クリニックと病院の違いと聞かれれば、建物の大きさや規模、働くスタッフの数などを挙げられることがほんとんどです。
実は、きちんと調べてみると決められた基準があり、それをクリアすることでクリニックなのか、病院なのか、その違いは明確に分かるようになっています。
今回は、これから開業を考える医師に向けて、にクリニックと病院の違いが分かる基準、さらにクリニックの集客に繋がるポイントをご紹介します。
クリニックとなる基準
医師自身の専門となる診療科をメインとした医療機関が「クリニック」です。ここではさらに、クリニック定義する基準を3つご紹介します。
法人化の必要はない
クリニック、病院など医療機関の看板をよく見ると「医療法人○○会」と表記されているのを見たことありませんか?
これは、医療法に定められている「医療、介護の開設を目的とした法人」のことを指しています。
クリニックを開設する時に必ず取得しなければいけないのかと言えば、そうではありません。開設後、数年してから法人化する医師の方もいれば、法人化しないクリニックも存在します。
したがって、クリニックを開業する時に法人化は必要ありません。
医療法人化のメリット
クリニックにおいて医療法人にする必要はありませんが、メリットはあります。
医療法では、医療法人について2つのことを明記しています。
・医療法人は運営の透明性
・地域に良質な医療を提供
つまり、医療法人を表記することでクリニックの評価が上がることが考えられます。
クリニック経営を安定させることに一役買ってくれることも期待できます。
入院は19床以下
クリニックと病院の一番大きな違いは「入院」です。あえて「入院できるかの有無」としなかったのは「クリニックでも入院できる」からです。
入院できるベッド数、つまり「一度にどれだけの患者様に対して、入院治療できるのか」という基準でクリニックと病院に分けられることができます。
クリニックとしてできる入院治療は、19床(ベッド数)以下が基準です。これより多くなる場合は、病院として開設することになります。
医師の人数と当直の有無
医師の数、看護師の数というのは、医療・介護問わず施設基準に大きく影響してきます。クリニックとして開設する場合には「医師1名」が必要となります。
最近では、開業時のリスクを減らすために複数名の医師で開業するケースもありますが、基本的には医師1名が常勤していれば問題ありません。
クリニックには診療時間外、深夜の急患対応義務はありませんので、医師が当直する必要はありません。
ただし、入院治療を行なっているクリニックに関しては当直医が必要となりるので、医師を確保する必要があります。
病院となる基準
複数の診療科を標榜して、一度に多くの患者様の診察、治療ができるのが病院です。
基準について詳しくみていきましょう。
法人化は必須
クリニックの基準でもお伝えしたように、「医療法人○○会」という法人化についてですが、病院の場合は「医療法人化は必須」です。開業に合わせて法人の申請が必要となります。
入院は20床以上
一度に入院治療ができるベッド数(病床数)は、病院の場合は20床以上となります。
また、病院の中でもベッド数によって細分化されています。
・小病院・・・20〜99床
・中病院・・・100〜499床
・大病院・・・500床以上
治療内容や患者様の状態に合わせても入院施設の内容は異なります。
医師の人数と当直の有無
開業に必要な医師の人数は3名以上です。クリニックのようにたった一人で診察、治療、入院治療を行うことは不可能です。きちんとした体制を取らなくては病院として機能していきません。
そして、時間外の急患対応、入院治療の待機などがあるので当直の義務はあります。
医師の働き方が問題視されるいま、勤務時間が超過しないように医師の人数確保などを徹底することが重要です。
病院とは違うクリニックにおける医師の働き方
病院とクリニックとでは医療施設としての基準が違うので、医師の働き方も異なります。
クリニック開業後は、2つの顔を持つことになる医師の働き方をご紹介します。
診察と治療
診察と治療は、医師として一番大切な仕事は、病院でもクリニックでも変わりはありません。
病院の場合、外来診察は当番制ですから週に1、2回といったところですが、クリニックでは毎日の診察になります。診察時間も午前・午後の二回ですから、病院勤務時より長く診察のために時間が取られることが分かります。
では、治療については逆のことが言えます。病院では治療方針を決め経過観察をしていきます。外科系であれば手術も何件もこなすことがあります。クリニックでは、専門的な治療ができるだけの設備が整っていませんから、考えられる治療としては診察して簡単にできる処置、また内視鏡カメラの検査というところでしょうか。治療にかかる時間は圧倒的に短くなります。
他にもクリニックの医師として行う仕事には、往診・予防接種・健康診断などこれまでとは違う業務があるのも特徴です。
経営者として
自身で開業するので、自ずとクリニック経営者となります。
集患、収益、今後の目標など、経営者として考えなくてはいけないです。
会計士との打ち合わせ、またスタッフとのコミュニケーションも大切です。
こうした経営のことは複雑で難しいところもありますが、助けてくれる業者やスタッフを集め育成することも経営者として必要なことです。
クリニックへの集患ポイント
病院との違い、クリニックでの働き方が分かりました。
それらを踏まえて、ここでは集客ポイントをご紹介します。
急患への対応方法
最近では、クリニックと住まいを別にする医師が増えましたので、夜間や休日に来られても診察と治療ができません。
対応方法として「診察してください」と言っているわけではなく、困ってしまう時間帯や症状に合わせた、患者様本人あるいは家族が対応できるようなアドバイスをしてあげてください。
・自宅でできること
・症状に合わせた対処法
・緊急性が疑われる症状
こうしたアドバイス一つで、医師としてのあなたに、そしてクリニックへの信頼度は上がり、集患へと繋がります。
予防医療と健康診断
これまでの患者様は「病気を疑う症状を感じたらクリニックへ行く」という考え方の人がほとんどでした。
しかし、少しずつ意識が変わり始め「病気にならない体作り」に意識が向いています。この意識は新型コロナウイルスの流行によって、さらに加速していることも伺えます。
そうした世の中で、従来のスタイルでクリニック経営を続けていても、少しずつ来院数が減少してしまうことも考えられます。
予防医療、健康診断のいずれも医療保険の適用外ですが、アドバイスを求められたら提案すること、自分の体の状態が分かる健康診断を進めてみるなど、こうした行動が将来の集患へとなります。
他院への紹介状
セカンドオピニオンと言われるように「別の医師の話を聞いてみたい」と希望される患者様はいます。なかなか浸透していかないのには「先生が怒るかも、申し訳ないな」という、日本人独特の気遣いがあるからだと言われています。
ご自身の診断を疑われるようで、気分はよくないかもしれませんが、患者様の気持ちを尊重する意味で、セカンドオピニオンを希望されるときには快く他院への紹介状を書いてあげましょう。
決して来院が減少するというわけではありません。「きちんと話ができる、聞いてくれる医師」として評価が上がるはずです。
まとめ
今回は、クリニックと病院の違いについて、そしてクリニックでできる集患のポイントをご紹介しました。
患者様は症状を重く考える時ほど、病院へと行きがちです。しかし、それでは本当に治療を必要とする患者様を待たせてしまう、こんな時こそクリニックの力を借りたいと国も病院も考えています。
十分にクリニックで対応できること、そして将来の不安を減らす意味も込め、クリニックの良さをアピールして行きたいですね。