2021年、年末に起こった大阪のクリニックでの放火事件から1か月が経ちました。
医師、通院患者様など、多くの方々が犠牲となりました。
ご冥福をお祈りします。
そんな事件を耳にすると、同じクリニック経営者としては、他人事には思えないのではないでしょうか?
今回の火災の原因は、患者様の放火によるものです。この日本でも医療機関での火災はあり、多くが放火によるものだと報告もあります。
減少傾向にあるとはいわれますが「0」になることは難しいという見方もあります。
なぜ、クリニックで火災が起きるのか?そして放火の場所としてどんな所が狙われているのか?追求していきます。
火災事件の概要
2021年12月17日、大阪府北区曽根崎新地のビルの4階にある心療内科のクリニックで火災が起こりました。
現場近くにいた人たちの証言によると、規模は大きいとは思わなかったが「すごい煙が上がっていた」といいます。
この火災では、クリニックの医師、スタッフ、通院患者様の25名が犠牲となりました。そして、火災の原因は放火であること、放火したのは通院患者様であることが加えて発表され、放火殺人事件として昼以降のニュースで大きく取り上げられることとなりました。
火災のポイント
とても痛ましい事件です。医療機関に勤める医療従事者にとっては、決して他人事には思えない事件です。
容疑者とされる人物は、自転車の荷台に白い箱のようなものを括り付けてクリニックに向かう様子がカメラに写っています。
今回は、ガソリンのようなものが撒かれ火をつけたとされていますが、容疑者本人も火の中に飛び込んだとされ重篤な状態のため、証言を取ることができていません(その後、一酸化炭素中毒が原因で死亡)。
また、クリニックはビルの4階にありました。4階から逃げるにはクリニックの受付を出て、エレベータ、非常階段を利用するしかない構造でしたから、受付付近で火災が発生したとなれば、出入り口はありませんから逃げ道がないことで多くの人が犠牲になったとみられます。
医療機関での火災の原因は放火
今回の火災はクリニックでしたが、日本における医療機関では火災事故が過去にも何度か発生しています。対象となるのは、病院が多いようですが火災の原因については「放火」が最も多いとされています。
大阪のクリニック放火殺人事件では、患者様による放火が原因でした。容疑者が死亡しているので、明確な理由は分かっていません。医師と患者様との間にトラブルはなかったという報道がされているので、関係者や親族にとっては複雑な思い出はないでしょうか。
放火される原因
では、なぜ医療機関への放火が発生するのでしょうか?私たちは日頃、体調不良や怪我によって診察をしてもらい、適切な処置や薬を処方してもらい、快復して日常生活が送れるようになります。感謝することはあっても、放火するという発想は通常ではありえないことです。
考えられる放火の原因を探ってみました。
逆恨み
クリニック、病院に行けば治療により体調が戻ります。そこに感謝の気持ちが生まれるというのはごく自然な流れですが、一部の患者様にはそうではないケースもあります。
治療、医師・スタッフの対応に対して、個人的に逆恨みしてしまう患者様がいます。これは、非常にデリケートな問題ですから、どちらが悪いと言い切れなかったり、長く揉めたり最悪な場合は裁判へと持ち込まれることもあります。
こうした状況下にあった場合、正しい判断ができるだけの心の余裕は失われます。したがって、放火してクリニック、病院側に迷惑をかけるような行為に出てしまうことがあります。
病気を苦にして
病気や怪我は、必ず治るというものではありません。診察に来たタイミング、病気の内容によっては一生付き合うことになったり、体の一部を失うということもあります。
きちんと元のように戻る、生活に戻れるという保障がないことは分かっていながらも、やり場のない思いをクリニック、病院側にぶつけてしまうケースもあります。
上記のような逆恨みの原因となることもあります。
気持ちに寄り添うことはできても、治すことも理解することも難しいケースでは突発的な衝動が行動となってしまうことがあります。
放火されやすい院内の場所
過去の医療機関での放火では、やはり狙われやすい場所というのがあるようです。
計画的な放火であれば、場所を確認するだけなく人が少ない時間、診療している日時の確認など、細部まで確認をされるから炎が上がるまで気づかないということも考えられます。
実際に狙われやすい院内の場所をご紹介します。
トイレ
トイレは、常に人がいるということはありません。外来の終わりがけ、または来院数が少ない日時を事前に確認しておくことで、簡単に火をつけることができます。
病院のように規模が大きくなれば、日中ほとんど人が来ないようなトイレは数多く存在します。クリニックのトイレは一つでも、人の少ない時間を狙うのは事前に調べておけば可能になります。
病室
クリニックで病室があるところは少ないですが、処置室や検査のための更衣室や待機室なども同様な対象になります。
どれも必要な場所ですが、必ずしも人がいたり防犯対策をされているかといえばそうではありません。
こうした場所に近寄ったとしても、すぐに気づくことはできないので放火する場所として狙われやすくなります。
放火されないポイント
放火されやすい場所をなくすということはできませんが、事前に放火されないように改善することはできます。
死角を作らない
開業してから年月が経つと、荷物が増えていきます。
今でこそ、電子カルテが主流となっていますが、紙カルテの場合は保存期間が決まっているので、古くなったからと破棄することはできません。
また、備品も増えて置き場所に困ってしまい廊下や非常口の前などに荷物を積んでしまうということがあります。
こうした場合「荷物が積んである場所」として認識しているので、人がいるとか火をつけられるという発想は、通常ありません。つまり放火をするには最良の場所であることがいえます。
本来なら、備品は倉庫に入れて管理しなくてはいけません。都合よく置いて死角を作らないようにしてください。
整理整頓
死角を作らないために、院内を整理整頓してください。決められた保存期間があるものは仕方のないことですが、それ以外に破棄できるもの、在庫を抱えすぎないなど、院内を見える化するために整理整頓をしてください。
また、待合室でも患者様の様子がみられるように、植物の位置を変えたり、パンフレットなど紙資料が乱雑になっていないか確認をして、入れ替えや数を減らすようにしてみましょう。
患者様との関係性
基本的に付かず離れず、一部の患者様と仲良くすることなく平等に接することが大切です。
どのタイミングで嫉妬されたり、妬まれたりするかは分かりません。せめてスタッフとして思いやりを持って接するようにしましょう。
また、医療機関で怖いのは、誰でも出入りできることです。クリニックであっても家族の送迎や付き添いと言ってしまえば、誰も不思議に思いません。
誰がどれくらい滞在しているのか、不審に思うときはスタッフに伝えたり、医師に伝えるようにしてみんな警戒しておきましょう。
まとめ
実際に起きた放火殺人事件を元に、放火の原因や対策を考えてみました。
誰がいつ対象になるかは分かりません。そして、自分のクリニックで起きた場合は、どのように対処するのか、患者様を安全に避難させる方法など、避難訓練を通して確認しておくことも必要になります。
こうした事件が少しでも減るように、医療従事者も火災についてしっかり理解しておきましょう。