)
・大腸CT 71,500円(税込)
・マンモグラフィ(3D) 22,000円(税込)
医療保険と比べると随分と高額になります。
予防医療の価値からみれば、妥当な金額ではありますが、患者様が継続できるのかがクリニックの存続となります。
開業の場所を選ぶ
上記のように金額は決して安いものではありません。
しかし、実際にがんを経験していたり、親族の認知症で介護に疲れ苦労したという人たちにとっては、予防医療の価値は伝わり、継続的に通院をしてくれます。
そうした人たちへのアピールが大切です。
また、予防医療の必要性については、開業する場所を選ぶ必要があります。需要としては都心に近いほどあるようです。
また、東京の場合中国やアラブ系の人たちが受診を希望するケースがあるので、空港からアクセスの良い立地を選ぶのもポイントです。
まとめ
予防医療クリニックについてご紹介しました。
まだ、医療としては認められず、自由診療となることに問題はありますが、これからの時代の流れを考えると、最先端をいく医療であることは間違いありません。
コロナ禍で医療現場の状況も変化しています。保険適用のクリニック一本で乗り切っていけるのかはまだ分かりません。
いずれにしても、クリニックの経営者として生き残っていけるように、情報収集はしていきたいですね。