患者さんが抱くクリニックへの不満の中で、常に上位を占めている問題が「長い待ち時間」です。クリニックを経営する側にしてみれば、それだけクリニックが繁盛している証拠と、集患状況に満足してしまいそうですが、待ち時間の不満は、中長期的に患者数の減少につながり、またコストアップ(残業代、人件費など)や、スタッフのストレス(定着率の悪化、ミス誘発)、医師のストレス増にもつながります。
ここでは待ち時間を短縮する方法、また待ち時間が長くても満足度が上がる方法について紹介していきます。
どのくらいの待ち時間でストレスを感じるのか?
そもそもどの程度の時間で待ち時間が長いと感じるのかについてですが、「受付後、診察を受けるまでの待ち時間にストレスを感じ始めるのは何分経った時か」という質問に対して、25%の人が15分経過するとストレスを感じると回答し、30分を超過すると80%以上の人がストレスを感じるというアンケート結果があります。これは、通い慣れているクリニックか初めて受診する病院であるかに関わらずです。
クリニックの規模が大きくなり、診療科を複数抱える医療機関ほど待ち時間が30分以上になることはよくあることですが、診察後、会計や調剤薬局でさらに待ち時間が生じることを考えると、患者さんが受けるストレスは相当なものになるでしょう。
平準化を行うことで混雑の緩和を行う
地域患者のライフスタイルに合わせた診療時間設定に見直す
まずは、自身のクリニックに来院する患者さんのライフスタイルに合わせた診療時間の設定ができているかを改めて見直しましょう。
例えば、ビジネスマンが多く住む地域でクリニックを運営している場合は、平日の診療時間を帰宅時間に合わせて遅めに設定する、週末の診療を行う等が考えられます。また、インフルエンザや冬の風邪など、一時的に患者さんが増える時期がある場合は、その期間だけ診療時間を調整するのも有効です。
ライフスタイルを反映した診療時間設定にすることで、診療時間に合わせた駆け込み診察が減少し、過度な混雑の緩和につながり、さらにはより広い患者層を獲得できる可能性が生まれることとなります。
地域の住民のライフスタイルや、来院された患者さんからのヒアリングから、適切な診療時間の設定を検討しましょう。
ホームページやクリニック内の掲示板等で混雑日時に関する情報を発信する
「この時間は混みます」という混雑状況を患者さんへしっかりと通知しましょう。事前に知らせることにより、他の時間への来院を促します。
また、初診で混雑する曜日や時間に来院してしまった場合、このクリニックは混んでいるなといったイメージを与えてしまうため、院内掲示などのを利用して比較的混雑していない時間などを周知しましょう。若い患者さんが多い場合は、ホームページで混雑状況に関する情報を発信するのも効果的です。
予約システムを導入し、時間帯ごとの患者数を調整する
診療予約システムは、導入すると患者数が減ると誤解されがちですが、全てを予約で回そうとせず、患者数を平準化するためのツールとして上手く活用すればとても有効です。
例えば、予約なしで診られる患者さんのために余裕も常に確保しながら、「いつも混雑している時間帯の予約は30分に1人のみ、空いている時間帯は30分に3人」など、時間予約の上限を設定します。
また、次回受診目安票などを発行し、時間的に余裕のある患者さんをできるだけ空いている日時に誘導するのも平準化を進める重要なポイントとなります。
待っている間の体感時間を短くする
診察までの順番を表示する
院内掲示板や、待ち順表示システム等を利用して、あと何人待っているのか、あと何分くらいで呼ばれるのかを患者さんに伝えましょう。どのくらい待てばわからないストレスを減少させるのに効果的です。
患者さんへの声がけを行う
待っている患者さんへスタッフから順番や待ち時間を伝えることで、「まだですか?」といったクレームを減らしましょう。待っている患者さんの不満が下がり、院内の雰囲気が改善する他、クレーム対応に時間がとられて更に待ち時間が延びるといったことを防げます。
また、不安な時間や一人で待つ時間などを解消する効果も期待できます。
待ち時間を有効活用できる工夫を行う
アメニティーの充実やくつろげる空間をつくるのも、体感待ち時間を短縮する方法です。患者さんの年齢層に合わせて本や雑誌を充実させるのはよく目にする対策の一つです。ウォーターサーバーや自販機の設置も良いでしょう。小さなお子さんを連れて受診する患者さんが多い場合は、キッズスペースがあると喜ばれます。子供用のおもちゃや絵本、おむつ交換用のベッドがあると、待ち時間中にお子さんが不機嫌になっても安心です。
最近では、PCやスマートフォンを無料でWi-Fi接続できる無線LANスポットの提供をしているクリニックもあります。
また、順番を所得してから外出可能な仕組みを取り入れることで、待っている時間に買い物をしたり、用事を済ませたりするなど、患者さんが時間を有効に活用できることを検討しましょう。
このような対策を取り入れることで、患者さんの「やることがない、待っている時間が長く感じる」といったことを軽減し、患者さんの不満や不安を低減することができます。
待ち時間の短縮はスタッフの負担軽減にも
待ち時間対策を行うことは、単に患者満足度を向上するだけでなく、患者さんの問い合わせやクレームの対応を減らし、スタッフの負担を大きく軽減することにつながります。
まとめ
患者数の平準化については、実現すれば増患が期待できるだけでなく、少ないスタッフでも効率よくスムーズな診療を行えるようになり、人件費削減にも役立ちます。
待ち時間の体感時間を短くする対策については、工夫してすぐに取り入れられるものも多くあります。患者さんに不満に向き合い、自院に取り入れられるものを適宜、ぜひ柔軟に取り入れてみましょう。