これまでクリニック経営は経営戦略がなくても、患者様が来院されることで安定した報酬が得られていました。
しかし、開業する医師が増え、同じ診療科を標榜するクリニックが近隣にできるような状況であること、さらには2020年の新型コロナウイルスによって、感染を恐る患者様が増えたため減収になったクリニックも多いはずです。
こうした激戦の中、クリニックの安定した経営を行なっていくためには、何かしらの秘策が必要となります。
つまり、「競合との差別化」です。
これは診療科によって異なりますが、診察・治療を同じようにやっていては、新設のクリニックに患者様を取られていくばかりです。
どのように差別化をしていくのか?
これのヒントとなる例として「大腸カメラ」から競合との差別化について考えていきます。
クリニック経営に必要なこと
勤務医として経験を積んで、開業をするわけですから、やはり成功したいと思うのは当然のことです。
だからといって、診察や治療だけをしているわけにもいきません。
医師が開業するということは、経営者としてスタートしたことになります。
クリニックを維持していくために、するべきことは山のようにあります。
今回は、その中でも意識して欲しいという意味も込めて、経営に必要なことをお伝えします。
競合との差別化
競合とは、つまり同じ診療科を標榜するクリニックのことを言います。ライバルです。
大規模病院で技術を磨きながら、ライバルと切磋琢磨してきたと思いますが、開業をしたら経営者としてのライバルになります。
競合との差別化とは、技術を磨くことも大切ですが、なにより経営の目玉となるものが欲しいということです。
冒頭でもお伝えしたように、同じことをやっているだけでは、新しくて設備も綺麗なクリニックへと患者様は流れていきます。
これでは経営は上手くいきません。
競合にはない、何かを考えていくことが重要なのです。
大腸カメラの検査数を増やす理由
今回は、大腸カメラを取り上げます。
内科の検査の一つで、便秘や血便などの原因を探るために実施します。
大腸カメラを題材にしたのには理由があります。
それは「日本での注目度が高い」からです。
注目度が高ければ、自分の体を心配する人も増え、検査を希望して来院数が増えることが期待できるからです。
大腸がんは第1位
実は、日本人がかかりやすいガンの第1位は大腸がんです。
胃がんや肺がんよりも、大腸がんを発症する人の方が圧倒的に多いのです。
食事やストレスなど原因は様々ですが、大腸カメラをすることで「がん発症のリスク」が軽減できるのですから、多くの人に検査を受けてもらいたいものです。
腸は第二の脳
腸内フローラ、腸活、腸内環境を整えるなど、いま健康的な生き方をしたい人たちが注目しているのが、腸なのです。
腸は、第二の脳とも呼ばれるように、脳に情報やエネルギーを送っているともいわれ、その働きが正しくできるように、腸内環境に注目が集まっています。
また、脳だけでなく「腸と心は繋がっている」ともいいます。
こちらは、腸内細菌が影響しているとも言われます。
もっと分かりやすくいえば、便秘でいつもお腹がスッキリしない人は、心もモヤモヤしています。
体もだるいですから行動も遅いです。
普段からこういう状態ですから、お腹がスッキリする時に心がスッキリする感覚も分からないのではないでしょうか。
腸に不調を感じる人は、まずは病気ではないか知りたいはずです。
予防意識が高まっているいまこそ、消化器内科への受診をオススメしたいところです。
大腸カメラをストレスなく実施するポイント
ただ検査数を増やすといっても、簡単なことではありません。
内科、消化器内科を標榜して、「大腸カメラできます」と、表記しているだけでは競合と同じです。
検査を実施する取り組みを具体的にしていきましょう。
日の検査数を決める
診察の待ち時間が長いほど、患者様は苦痛に思います。
検査も同様に待ち時間が長いことで不安が募り、検査後も嫌だったイメージだけが残ってしまいます。
クリニックでは、基本的に医師は1人ですから、検査を行う日を決め、人数を設けることが得策です。
カメラの台数に合わせて、ストレスなく待てる時間で検査できる人数を割り出します。
医師もスタッフも検査に集中でき、段取り良く進めることができるはずです。
個室と専用トイレを用意する
大腸カメラでは、検査当日に腸内を空っぽにするため、前処置として下剤と水を飲む必要があります。
それによって、排便が促されトイレが近くなります。
この状況下になった時、さらには検査のために半日以上を費やしますから、できることなら1人でいたいと誰もが思うはずです。
一畳程度の個室で、ゆったり座りテレビを見たり、本を読んで検査までの時間を過ごします。
また、平日の検査ですから仕事をしたい人もいるはずです。コンセントとWi-Fi接続が可能だと喜ばれます。
トイレも1人で使用できるように設置したら、患者様のペースで使用できるので安心です。
設備を整える
大腸カメラに使用する医療機器は、可能な限り最新で体に負担が少ないものを揃えてください。
痛い、苦しいというのは、いつまでも記憶に残ります。可能な限り軽減できる努力はしておきたいです。
また、カメラの台数ですが、一台では複数の患者様を対応することはできません。
必ず複数台を用意してください。
また、新型コロナウイルスの感染拡大予防もあり、衛生的で感染を防ぐ取り組みは必須です。
今まで以上に徹底して、使用時に不衛生な状態で使用することがないように管理してください。
検査後にゆっくりできる
検査までは、少し急かされるぐらいでも構いませんが、検査後はゆっくりと着替え、休憩できる時間を設けてください。
実施する時間を外来の休み時間に合わせると、待合室を活用することができます。
また、検査時に鎮静剤を希望される患者様もいらっしゃいます。
目が覚めるまでに時間がかかりますから、処置室のベッドが確保することも必要です。
クリニック経営には向上心が必要
検査数を増やすためには、患者様のニーズに応えられること、検査をスムーズに実施することが重要です。
ですから、設備やシステムを整えて終わりではなく、常に改善していくことが必要です。
アンケートの実施
クリニック側が提供していることが、本当に患者様のためになっているのか、改善する点はないのか、患者様にアンケートのご協力をお願いしましょう。
まだ気付いていないことや、さらに良くなるヒントがあるので、その意見を活かしてください。
スタッフとの連携
医師とスタッフの連携が取れてこそ、検査数を増やすことができますし、気持ちよく検査してもらうことができます。
前処置、検査、後処理など、定期的に手順を見直して、医師とスタッフが働きやすい環境になるように努めてください。
意外にも患者様は医師とスタッフの関係を見ています。見られている意識も忘れないでください。
まとめ
今回は、競合との差別化を考えるため、大腸カメラの検査数を増やすことを例にしてご紹介しました。
検査や日帰り手術など、クリニックでできることが増えています。
今はまだ目新しくても、いずれ普通のこととなります。
そのタイミングで考えていては遅いので、少しでも早く生き残りを考え、安定したクリニック経営にしていきましょう。