クリニックを経営するうえで、どうしても外せないことの一つに「診療報酬点数の改定」が挙げられます。
すでに経験された医師の方には、診療報酬改定の大変さがご理解いただけると思いますが、開業後まだ経験の医師の方には、対応や何をするべきなのか、今ひとつ理解できていないこともあるのではないでしょうか?
そして、なんとなくでもクリニックの経営に関わることで、ここを外しては経営が上手くいかないことは理解されているはずです。
そこで今回は、診療報酬改定のこの時期に、クリニック経営者として外せないことをご紹介します。
なんでも経験された医師の方にも、ご自身のクリニックの取り組み方が正しいのか、ご確認ください。
クリニックの収益が決まる診療報酬点数
クリニックでの診察、治療、検査等、全ての医療行為が、クリニックの収益となります。
ほとんどのクリニックでは医療保険が適用される医療行為を行なっており「診療報酬点数」と呼ばれる、決められた点数とルールによってクリニックの報酬が決められます。
クリニック経営者としては、売上を伸ばしたので少しでも点数が高くなるように算定方法を工夫したいところです。そして、医師としては、自分の医療行為が公平な判断の元、評価され報酬として受け取りたいと考えます。
こうした話をすると「お金に汚い医師だ」となじられがちですが、ボランティアでクリニックを経営することはできませんし、必要とする患者様に治療を提供することができません。
きちんと理解して、クリニックの経営を考えていきましょう。
まずは基礎知識、収益を上げる簡単なポイントをご紹介します。
1点=10円で算定する
診察、治療方法など、それぞれに点数が決められています。手術やレントゲン撮影のように医師の技術、高度な医療機器を使用する医療行為については、点数が高額となります。逆に、診察して薬を処方するという比較的軽い医療行為については、低い点数が設定されています。
点数は様々ですが、1点=10円であることは変わりありません。
点数が高い医療行為ほど算定する条件が厳しかったり、評価され加算点数が設定されていたりします。
逆にシンプルな点数ほど、見落としがちであったり、患者様から指摘されやすいので算定に間違いがないか、しっかり確認する必要があります。
どんな医療行為を算定するにも、1点の重みは変わりありませんので、医療事務スタッフに間違いがないように確認を徹底させることも必要です。
算定の方法次第で増益になる
医療行為に対して、決められた点数を算定して報酬を得るというシンプルな方法ですが、決められたルールに合わせて算定をしているだけでは、収益を上げていくのは厳しいです。
だからといって、不正に算定をすることはできません。
ここで考えるべきは、正当な方法で報酬点数(金額)を増やすことです。
考え方としては、こんな流れです。
1.算定する点数を確認する
2.算定する点数に加算点数があるか
3.算定することで、逓減される医療行為はないか
収益を上げるためには、点数に加算が取れるのかは大きなポイントです。治療や処置などご自身のクリニックでの医療行為で加算が取れるなら、取れるように体制を整えましょう。
また、ルールの中には「AとBの処置をした場合、いずれか一つまた逓減する」というルールも存在します。医療行為を行なったのに、報酬が受け取れないのはクリニックにとっても痛手です。
算定ができないないなら、できないなりに点数が確保できるように考えるのも大事なことです。
管理料、指導料の算定は外せない
定期的に診察のために来院される患者様は、通うほどに再診料の点数が下がったり、加算が取れなくなることがあります(医療点数の解釈で確認してください)。
定期的に通院される患者様は、とても大事です。クリニックの口コミをしてくれ初診の患者様を増やすきっかけになります。定期的な検査も実施できるので、高額な点数を算定することができます。
毎月、数ヶ月に一回、来院されるということで、体調の管理や薬の服用指導などを行なっているとなれば、管理料、指導料を算定することができます。
これは、診察室での会話、病名、服用する薬が該当するので、きちんと確認した上で算定してください。
再診での診察でも算定ができれば、毎月の安定した報酬となり増益になります。
診療報酬点数の改定で収益を減らさない
診療報酬点数では、2年に一度大きな改正が行われます。細かい改正は適宜行われます。
2022年は、大きな改正のタイミングとなっています。
この改正でのポイントは、これまでのクリニックの収益を落とさないことです。
本来なら、増益させたいところですが、ここ数年は厳しい改正が続いているので2022年も期待はできません。そして、新型コロナウイルスの影響も考えられるので、厳しいクリニック経営が続くことも見込まれます。
改正全体が厳しいものであっても、ご自身のクリニックで収益が落ちなければ、これまでと同じように経営が続けられます。また、減益が見込まれる場合には、別の方法での算定、その他の方法で売上を伸ばすことを考えてください。
いずれにしてもクリニック経営に関わることなので、疎かにしないように心がけてください。
診療報酬点数の改定で外せないこと
では、実際に診療報酬点数の改定でやってはいけないこと、また、疎かにして欲しくないことをご紹介します。
全ての点数に目を通す
診療報酬点数の改定内容が確定しましたら、一度全体の内容、点数に目を通してください。これまでは算定できなかったことも算定できるようになったり、解釈が変わって治療のあり方が変わり点数が算定できなくなるなど、様々なことが想定されます。
「ここは関係ない」とはせず、一度は確認してください。
自ら積極的に参加する
診療報酬点数の改正は、クリニック経営に関する重要なことです。自らも理解できるように、勉強会や説明会には積極的に参加をしていきましょう。
また、主催する団体によっては質問も受け付けているので、分からないことは早い段階で解決ができるように手配してください。
スタッフに任せない
クリニック経営が長くなってくると、改定をスタッフに任せてしまいがちです。
これは非常に危険です。
スタッフと経営者のあなたとでは、改定の際の心構えが違います。
これまでと同じならそれでいいとスタッフが判断してしまえば、増益のチャンスを逃すことにもなります。
また、解釈を間違えると、ルールを間違えて算定してしまうきっかけにもなるので注意が必要です。
優秀なスタッフになれば、個人でも情報を集めるようになるので、お互いに情報交換をしたり看護師など全員と情報を共有することができます。
孤立しない
改定の内容が正式に決まるのは、施行される4月の1ヶ月前です。3月までヤキモキします。
そんな時、医薬品メーカーや関わる業者との情報交換も大切です。また、勉強会を開催するのもこうした人たちです。
孤立しないように連絡が取れるように十分に関係を築いておきましょう。
決議されるまでの情報を鵜呑みにしない
そして、何より大切なのは国会で決議されるまで、情報を鵜呑みにしないようにしてください。
改定の傾向や情報を知っておくことは、準備に慌てませんが、先走りすぎるのは危険です。発表がギリギリであっても、必ず決議後の内容で動き始めてください。
まとめ
今回は、診療報酬点数の改定で失敗しないように、やってはいけないことをまとめてみました。
この時期、どこの医療機関もピリピリしています。ここからの1ヶ月は慌ただしくなります。そんな時だからこそ、事前に行動の仕方を考え、情報に踊らされないようにしてください。