クリニックにおいて、診察室が一番大切な場所となります。
不調を訴え、治療や薬を希望する患者様と、診察をする医師が向き合う場所です。
ほとんどの診察室は、クリニックで最も重要な場所でありながら、こだわりなくマニュアル通りの診察室になっています。
患者様にとっては、医師と話せる唯一の場所なので、待合室や建物と同じようにこだわって欲しいところです。
今回は、患者様に喜ばれる診察室のポイントをご紹介します。
診察室ってどんなところ?
まずは、診察室がどういう場所なのかを確認しておきましょう。
医師と会える唯一の場所
クリニックで医師に会えるのは診察室だけです。
クリニックが広くても狭くても、またはリハビリなど設備が充実していても、そこに医師がいることはありません。
クリニックが標榜する「診療時間」(午前・午後)の間は、医師は診察室に缶詰状態になります。過去にクリニックへ行った時のことを思い出してみてください。きっと、ほとんどの人が、診察室以外で医師に会った記憶がないはずです。
クリニックへは、医師の診察や治療を目的に来院するのに、医師に会うのは診察室だけなのです。
治療なども行う
医師に、診察室以外で会う可能性があるとすれば、それは処置室です。
処置室では、主に点滴や採血を行なう場所として設けてあります。これらの医療行為は、医師の指示の元、看護師が行います。
そんな中で、看護師ができない医療行為が注射です。人体への注射は医師が行いますから、処置室へ移動してる時は、診察室以外で会う可能性があります。
しかし、クリニックのスペースや患者様の移動が困難な時には、これも診察室で行うことがあります。
注射を診察室で行えば、患者様の診察もスムーズに進めることができます。
患者様からのイメージ
では、患者様は診察室について、どんなイメージを持っているのでしょうか。
患者様目線で考えてみましょう。
話を聞いて欲しい
世間でも言われるように、医師との診察時間は短く限られた時間です。
「診察時間より、待ち時間の方が長かった」という声も耳にします。
患者様は、自分の不調や不安な状況を、医師に聞いてもらいたいと思っています。だから、つい説明が長くなってしまいがちです。
ご自身が待ったように、待っている人がいることも分かっていますが、訴えに対して理解してもらい、適切な治療をしてもらいたいと切実に思っています。
カルテばかり見ている
話を聞いて欲しいと、患者様が思ってしまう原因の一つが、カルテばかりを見ていることです。
紙カルテの場合は書きながら、電子カルテの場合には入力しながら、患者様の方に体が向いてないことで、相槌を打っていても「話を聞いていない」という印象になります。
これは、クリニックの印象にもなりますし、苦情にも挙げられる問題です。
身に覚えがある時には、早急に改善しましょう。
相談したい
患者様の中には、診察の際に医師に相談したいと思っている方がいます。
例えばこんな感じです。
・転院や大規模病院での診察が必要な場合
・治療の選択肢がある場合
・家族の病気のこと
診察の結果、クリニックでの治療が難しい場合や、設備がないため大規模病院での検査や診察が必要な患者様もいらっしゃいます。
そんな時の患者様は、診察に来院する時以上の不安を抱いています。
どの病院が良いのか、治療の内容、入院の有無など、患者様自身は分からないから、分かっている医師に相談したいと考えるのです。もっと言えば、自分で決められないから、決めて欲しいと思う方もいらっしゃるかもしれません。
そして、クリニックならではの相談内容として、家族の病気についての相談を医師にしたいと考えています。
これは、クリニックだからこそのケースです。自宅から近いクリニックですから、家族全員が診察に来院することがあります。そうなれば、家族の気になる症状や、高齢となった両親の介護問題など、医師に相談したいのです。
目指す診察室
どんな診察室だったら、患者様に喜んでもらえる診察室になるのか。こんな、クリニックの診察室にして欲しいと思う、「目指す診察室」をご紹介します。
衛生的で安心できる
まずは、第一に衛生的で安心できる空間であることが大切です。
デスク周りはもちろん、余分な備品を置かずに診察に必要なものだけを用意してください。
また、診察に使用するベットや枕のカバーは、汚れやシワがあるだけで不潔な印象になるので、診察時間中もチェックをしてください。
採血や注射などを行う場合には、少量の鮮血が出ます。床や備品への付着の有無も確認して下さい。
相談がしやすい
相談しやすい環境とは?
