クリニック・医院の開業に向けて、思っている以上に医師がやるべきことがあります。もちろん、業者やコンサルタントなど力となってくれますが、最終的な判断や決定はご自身にかかっています。
今回は、クリニックの建設前から開業までにやるべきこと、決めておくことをご説明します。
今後の開業の参考にしてみてください。
患者様に愛されるクリニックに大切なこと
これまでの勤務医と、開業医とでは同じ医師であっても、大きく違いがあります。
勤務医であれば、組織の一員として「ひたすら患者様を治療する」ことに専念することが重要だとされました。病院の在り方などは別のスタッフに任せておくことができました。
しかし、開業医となればクリニックの医師であると同時に経営者であり、責任者となります。患者様の治療以外に、トイレットペーパーや備品に至るまで予算を考えこ購入することを考えなくてはいけません。最も大事なことは、経営者として利益を上げていくことです。
一度に聞くと頭で整理ができませんので、愛されるクリニックとして必要なことを説明します。
医療の質
これまでの経験や専門性によって、医師としての自信はおありになると思いますが、患者様が医師に求める1つに「医療の質」があります。
開業医となれば、総合病院のように多くの治療方法や医療機器を導入することはできませんが、競合との差別化のために特殊な治療方法や医療機器を導入すること必要です。
患者様は可能であれば、クリニックで病気を見つけてもらい治療して欲しいと考えます。病院での診察は時間がかかり、場合によっては1日仕事になります。
最近では、MRIを導入するクリニックも増えてきました。
上手く機能すれば、集患にも繋がります。
そして、衛生的で安全性が高い医療を続けていきましょう。
患者様の満足度
医療の質も患者様の満足度となりますが、ここでは、医師やスタッフのホスピタリティについてお伝えします。
来院される患者様を気遣い、常に一歩先から歩み寄ることがベストだと考えます。患者様から言われたからやるというスタンスなら、誰にでもできることです。
受付スタッフなら、待合室の様子を伺うことができます。待ち時間が長い時には、気分の悪い患者様がいないか、確認しましょう。
看護師なら、処置前に声をかけるなど、患者様が安心できるように配慮しましょう。
こうしたことの積み重ねが、患者様の満足度を満たしていきます。
社会貢献
いま、開業に求められることの一つに、地域への貢献があります。働き過ぎが問題視される医師ですが、患者様は待ったなしです。
診察時間を過ぎてからも対応ができる体制を考えてみましょう。特に、開業と同時に訪問診療を始める医師は特に必要なことです。
話を聞いたり、地域のイベントに協賛するなど、これまでとは違う形で患者様との接し方が社会貢献となります。
経営
突然、経営者と言われても頭を抱えてしまいますが、まずは利益を上げることを考えましょう。医療は、患者様からの支払いと、診療報酬請求による報酬によって売り上げが計上されます。返済などもあり、最初は上手くいかないこともありますが、少しずつ結果へとつなげていきましょう。
そのために、上記の3つが必要となるのです。
開業のために必要なこと
早速、開業に向けて必要なことを確認していきましょう。
いろんなことを提案され、考え悩むことがあります。勤務医と並行して進めていくと、忙しく時間が取れず、面倒に感じます。
しかし、ここで決して人任せにしないでください。すでに開業している先輩医師の多くが、自分で決めないことを後悔しているケースが多くあります。分からないことは専門家に聞きながら、進めてください。
イメージしているクリニック構想
ご自身の専門性から、治療を必要とする患者様のことを考えてみましょう。求められる場所で開業することで、集患と利益に繋がります。
開業する形態、予想する診療圏内など、まずはご自身が考えるクリニックの構想を固めてください。その上で、専門家と相談して修正していきましょう。
資金調達について
融資を考える場合に必要となるのが、「事業計画書」です。
開業までに必要な費用、収入や費用などから見込める利益などを詳しく書いて作成します。
開業後にも計画通り進められているか、軌道修正が必要なのか、参考にすることができます。丁寧に作成してください。
建物の設計・建築・建設
建物に関しては設計時から、時間をかけてでも業者と話し合いを重ねていきましょう。インテリアや内装などの希望に対して、配置や動線など患者様やスタッフが快適に過ごせるクリニックすることを目指してください。
さらに、着工となり建設が始まってからも予定通りにいかないことがあるので、その都度、業者と相談してください。
定期的に作業報告がされるので、参加してください。
医療機器の選定
医療機器の選定によって、先述したようなクリニックの医療の質が決まります。
・患者様がどんな治療を求めているのか?
・各種医療機器をシミュレーションしてみる。
・導入することで、診療報酬の増加が見込めるか?
こうした観点から医療機器を選んでみましょう。競合との差別化といっても無理をしたり、使用しない医療機器を導入しては、宝の持ち腐れとなります。
集患とスタッフ募集について
建物の完了が近づき、医療機器の導入が始まると、新しい役目が待っています。
それが、集患とスタッフ募集の広告です。
ますは、集患についてです。
実は、クリニックは、宣伝・広告ができるのは開院前の、この時期だけとなります。短い期間を最大限に活かして、開院日を迎えたいのです。
いつ始めるのかがポイントですが、ほとんどの患者様には、かかりつけ医がいます。突然、新しいクリニックに変更しようとは思いません。少し悩む時間があることを考慮して広告を始めましょう。
スタッフ募集にも少し余裕を持たせましょう。
導入する医療機器や実際の診察に関するシミュレーションができる期間が必要です。診療報酬を計算するパソコンは、メーカーが変われば知識があっても、作業を覚えるには時間がかかります。
看護師も勝手が違いますし、医療機器の操作確認もしておきたいです。
この宣伝や広告を軽んじる医師が多くいますが、患者様が定着するには時間がかかります。患者様が来院されなければ、スタッフも研修したことを実践すことができません。
チラシの枚数やホームページの作成、内覧会の日程など、丁寧に準備してください。
開業に向けての書類について
ここまでくると、あとは開業に向けての書類作成と担当官庁に届け出をします。
保健所に必要な届
・診療所の開設届
・診療用X線装置備付届
・麻薬管理者・施用者免許申請書
厚生局に必要な届
・保険医療機関指定申請書
この他にも、各種公費・労災の申請があります。診療科目や診療内容によって異なるので、確認して忘れずに申請書を提出してください。
まとめ
いかがですが、思っていた通りでしたか?ほとんどの方が予想以上だったのではないでしょうか?
勤務医として激務の中から抜け出し、開業するまでのひと時に旅行をしたり、リラックスしたいと考える医師の方もいることでしょう。
もちろん休んでください。
十分間に合うように進めて行ければ問題ありません。
ご自身で関わることで、後悔のない開業を迎えることができます。
ぜひ、がんばってください。