クリニック経営が軌道に乗ってくると、経営者として次の一手を考えます。
分院の開院、事業の拡大、介護保険への参入など様々な取り組み方があります。
分院は美容外科、皮膚科を中心に集患が望めるエリアにて展開されています。
事業の拡大については、検査、手術など新しい医療機器を導入する動きが見られます。こちらは、内科、眼科などに多いケースです。
介護保険への参入については、サービスの形態によって規模が変わりますが、土地や建物、専門スタッフを雇用することで可能となります。こちらは、内科、整形外科に多いケースです。
実際、どれもできることですがリスクはあります。
そこで今回は、分院の開院をする場合に知っておいてほしいことをご紹介します。
分院を考える前に確認してほしいこと
思いつきで分院を考えることはありませんが、やはりいくつか確認しておくことがあります。ポイントは医師としてではなく、経営者としてクリニック経営を考えることです。
分院開院のための資金準備
本院が利益を出せるようになっても、分院を開院すれば支出が増えることを忘れないでください。
土地代(家賃代)、光熱費、初期投資費用などが負担となります。
支出が増えるといっても、開業したばかりの分院の売上からでは支払いは困難になることも考えられます。ここは開業時のことを思い出してください。
万が一、分院が思うようにいかない時は、本院で補填ができるほどの資金が必要となります。今まで利益としていた分を支出へと回せば、たちまち赤字経営となります。
現在の本院の利益や支払いについて、本院、分院が経営できるだけの金閣があるのかを確認してください。
また、銀行からの融資が受けられるのなら、きちんとした返済計画を考えておきましょう。分院開院すぐには売上も立ちませんから、数ヶ月先までを考慮して返済計画を立ててください。
クリニックの強みを知る
クリニックの経営を軌道に乗せるまで、様々な苦労があったはずです。そんな中でも患者様が選んで来院してくれる理由があったはずです。
・医師、スタッフの対応が優しい
・治療が的確
・家から近い
患者様それぞれに理由があるかと思います。
今後、本院となるクリニックの強みを知っておくことで、分院のコンセプトを決めることができます。
コンセプトの参考にはなりますが、本院と同じやり方が通用するとは限りません。地域性や建物など、状況が変わることで変える必要があります。
まずは、本院の強み、環境や患者様が求めることを分析していきましょう。
分院をどこに建てるのか?
こうした分析をした上で重要となるのが、分院をどこに建設するのかです。
土地や店舗が先に決まっているなら、それに合わせたコンセプトを考えていくことができます。
しかし、土地、店舗いずれにしてもこれから探すという場合には、この二点を考えてほしいです。
・本院と適度に離れている
・薬など配送にも便利な場所である
本院と分院で患者様を取り合うようなことはしたくありません。学校区が違う、駅一つ離れているなど、適度に離れてた場所に建設を考えましょう。
クリニックにとって、薬や検査(血液検査)は非常に重要です。配送ルートから大きく外れると後回しになり、クリニックに届くまでに時間がかかるようになります。
失敗しない分院を開院させるポイント
失敗はないといいますが、クリニック経営において分院を開院して利益が見込めないのは、リスクが大きいです。
少しでも失敗しない方法を知っておく必要があります。
知ることでリスクに備えることができますから、知ると知らないでは大きな違いになります。
資金の運用について決めておく
事前に確認しておくことでもお伝えしましたが、やはり資金の使い方と返済、本院からの補填できる金額などを明確にしておきましょう。
きちんと決めておくことのメリットは、無駄なお金を使わなくなります。
例えば、建物や内装の打ち合わせをした場合、予算に合わせて建材や材料を決めていきます。良いものを見れば誰でも欲が出ます。妥協するのか無理をするのかで悩みがちです。
ここでの悩みは避けたいことです。お金の流れが分かっていれば、無理はできないはずです。
そして、銀行への融資を受けるために事業計画が必要となります。すでに経験があれば大変さが分かるはずです。売上と返済について、ちょっとがんばればできるというところで決めていくと上手くいきます。
本院・分院統一したマニュアルを作る
経営者としてお金やいろんなことを決めていきますが、人材育成には時間をかけたいことです。本院から分院へ異動になったり、兼任したりなどスタッフ同士が行き来することはあります。
その際に、スタッフが迷わないように働き方を統一しておく必要があります。
言った言わない、「◯◯では、このやり方です」と、小さなトラブルは避けたいことです。
建物や機材に違いがあっても、ルールだけは変わりません。こうした部分を最初にしっかり決めておくことが、スタッフ間でのトラブルを減らす賢いやり方です。
マニュアルを作成するにはスタッフの意見を取り入れながら、そして双方を知る人、人材育成コンサルなどを交えて、正式なものを作成してスタッフに周知してもらうことが大事です。
分院を任せたら口を出さない
クリニックの経営理念や、経営者としての思いを話し、理解された医師を分院の院長として迎え入れるはずです。
ですから、分院を開院したら口を出さないようにしてください。相手の医師も分院の院長という立場を分かって来てますし、なにより志が同じはずです。間違ったことをしないですし、困ったことがあれば相談をしてくるはずです(ここで勝手に決める医師なら、そもそも雇用してはいけません)。
夢と希望も持っています。まずは、暖かく見守りましょう。
もちろん定期的に面談をして状況を確認する必要はあります。伝えたいことがあるなら、この時に話す方がスムーズに進められます。
そして、最も大事なことは本院の院長がトップでいること、決定権を持っているということです。共同経営者とも違うことを示しておくことも分院を成功させるポイントです。
医療法人化しておくこと
そして、分院の開院に向けて申請書類などが必要になります。
こうした書類は個人のクリニックと医療法人のクリニックとでは違いがあります。
クリニックで個人の場合には、開設者は経営者、管理者は院長と分けることができず、分院を開設することができないのです。
また、院長の変更時の手続きなどが医療法人だと不要になるケースがあります。手続きは大変ですから、医療法人化しておきましょう。
医療法人化するためには、理事の選出や法人登記や知事の建設許可、開設届けなどが必要になります。分院の開院に向けて早めに準備を始めることをオススメします。
まとめ
分院を開院することをテーマに、必要となること、知っておくべきことをご紹介しました。
本院の成功が弾みとなって、分院を考えることはよくあるケースです。または子供が継ぐことで分院を開設するケースもあります。
医師として開業したら、一度は自分の力を試してみたいところです。分院で経験を積むことも悪くありませんから、希望される医師も多いはずです。
複数のクリニック経営をすることで、経営者として経験値は上がりますからグループ内でも個性を出していくことができます。
患者様へのメリットだけでなく、働く医師とスタッフにとってもメリットのあるクリニックにしていきたいですね。