こちらに関しては、医師の心がけ次第というところがあります。
・きちんと向き合う
・早口で話さない
・忙しい印象にしない
多くの患者様を待たせていると思うと、医師側としては焦るため、大切なことを簡潔に伝えがちです。医師一人での対応が難しい場合には、ソーシャルワーカーやケアマネージャーなどをスタッフとして迎え、さらに相談室を設けて対応することも検討して下さい。
地域医療において、相談を受けることはよくあるケースです。また、設計を依頼する時にそうしたことも見込んで、個室または多目的スペースを設けるのも、適切だと考えます。
また、診察に専念できることで、心のゆとりもできるので、より患者様と話しやすい診察室になります。
診察しやすい
診察室は、意外と慌ただしい空間でもあります。
・患者様出入り
・スタッフの診察サポート
人のすれ違いや、処置のスペースなどを考慮して、診察室の広さを確保しておきたいです。車イスの移乗や、歩行補助具などを使用している患者様もいますから、動作に支障のない広さを設計時に相談しておきましょう。
また、処置台を入れての処置も考えられますから、診察をサポートするスタッフにも気をつかいたいところです。
デスクで変わる診察室
診察室に欠かせないデスクは、どんなものを選択したら良いのでしょうか。診療科によっても違いがあり、また、サポートデスクを充実させることでも印象が変わります。
診療科別に最適のデスク
あることを基準にして、診療科ごとに適したデスクを選ぶことができます。
それは、「触診をするかどうか」です。
デスクのタイプとしては、「身体所見重視のデスク」と「対話重視のデスク」となります。ほとんどの診療科では、患者様が訴えられる患部に触れたり、聴診器で心臓の音を確認します。
また逆に、触診は避けて患者様と適度な距離感を保ちたい診療科もあります。
身体所見重視のデスク
例えば、内科や整形外科は、触診のある代表的な診療科です。
患部によっては処置台を利用しますが、腕や頭部などを触診することを考えてデスクを選びます。
この場合は、医師と患者様の間に障害物のないデスクが適しています。このデスクは、最も一般的なデスクです。
問題となるのは、医師と患者様との距離感です。近すぎると話しづらかったり、遠いと触診しづらくなります。こちらの解決策としては、キャスター付きの椅子を使用してください。患者様それぞれに、医師が適度な距離感を取れるように、椅子の位置を変えるのです。キャスター付きであれば、医師が動くことに違和感はありませんから、患者様も不快には感じません。
対話重視のデスク
患者様のとの対話をメインとする場合は、一定の距離を保っていることを印象付けることが必要だと考えます。
この演出を可能にするのが、L型のデスクです。
デスクがあるだけでも、距離が保たれる印象にすることができます。
さらに、書類や検査結果の説明、同意書への署名など、患者様との対話や事務作業がしやすくなるという利点もあります。
診察室以外にも、先ほど紹介した相談室にも適したデスクとなります。
まとめ
診察室について、患者様に喜ばれる診察室にするポイントをご紹介しました。
短い時間であっても、クリニックに来院する目的である診察室は、医師やクリニックの印象となります。さらには、診察の内容や待ち時間など、苦情となりやすい空間でもあります。
今回は、デスクを紹介しましたが、デスク周りの収納や、パソコンやモニターの設置などでも患者様に伝える、話を聞くことに力を入れていることをアピールすることができます。
なんでも揃えれば良いという考えでは、あとで後悔することにもなります。
ご自身の診療科に合わせて、患者様との接し方を考慮した診察室にしていきたいですね。