医師として経験を積み自信がついてくると考えるのは、やはり医院・クリニックの開業ではないでしょうか?
同じ医師であっても一人ひとり、開業を考えるタイミングや年齢に違いはあっても、「失敗したくない」と思う気持ちは一緒です。
また、医者としての功績は輝かしいものであっても、土地や建物などについてはあまり詳しくないのが正直なところ。きっと知りたいことはたくさんありますよね。
今回は、そんな中から一つ「土地選びのポイント」についてご紹介いたします。
実際の土地選びの参考にしてくださいね。
土地選びの前に決めておきたい2つのポイント
ご自身が「開業する」と決意をしたら、最初に考えるのは「どこで開業したらいいのか?」です。
まずは、大切なことはご自身がどんな開業医になりたいのかを明確にすることです。クリニックや病院が近くにできて困る人はいませんが、問題はその場所、地域に需要があるかです。
標榜(ひょうぼう)する診療科目によっての違い
標榜とは、看板等に掲げる診療科のことです。患者様はこの標榜する診療科目を見て、体の不調を診察してくれるクリニックなのかを判断します。
現在、診療科目は、内科・外科など大まかな診療区分でも15科目以上はあります。ここに専門とする診療科目や、救急外来などを合わせると、その数は倍以上になることが考えられます。
実は、この標榜する診療科目からも土地選びのポイントがあります。
それは、患者様が通いやすい診療科目であるかです。
体の不調や気になる症状など、本来は誰の気兼ねなく受診したら良いのですが、中には受診するところを人に見られたくない診療科目もあります。
例えば、産婦人科です。
産婦人科は、出産をするための「産科」と、子宮など女性特有の疾患を診察する「婦人科」、さらには、妊娠を望む女性のための「不妊治療」があります。
どうしても出産がメインのように思われがちな産婦人科ですが、実際には病気や妊娠しにくい女性が同じクリニックの中に混在しています。
また、逆にそれぞれを専門にしてしまえば、悩みや身体の状態が明白となり、デリケートな問題が露出してしまいます。
恥ずべきことではありませんが、やはり、知られたくない・そっとしておいて欲しいのではないでしょうか?
産婦人科以外でも、精神科・肛門外科・美容整形科などでも同様のことが考えられます。
まずは、ご自身の専門とする診療科目が患者様にとって通いやすい診療科目なのかを考えてみましょう。
どのような患者様をメインとするのか
診療科目も多く存在しますが、同じ診療科目であっても専門性や開業する場所によって、診察を希望する患者様は異なってきます。
先述のように「通うことを知られたくない診療科目」であれば、都心にあるビルの中に開業することで大衆に紛れてしまい、患者様の通院のストレスを軽減することができます。
これは、ビジネスマンや仕事帰りに診察を希望する患者様にとっても、通いやすいスタイルとなります。
逆に、内科と小児科を標榜する場合には、家族全員を診察することが可能になるので、住宅地など郊外の団地の中に需要があります。
誰にでも喜ばれるクリニックにすることが望ましいですが、メインとする患者様を決めることで、土地選びもスムーズに話を進めることができます。
クリニック建設のための土地選び3つのポイント
では、実際に土地選びで知っておきたい3つのポイントについてご紹介します。
ここまでに明確したことをイメージしながら、読んでみてください。
周辺の環境
どんなクリニックを開業するとしても、絶対に外せない条件は「周辺の環境」です。
・治安が悪いと言われる地域
・地元の人でも分かりにく場所
・災害時に不安のある地域や場所
このような地域や場所に開業をしても、知ってはいるけど通いにくいとして、患者様が来院される可能性は低くなります。
業者から提示される土地の場所と、周辺の環境は必ず確認しておきましょう。
地理条件
郊外での開業を希望する場合に、現在は平地だが昔は沼地だったというケースも少なくはありません。地盤が緩い場合には、耐震問題もあり災害に備えて足場をしっかり補強することが必要となります。
