クリニックの開業で、スタッフ採用面接の重要性は非常に高いものです。誤った人選をしてしまえばクリニックの経営に大きく影響してしまいます。
今回は、そんな人選ミスを防ぐための具体的なポイントをお伝えしていきます。
面接時以外の態度も観察する
採用面接とは言わばオーディションのようなものです。面接者は、初対面の相手に対して自分を良く魅せようという意識が強く働いている状況ですので、その人本来の姿を見極めることはなかなか大変です。
そんな中で有効なのが、面接時以外の態度も観察することです。面接官を前にした質疑応答の時間では、どの面接者も襟を正しているでしょうが、そうでない時間帯などは緊張が緩むものです。受付に先生以外の人物に対応してもらい、そこでの振る舞いをこっそり評価してもらいましょう。
面接の時間に遅れなかったか、言葉遣いは丁寧であったか、きちんとした挨拶ができていたかなど、社会人としての最低限のマナーが身についているかだけでもチェックしておくのが良いでしょう。
見極めるべき面接時のチェックポイント5つ
面接の際に具体的にチェックすべきポイントを5つ紹介します。このうちの一つにでも当てはまるような人は、勤め始めてから何らかの問題を起こす可能性が高い人ですので、採用は見合わせた方が良いでしょう。
1入室から退室までに常識を欠いた点が所々みられる
クリニックにおいて、患者さんへの接遇はとても重要です。引いた椅子を退室時に元に戻さない、面接時にコートを脱がない、香水のにおいがきついなど、基本的なマナーや常識を身につけていない人は、一事が万事ではないですが、傾向として患者に対する接遇に問題が発生する傾向が大きいと言えます。
こういったことは、採用してからの教育ですぐに改善できることではないので、面接時に選別しておく必要があります。
2労働条件や待遇に関する質問が多い
「昇給は具体的にどれくらいなのか」「残業代の計算はどのようになっているのか」「有給取得の制約はあるか」「院内履きは支給されるのか」など、労働条件や待遇等に関する細かな質問をいくつもしてくる求職者は要注意です。
採用後に些細な不満があれば簡単に辞めてしまう可能性も高いですし、このような方は周りのスタッフにも悪い影響を及ぼす可能性も高くなります。
3以前の勤務先の悪口を言う
前職の退職事由の質問に対し、その勤務先の雇用主やスタッフの悪口ばかりを言う人は採用を見合わせた方が良いでしょう。このような人は、当クリニックを辞めた後に、同じようなことを次のクリニックの面接でも繰り返す恐れがあります。
4清潔感がない、格好が華美である
髪がボサボサであったり、目ヤニがついたままであったりと清潔感のない人は論外ですが、それ以外にも化粧がひどく濃かったり、ジャラジャラとアクセサリーを身につけていたり、爪を伸ばして派手なネイルをしているような人も見識を疑います。
このような人が面接に来た場合は、外見のみで医療従事者として不適格であると判断して問題ないでしょう。
5喋りすぎる
面接中に一方的に喋り続け、面接官が全く質問できないような人もいます。このような人は、院長の指示も一方通行でコミュニケーションが取りづらく、また騒々しいので院内の雰囲気も乱しがちです。更に、患者さんの話も聞いてあげないのでクレームとなることも多々あるでしょう。
悪筆でないことは重要
今の時代、ほとんどの求職者がパソコン等で履歴書を作成するため筆跡を知るのは困難ですが、質問票に記載してもらうなどして確認するのが良いでしょう。
クリニックの事務仕事においては字を書くことも多いので、極端に悪筆な人では困ってしまいます。特別うまい必要はありませんが、丁寧な字を書くことは大切です。
また、雑でいい加減な字を書く人は、例外もありますが、総じて全てにおいて適当である傾向があるので、高額医療機器を扱ったり、薬品の管理であったり、カルテの取り扱いにおいて問題が発生する可能性も高くなります。
実践的な質問で仕事に対する姿勢をチェックする
求職者への質問では、仕事に対する意識や姿勢の確認に重点を置くのが良いでしょう。
例えば、「患者さんはクリニックの受付スタッフに何を求めていると思うか」「前職でやりがいを感じたのはどのような時か」など、仕事現場に則した具体的な質問をすることで、求職者の考え方をつかむことができます。
また、過去に転職経験があれば、必ず転職理由や前職で不満に感じたことなど聞くのも人物像の把握に役立ちます。ここで明確な理由がない、誤魔化す、前職の批判をするなどの対応が見られる場合、採用を見合わせる方が良いでしょう。
これらの質問に対する受け答えを見ながら、院長がスタッフに求める「ホスピタリティー」「判断力」「協調性」「向上心」などの能力が十分であるかどうかを確認しましょう。
経験者ばかりの採用は避ける
特に開業時のスタッフ採用において、経験者と未経験者の配置バランスを意識することが重要です。例えば受付が3人必要となるクリニックの場合、3人すべて経験者を採用することが避けた方が良いでしょう。
経験者の中には、以前の勤務先でのやり方や習慣から抜け出せない、抜け出す努力をしない人がいます。このような過去の職場の色が染み付いている人は、薬品の在庫管理や発注方法について、「前のクリニックではこうしてたから」などと院長の指示に従わなかったり、スタッフ間の連携においても「前の職場ではこれは受付の業務ではなかったから」などと、コミュニケーションが取りづらかったりします。
逆に未経験者のみであると、機器の取り扱いミスや釣銭ミス、窓口での連絡ミスなど、初歩的なミスが増える可能性があります。
このように、スタッフ配置は経験者ばかりあるいは未経験者ばかりで固めてしまうことは問題があります。受付を3人雇うのであれば、院長の指示に忠実に従ってくれそうな素直で柔軟性のある経験者を見定めて1人採用し、残りの2人は未経験者を採用する、といったバランスが最適でしょう。
採用から最初の1ヵ月が重要
スタッフがどう働くようになるかは、最初の1ヵ月にかかっているといっても過言ではありません。新人スタッフは最初は「入ったばかりでまだ何もできないから早く仕事を覚えよう」と意欲があり、素直に指示も従います。しかし、1ヵ月も経てば仕事にも慣れ、だんだんと主張が強くなる可能性があります。
最初の1ヵ月でいかにクリニックのルールを教え、守れない場合は厳しく指導するかどうかでその後の働きぶりが変わると言えます。
まとめ
優秀なスタッフを採用するための具体ポイントをお伝えしてきました。
長い付き合いとなる頼りにできるスタッフは慎重に採用し、患者さんが安心して通うことの出来るクリニック運営を行いましょう。