クリニックを開業を目標とする時に「地域医療に貢献する」ことが挙げられます。
しかし、いきなりは、上手くいかないことが多いようです。
特に、開業後には、予期せぬトラブルが次々と発生する可能性をあるようです。
「モンスターペイシェントに悩まされている……」
「スタッフ間の人間関係が悪化して、診療に集中できない……」
「医療訴訟のリスクが心配……」
このような悩みを抱えている医師は多いようです。
そこで今回は、クリニック開業後に起こりうるトラブル事例と、その具体的な対処法についてご紹介します。
トラブルを未然に防ぎ、スムーズなクリニック運営を実現するためのヒントにしてください。
開業前に知っておきたい!クリニックで起こるトラブル事例
クリニックで起こりうるトラブルは、大きく分けて以下の 4 つに分類されます。
- モンスターペイシェント
- クレーム・苦情
- スタッフトラブル
- 医療事故・医療訴訟
それぞれについて、具体的な事例と対処法を見ていきましょう。
1. モンスターペイシェントへの対応
モンスターペイシェントとは、医師や看護師に対して、理不尽な要求や暴言を繰り返す患者様のことです。
近年、その数は増加傾向にあり、クリニックにとって大きな悩みの種となっています。
事例
- 診察時間外に電話をかけてきて、緊急性のない相談をしてくる。
- 夜中に「風邪気味だけど、明日仕事だから薬が欲しい」と電話がかかってくる。
- 自分の希望する薬を処方しないと、怒鳴り散らす。
- インターネットで見た薬を処方するように要求し、断ると「他の病院ではもらえたのに!」と怒鳴る。
- 看護師にセクハラ行為をする。
- 看護師に必要以上に体を触る、性的な言葉を投げかける。
対処法
- 毅然とした態度で対応する。
- 感情的な反応をせず、冷静かつ丁寧な言葉遣いを心がける。
- 要求に応じられない場合は、その理由を丁寧に説明する。
- 医学的な根拠やクリニックのルールに基づいて、分かりやすく説明する。
- 必要があれば、他の医療機関を紹介する。
- 暴言や暴力行為があった場合は、警察に通報する。
- 診療を妨害する行為は、業務妨害罪に該当する可能性がある。
- 患者様だけでなく、スタッフの安全を守ることも重要。
- 録音・録画などの証拠を残す。
- トラブル発生時の状況を客観的に証明できるよう、防犯カメラの設置や IC レコーダーの活用を検討する。
2. クレーム・苦情への対処法
患者様からのクレームや苦情は、クリニックの評判を大きく左右する可能性があります。
適切な対応を心がけ、事態の悪化を防ぎましょう。
事例
- 待ち時間が長すぎるというクレーム
- 予約システムの不備や、急患対応による遅延などが原因として考えられる。
- 診察内容や治療方針に対する不満
- 患者様が納得できるまで、丁寧に説明することが重要。
- セカンドオピニオンを勧めることも有効。
- 院内の設備や清潔さに関する苦情
- 清掃が行き届いていない、空調の効きが悪い、トイレが汚いなど。
対処法
- 患者様の話を丁寧に聞き、共感する姿勢を示す。
- 「おっしゃる通りですね」「ご不快な思いをさせてしまい、申し訳ございません」など、共感の言葉を伝える。
- 事実関係を正確に確認し、記録を残す。
- クレームの内容、対応内容、日時などを記録しておく。
- 後々のトラブル防止に役立つ。
- 必要に応じて、謝罪や改善策を提示する。
- クリニック側に落ち度がある場合は、誠意をもって謝罪する。
- 改善できる点があれば、積極的に改善に取り組む。
3. スタッフ間のトラブル
スタッフ間のトラブルは、クリニックの雰囲気を悪くし、業務効率を低下させる原因となります。
良好な人間関係を築けるよう、日頃からコミュニケーションを大切にすることが重要です。
事例
- 看護師同士の派閥争い
- 人間関係の悪化は、患者様への対応にも悪影響を及ぼす可能性がある。
- 医師とスタッフ間の意見の対立
- 診療方針や業務分担などをめぐって、意見が対立することがある。
- パワハラ・セクハラ問題
- 上司から部下への嫌がらせや、性的な言動は、重大な問題となる。
対処法
- 定期的な面談や研修を通して、相互理解を深める。
- 互いの意見交換や情報共有の場を設ける。
- チームワークを向上させるための研修なども有効。
- 就業規則を整備し、問題行動に対しては厳正に対処する。
- ハラスメント防止の規定などを明確に定める。
- 問題行動があった場合は、厳正に処分する。
- 相談しやすい環境を整え、早期に問題を解決する。
- スタッフが安心して相談できる窓口を設ける。