また、災害で怖いのは地震だけでなく、雨や台風よる水害です。川の氾濫や山から流れる大量の水の映像は、まだ記憶に新しいところです。こうした地理条件は、業者などその土地や地域に詳しい人にしか分かりませんので、聞いておきたいことです。
交通手段
通院のために必要となるのが、交通手段です。
患者様側としては、公共交通機関でも車でも行けることが理想ですが、なかなかそうもいきません。まずは、探している土地から可能な交通手段を確認しておきましょう。
公共交通機関をメインとするポイントは、こちらの3つです。
・最寄りの駅から徒歩圏内
・バスの停留所が近い
・タクシーが呼びやすい
比較的、都心や市街地などでは公共交通機関を利用する患者様が多くなります。アクセスに「徒歩20分」とあると、体調不良だから行きたいのに、無理だと思ってしまいます。そのため最低でも「徒歩10分」が限界だと考えます。
また、最寄り駅から徒歩は厳しいとなった場合には、バスが利用できたり、タクシーが常駐または連絡できる駅であることが望ましいです。
郊外で車をメインとするポイントは、こちらの3つです。
・道幅が広い道路
・主要幹線道路は避ける
・出入りに不安がない場所
郊外で車での通院となれば、やはり女性や老人が運転してくることが考えられます。男性と比べると運転が苦手という人の割合も多くなります。特に、大きな道路を走ること、クリニックへの出入りにはプレッシャーがかかります。こうした不安を少なくすることも土地選びのポイントとなり、通院する患者様は増えます。
生活パターン
クリニックの診察時間は主に、午前・午後の診察で平日がメインとなります。
この診察時間で開業を考えるなら、通院圏内に住む方々の生活パターンに合っているかも、土地選びには欠かせません。
例えば、周辺がオフィス街や工場などが立ち並ぶような地域だった場合には、人はいても平日の昼間に診察に通える人はほとんどいません。勤め終わりの夕方もしくは、交代勤務で朝早い時間のみに混雑するだけとなります。
もし、こうした特殊な生活パターンの地域を選ぶ場合には、診察時間を合わせる形で変更することが必要となります。また、一部の歯科医院のように日曜診療を行うことも得策です。
クリニックも他のサービス業と同じで、どんなに評判の良い医師でも患者様の需要と合わなければ、経営は成り立ちません。
通院圏内の住民性・生活パターンも調査しておくことがベストだと考えます。
今後の発展について
開業する土地や地域の今後の発展も、可能な限り把握しておきましょう。
開業するからには、やはり同じ地で長く続けたいと考えるのが妥当です。そのためには、将来どのように発展していくのか、また変化していくのかも知っておきたいはずです。
例えば、こうしたことが考えられます。
・将来的に主要幹線道路や線路の開通などが予定されている
・大型ショッピングモールの建設が予定されている
・若い世代の人口増加が期待できる
・関連施設の新設が可能である
一番不安なのは、過疎化など人がいなくなってしまうことです。各市町村も企業の誘致など人口増加を考えています。また、地場産業でどれだけの魅力があるかは大きな課題です。
こうした土地や建設予定については、不動産業者や建設会社が把握していることが考えられます。情報として必ず聞いておきたいことですね。
3.まとめ
いかがでしたか?
開業のための土地選びのポイントについてご紹介しました。
30代半ばにして開業を考える医師の場合、マイホームよりも先にクリニックを建設するという方もいるのではないでしょうか?初めてのことで戸惑う場面もあるはずです。
そんな時は、「分からないからお任せします」ではなく、「こんなクリニックを考えている。土地を探して欲しい」と伝えることで、対応も進め方も大きく変わってきます。業者側も明確にしていただくことで提案がしやすくなります。
開業にはまだまだ考えなくてはいけないことがありますが、まずは第一歩として、土地選びのポイントについて理解しておきましょう。