内科、小児科といったライバルの多い診療科では患者様を取り合う形になりやすく、クリニックで患者様の来院数を確保するのが難しい状況が続いています。
また、ここ数年ではコロナ禍のため、緊急性のある受診を希望される患者様は増えていますが、症状が安定した後も継続して受診されるかと言われれば、なんの保証もありません。
繁忙期と閑散期によって来院数は大きく変わりますし、それに合わせた年間の目安来院数も考えられていると思います。
こうした中で、いかに継続して来院していただくかはクリニックの大きな課題でもあります。
今回は、継続して来院が期待できる管理料をご紹介します。
患者様の来院数を確保することは難しい
クリニックを開業したら、将来は安定した治療ができるというのは、現在の日本医療では非常に難しいです。
過去には、クリニックの数が少なく「クリニックを選ぶ」という発想がありません。
しかし、現代において医師がいないのは僻地や離島など限られた地域だけであり、内科などは地域に複数のクリニックがあるような状態です。こんな状況になれば、これまでのように黙って待つだけでは来院は見込めません。
来院数を確保したいなら「患者様に選ばれるクリニックになること」が重要となります。
状況だけでなく、他にも確保できない理由が存在します。
新設のクリニックに流れるリスク
誰しも新しい物は気になります。それはクリニックでも同じです。
薬のことや、評判などが気になりますから、開院してすぐ患者様が変わってしまうということはありませんが、何かしらのきっかけで新設のクリニックに患者様が流れるリスクは、常にあります。
患者様との相性
先述したように、クリニックを変える時には何かしらの理由があります。
その一つに挙げられるのは「相性」です。
患者様からすると、一番気になるのが医師の接し方です。
「怖い、何も言えないけど通院する」というのは、過去の話です。応対の仕方、治療や薬の相談のしやすさ、様々な角度から医師とクリニックの様子を見ています。
こればかりは患者様の主観なので仕方ないのですが、印象を良くする、接し方を工夫するなど手を打つことはできますので、改善次第で新規の患者様を確保することができます。
症状が改善しない
慢性疾患のように長期的な治療が必要な患者様は、症状が改善しないことに不満を感じています。ここにも様々な原因はありますが、医師や薬のせいにされがちです。
長く薬を飲み続けることは大変です。もしくは自己判断でやめてしまう患者様もいらっしゃいます。
通院がストレスにならないように、継続治療が続くように話を聞いていきましょう。
継続治療はwin-winな関係が作りやすい
クリニック経営において利益を上げていくためには、患者様の来院数は絶対に落としたくないところです。
来院数を確保するための方法としては「継続治療の患者様を増やすこと」です。そのためのポイントとしてはクリニック側、患者様側ともにメリットがある「win-winな関係」を保つことが重要です。
それぞれのメリットをご紹介します。
診察料以外の算定が取れる
患者様の来院数を確保することで診察料、施設基準など一定の医療点数を算定することはできます。しかし、これだけではクリニック経営を安定させることは厳しいです。
そこでクリニックとしては、管理料、指導料、加算といった医療点数が取れるように考えていく必要があります。
・特定疾患の管理料
・慢性疾患の指導料
・検査・処置の加算
管理料と指導料は、一人の患者様に毎月算定することができます。
加算は、検査・処置する患者様に算定することができます。
治療を続けることに期待が持てる
患者様がクリニックに期待することは「病気を治して欲しい」です。
一時的な症状の場合には改善も早く、クリニックも期待に応えやすいです。
しかし、慢性的な疾患や完治ではなく現状維持となる疾患の場合、患者様の「治る」という希望は低くなります。
しかし、医学の進歩は早いですから、そうした疾患の中にも改善の見込める治療があることを説明することで、継続治療を頑張られる患者様もいます。
アレルギー性鼻炎免疫療法治療管理料について
アレルギー性鼻炎免疫療法治療管理料は、2022年4月の診療報酬改定によって新設された管理料です。
こちらの管理料は、先述したような継続治療にて「win-winの関係」を作りやすい治療ができます。
概要