- 問題を放置すると、事態が悪化する可能性があるため、早期解決が重要。
4. 医療事故・医療訴訟
医療事故は、患者様の人生を大きく変えてしまう可能性があります。
万が一、医療事故が発生した場合には、誠意をもって対応することが大切です。
事例
- 誤診・誤治療による患者の死亡
- 診断ミスや治療ミスによって、患者が死亡してしまうケース
- 手術中のミスによる後遺症
- 手術中の不注意やミスによって、患者に後遺症が残ってしまうケース
- 薬の副作用による健康被害
- 薬の処方ミスや副作用によって、患者の健康が損なわれるケース
対処法
- 患者や家族に状況を説明し、謝罪する。
- 事故の原因や経緯を丁寧に説明し、誠意をもって謝罪する。
- 適切な補償を行う。
- 損害賠償などの法的責任を負うことになる。
- 保険に加入しておくことが重要。
- 再発防止策を徹底する。
- 事故の原因を分析し、再発防止のための対策を講じる。
- 医療安全対策マニュアルの作成や、スタッフへの研修などを実施する。
トラブルを未然に防ぐための対策
トラブルを未然に防ぐためには、以下の 3 つのポイントを意識しましょう。
- 患者対応マニュアルの作成
- スタッフ教育の徹底
- 労務管理のポイント
患者対応マニュアルを作成することで、スタッフ全員が統一された対応をできるようになり、クレームやトラブルを減らすことができます。
例えば、電話対応、受付対応、会計対応、クレーム対応など、さまざまな場面を想定したマニュアルを作成しておきましょう。
また、スタッフ教育を通して、接遇マナーやコミュニケーションスキルを向上させることも重要です。
患者様に気持ちよく診療を受けてもらえるよう、定期的な研修や勉強会などを開催しましょう。
さらに、適切な労務管理を行うことで、スタッフのモチベーションを維持し、トラブルを未然に防ぐことができます。
労働時間管理、休暇制度、給与体系などを整備し、働きやすい環境を作るように心がけましょう。
トラブル発生時の対処法
クリニックでトラブルが発生した場合、迅速かつ適切な対応が求められます。以下に、トラブル発生時の一般的な対処法をまとめます:
- 冷静な状況判断
- 感情的にならず、客観的に状況を把握することが重要です。
- 関係者からの聞き取りを行い、事実関係を正確に把握しましょう。
- 迅速な初期対応
- トラブルの拡大を防ぐため、素早い初期対応を心がけます。
- 患者様やスタッフの安全確保を最優先し、必要に応じて応急措置を講じます。
- 適切なコミュニケーション
- 関係者との丁寧なコミュニケーションを心がけます。
- 患者やその家族に対しては、誠意を持って説明し、必要に応じて謝罪します。
- 記録の作成
- トラブルの内容、経緯、対応状況などを詳細に記録します。
- 後の分析や再発防止、また訴訟などに発展した場合の証拠として重要です。
- 専門家への相談
- 必要に応じて、弁護士やコンサルタントなどの専門家に相談します。
- 特に医療訴訟の可能性がある場合は、早期の法的アドバイスが重要です。
- 再発防止策の検討
- トラブルの原因を分析し、再発防止のための対策を講じます。
- スタッフ間で情報を共有し、必要に応じてマニュアルの改訂や研修を実施します。
- フォローアップ
- トラブル解決後も、関係者への継続的なフォローアップを行います。
- 患者との信頼関係の修復や、スタッフのメンタルケアにも注意を払います。
- 保険会社との連携
- 医療賠償責任保険に加入している場合は、早期に保険会社に連絡します。
- 補償や法的対応について、専門家のアドバイスを受けることができます。
- 透明性の確保
- 深刻なトラブルの場合、必要に応じて情報公開を検討します。
- 隠蔽は事態を悪化させる可能性があるため、適切な情報開示が重要です。
- 組織全体での取り組み
- トラブル対応を個人任せにせず、クリニック全体で取り組む姿勢が重要です。
- 院長のリーダーシップのもと、組織的な対応を心がけましょう。
トラブルの種類や程度によって、具体的な対応は異なりますが、上記の基本的な対処法を押さえておくことで、さまざまな状況に適切に対応できるようになります。日頃からトラブル対応のシミュレーションを行い、スタッフ全員が冷静に対処できるよう準備しておくことが大切です。
まとめ
クリニック開業後には、さまざまなトラブルが発生する可能性があります。
しかし、事前にトラブル事例と対処法を理解しておくことで、いざという時に慌てずに対応できるようになります。
本記事を参考に、トラブルを未然に防ぎ、スムーズなクリニック運営を実現してください。