クリニック経営を成功させるためには、経営資源の「人」「お金」「情報」「もの」に関する知識が非常に重要となります。
しかし重要だと分かっていても、日々の診療の合間に知識を詰め込むことは難しいですよね。
そこで今回はクリニック経営で起こりやすい、経営資源に関連する失敗例と対策をご紹介します。
実際に起きた失敗例を知っておくことは、今後の「失敗しない」クリニック経営のヒントとして役立ちます。
また失敗例に合わせて、対策の一例をご紹介しています。失敗例と具体的な対策例を知っておくことで、忙しい診療の合間にも意識して対策を講じやすくなります。
特に、現在クリニックの開業を検討されている方は、今後のクリニック開業時の参考にされてみて下さい。
またすでに開業されている方も、ご自身のクリニック経営状況に照らし合わせながら、当てはまる失敗例がないか参考にされてみて下さい。
「人」に関する失敗例
勤務医時代とは異なり、一緒に働くスタッフの求人や選考も自身でおこなう必要があります。
最も重要な経営資源といっても過言ではない「スタッフ」、対策を怠るとクリニックの経営に影響を及ぼします。
スタッフに関する失敗として、次の例が挙げられます。
- 応募が集まらない
- すぐに辞めてしまう
- スタッフ間の人間関係がギスギスしている
- 接遇マナーが悪く、集患に影響が出ている
クリニックは、スタッフの応募が集まらなければ経営できません。また職場の人間関係が悪い場合には、優秀なスタッフがすぐに辞めてしまったり、接遇マナーが悪くなったりと、集患に影響を及ぼす可能性があります。
逆にしっかりと対策を講じておくことで、集患につなげることも可能です。それではこれらの失敗を防ぐためには、どうしたら良いのでしょうか。
募集要項や求人媒体に気を付ける
近年では、様々な求人媒体が存在します。そのため、以前のような職業安定所や新聞の折り込みチラシだけでなく、インターネット上で求人情報をチェックする人が増えています。
また求人媒体の中でも、広告掲載費用が無料のものや、医療従事者に特化した媒体まで様々なタイプが用意されています。
コストや必要度に応じて、求人媒体を選定するようにしましょう。
また募集要項には、具体的にクリニックの特色を書いたり、採用後の求職者へのメリットをアピールしたりするなど、求職者にとって魅力的な内容になるように工夫してみましょう。
スタッフと会話する機会を設ける
せっかく優秀なスタッフを採用しても、すぐに辞めてしまっては意味がありません。スタッフの中には、普段の会話や指示によって不満や不安を抱えている人も存在します。
風通しの良い職場づくりのためには、月1回程度スタッフと個別に話をする機会を設けてみましょう。
仕事中の会話だけでは気が付かなかった、スタッフの要望や不満、心配事などに触れられます。また必要に応じて、外部でのマナーやモチベーション研修などを取り入れてみることも検討してみましょう。
「お金」に関する失敗例
「お金」に関する失敗例としては、キャッシュフロー管理不足が挙げられます。キャッシュフローが管理できていない状況とは、収入によって必要経費(支出)をカバーできていないことを意味します。
主な原因としては、次の点が挙げられます。
- 経営の知識が不足している
- 開業準備をコンサルタント任せにしている
- 事業計画が曖昧なまま、物件選びや広告費、医療機器選定に費用を掛けすぎている
原因として、まず経営の知識が不足している点が考えられます。しかし、原因はそれだけではありません。
大きな原因は、事業計画が曖昧なままコンサルタントへ開業準備を一任してしまうことにあります。
その結果、物件や広告、そのほか開業準備にかかる不必要な資金が増加してしまう失敗例が多く存在します。
綿密な事業計画を作成する
良いキャッシュフローを実現するためには、綿密に作成された事業計画が必要となります。
そのため、依頼しているコンサルタントから事業計画に関するアドバイスを貰えるのか、という点もコンサルタント選定のひとつの基準になります。
また周囲から言われるがまま、「とにかく良い物件を抑えなくてはいけない」、「広告にお金を投じなくてはいけない」、など高額な物件選びから開業準備を進めたり、莫大な広告費や医療機器に資金を投じたりすることにも注意が必要です。
開業準備は、開業コンセプトや事業計画を明確にした上でスタートしましょう。
なお綿密に作成された事業計画は、金融機関からの融資を受ける際にも良い印象を与えます。
「情報」に関する失敗例
主な「情報」に関する失敗例としては、立地選定に関する失敗が挙げられます。
- 立地選定を怠った結果、次に挙げるような失敗例につながります。
- 実は競合が多いエリアだった
- 人口が減少していくばかりの地域で、思っていたよりも集患が見込めない
- 思っていたよりも遠方からの集患比率が高く、駐車場整備が追い付かない
- 物件を賃料の安さのみで決定したことにより、思ったように集患できない
これらの問題は集患に直結し、クリニック経営に大きなダメージを与えかねません。
正確な診療圏調査を実施する
立地選定の失敗を防ぐためには、慎重に診療圏調査を行う必要があります。
診療圏調査の結果は、使用データや調査エリア設定によって大きく異なります。業者に依頼する場合には任せきりにするのではなく、自身でも使用データやエリア設定を細かく確認するようにしましょう。
また予めエリア特性を知っておくことや、自身の足でエリアの情報を集めることも非常に有用です。自身が提供したい医療が適するエリアは、どういった特性があるのか、把握しておきましょう。
休日を利用して、開業エリアの最寄り駅や公共施設、近隣のクリニックや薬局、病診連携施設へのアクセスを確認しておくこともエリアを知る上で有用です。
「もの」に関する失敗例
最後に「もの」に関する失敗例と対策をご紹介します。クリニック経営に関わる「もの」には、物件や医療機器、駐車場まで様々あります。
物件については上記で触れたので、ここからは医療機器選定の失敗例についてご紹介します。
医療機器に関する失敗として、次の例が挙げられます。
- 高額な医療機器を設置したが、使用頻度が少なかった
- A社で購入したが、B社の方が性能や価格のバランスが良かった
- 想定していたよりも集患できず、医療機器の使用頻度が少ない
例え大病院に引けを取らないような高額な医療機器を設置しても、使用頻度が少なければ意味がありません。その後の費用が増すばかりです。
事業計画に沿った医療機器選び
「お金」に関する失敗例でも、綿密な事業計画の重要性をご紹介しました。医療機器選定でも、事業計画や経営コンセプト、ビジネスモデルを明確にしておくことが必要となります。
「自身がどのような医療を提供していきたいのか」、「どういう患者が多いのか」、明確にした上で医療機器を選定しましょう。
また購入やレンタルの際には、1社だけでなく複数社で比較検討します。医療機器の性能や価格が適正なものなのか、費用対効果が高い機器を選定するために有用です。
まとめ
いかがでしたか?今回はクリニック経営で起こりやすい、経営資源に関連する失敗例と対策をご紹介しました。
クリニック経営で必要な知識は様々ありますが、失敗例を知っておくことで対策を講じやすくなります。
今後の「失敗しない」クリニック経営をするための参考にされてみて下さい。