算定の条件、内容としては下記のようになります。
別に厚生労働大臣が定める施設基準を満たす保険医療機関において、入院中の患者以外のアレルギー性鼻炎の患者に対して、アレルゲン免疫療法による治療の必要を認め、治療内容等に係る説明を文書を用いて行い、当該患者の同意を得た上で、アレルゲン免疫療法による計画的な治療管理を行った場合に、月1回に限り算定する。
算定点数は、初回の1月目は280点、2月目以降は25点となります。すでに治療を開始している患者様に対しては1月目を算定することはできないので、ご注意ください。
重要なポイントとしては、患者様への説明と同意です。
・説明のタイミングは、アレルゲン免疫療法を開始する前
・説明することは、治療内容、期待される効果、副作用等について
・口頭ではなく、文書を用いた上で患者に説明し、同意を得ること
さらに、説明内容の要点を診療録に記載することが必要です。
(治療は学会のガイドラインを参考にする)
施設基準
保険医療機関であること以外に、主な施設基準はこちらです。
・保険医療機関(ここではクリニック)においてアレルギーの診療に従事した経験が3年以上有する常勤医師が1名以上配置されていること(非常勤医師の場合は別途条件あり)
・アレルゲン免疫療法に伴う副作用が生じた場合に対応できる整備ができている
・院内の見やすい場所にアレルゲン免疫療法を行なっている旨を掲示するなど患者に対して必要な情報提供がなされている
内科、小児科、耳鼻咽喉科、皮膚科、こちらを標榜しているクリニックなら、治療の実績はあるので、アレルゲン免疫療法の治療ができたら算定することは可能です。
アレルギー性鼻炎免疫療法治療管理料を算定するメリット
アレルギー性鼻炎免疫療法治療管理料を算定することで、どんなメリットがあるのか確認しておきましょう。
定期的に来院される
アレルゲン免疫療法は、医師の指示のもと治療していきます。初回は具体的な説明とともに、投与の仕方などを伝えます。
その後は、経過観察をしながら体調の変化などを確認していけるように計画的に進めます。
このように計画的、かつ継続的な来院が必要となる治療法なので、来院数を確保することができます。
長期的に来院される
アレルゲン免疫療法は、投与を開始してからすぐに改善が見られる治療法ではありません。効果が出るのも人それぞれですし、効果を実感してからも治療を継続する必要があります。
事前に説明をして承諾を得ているのでクレームになることはありませんし、長期的に来院されます。
希望される患者様が多い
アレルギー鼻炎と聞けば多くの人が「花粉症」をイメージします。院内の掲示を見て「自分のことだ」と思うはずです。
毎年の辛い症状と薬の副作用から解放されるならチャレンジしたいと思う患者様は多いはずです。
2月目から算定点数が「28点」と低いですが、希望される患者様が多いと売上は期待できます。
繁忙期のスタッフの負担が減る
クリニックにとって繁忙期は忙しく、残業や休憩時間がなくなってしまうケースもあります。
経営者としては、忙しいことは喜ばしいですが、スタッフにとってはストレスであり、辞める原因にもなります。
アレルギー鼻炎の患者様が全員でなくとも、アレルゲン免疫療法に治療方法を切り替えた場合、スタッフの負担を減らすことは可能です。
アレルギー性鼻炎免疫療法治療管理料を算定するデメリット
メリットばかりではないことを必ず知っておきましょう。
来院をやめてしまう
アレルゲン免疫療法が長期的な治療であること、効果が出るまでに時間がかかること、全て納得のして治療を開始しても挫折する患者様はいらっしゃいます。
こうした場合は、計画的に治療と管理ができないので算定することができません。
新設で認知が低い
新設されたばかりで、知らないクリニックもいらっしゃるはずです。まずは実績はクリアできるはずなので、そのほかの設備を整えていきましょう。
今後の実績次第で来院数増加にもなる
長期的な治療なので、結果につながるのはこれからです。
一人でも多くの患者様に対応することができ、症状が改善したとなれば口コミで広がるのは早いです。
アレルギー性鼻炎で悩む患者様は非常に多いです。
他院からも治療を希望される患者様が来院される可能性もあるので、来院数の増加は期待です。
アレルギー性鼻炎免疫療法治療管理料の算定を検討する価値はあります。