クリニックを開業するとき、標榜科目を何にするかを考えなくてはいけません。
科目はそのクリニックがどんな診察を行うのかを示すとても重要なものです。
標榜は内科や産婦人科など幅広く診ることをアピールすることもあれば専門分野に特化する場合もあります。
科目は広くした方が集患に繋がりそうで良さそうですが、専門分野に特化することで患者さんが集まるというケースもあります。
また、他にも専門性を高くすることで色々なメリットが得られることもあります。
標榜を決めるとき、幅広い分野で見る場合だけでなく、専門分野に特化した場合のメリットや注意点などについて詳しく知っていれば後悔しない決断ができるでしょう。
そこで今回はクリニックを専門分野に特化させるメリットや専門性を生かすためのポイントをまとめました。
何でも診るか、専門分野に絞るか悩んでいる方は必見です。
他の病院との差別化になる。
クリニックを専門分野に特化させるメリット5つ
診療科目は出来るだけ広くした方が患者さんが集まりそうですが、専門分野に特化すれば色々なメリットが得られます。
そこでまず初めにクリニックの専門性を高くするメリットをご紹介しましょう。
1.他の病院との差別化ができる
専門分野に特化することで得られるメリットは何といっても他の病院との差別化になることです。
特に内科系は競合が多く、患者さんの取り合いになることもありますが、ある科目に絞って診療していればその病気を治療してもらいたい人が集まるので集患に繋がります。
クリニックは開業するとしばらくは患者が集まらず収入も少ないことが多いですが、専門性が高いと開業してからすぐでも集患が出来て収入が安定することもあり得ます。
2.患者が安心して来院できる
専門性を高くするメリットは患者さんにもあります。
患者さんは初めての病院に行くときに「納得のいく治療をしてもらえるだろうか」、「自分の病気に詳しい先生だろうか」と少なからず不安を抱えます。
しかし、専門分野に特化していれば患者さんが抱えている病気に詳しく、治療経験がある可能性も高いので、安心して来院してもらえるのです。
病院は自分の体のことを診てもらう大事な場所だからこそ安心感は大きなアピールポイントになります。
3.診療技術を高められる
専門分野に特化すると同じ病気の治療を何度も行うことになります。
するとその分野での治療経験が増え、診療技術も高くなります。
診療が上手くなれば当然クリニックの評判が高くなり、さらに患者さんが増えるでしょう。
また、その分野のスペシャリストとして有名になり、自身のブランディングに繋がるというメリットもあります。
4.初期投資が少なくて済む
診療科目が幅広いとそれだけ色々な治療をしなければいけないので様々な設備が必要になります。
しかし、治療の種類が限られているとその分設備の数も少なくなるので初期投資が少なくて済みます。
クリニックの開業にはかなりのお金がかかるので初期投資を抑えられるのは開業医にとっては魅力的なポイントですよね。
5.近くの病院から紹介してもらえる
クリニックを経営する際には周りの病院との関わりが重要になります。
同じ診療科目の場合には当然競合になりますが、専門分野に特化していて競合がなければもし他の病院に行った患者さんがあなたの病院で扱っている症状で悩んでいたら、紹介してもらえることがあります。
科目を絞ることは他の病院との関係を円滑にするという効果もあるのです。
事前調査が必要。
クリニックを専門分野に特化させるときの注意点2つ
このように診療科目を絞ると様々なメリットが得られますが、一方で注意しなければならない点もいくつかあります。
続いてクリニックを専門分野に特化させるときの注意点をご紹介しましょう。
1.開業前に地域の調査が必要
専門分野を絞って開業するなら事前に開業する地域について調査することが欠かせません。例えば既にあなたのクリニックと同じ科目を掲げる病院が近くにあり、そこが人気であれば開業しても集患は難しくなるでしょう。
また、周りに競合がなくてもあなたの専門分野で悩んでいる患者さんがいないところに開業すれば当然患者さんは来ません。
そこで開業するときには地域の病院の立地、予想される患者数、人々の行動パターンなどを調べ、開業しても経営できそうかどうかを確認しましょう。
2.先端医療にこだわると初期投資が大きくなる
専門分野に特化して開業する際はその分野の先端医療を取り入れることもアピールの1つになります。
ただし、先端医療には高い医療機器が必要なこともあり、先端医療を求めすぎてしまうと設備費がかかり、初期投資が大きくなることも考えられます。
他にはないような医療を用意すればクリニックの魅力になりますが、それによってどれくらいの患者さんを集められそうか、どれくらいの資金を調達できそうかといったこととのバランスを見ながら導入するかを検討するべきです。
強みを前面に押し出す。
専門性を生かした開業を成功させるためのポイント4つ
メリットも注意しなければいけない面も両方ある診療科目を絞っての開業。
それを成功させるためにはいくつか押さえるべきポイントがあります。
そこで専門性を生かした開業を成功させるためのポイントを4つご紹介しましょう。
1.自分の強みと弱みを書き出す
クリニックを何の専門にするかを決めるに当たって、医者としての強みと弱みを一度書き出しましょう。
強みは開業するクリニックを成功させるための鍵になるもので、強みからどういった専門にすれば良いのかが見えてくるでしょう。
一方で弱みはその分野は扱わないようにするという専門を決める上での基準の1つになります。
ただし、弱みを補えばもっと良い治療が出来るようになるという場合は他の病院でその分野の経験を積んだりすることで弱みを強みに変えて、クリニックの質を上げても良いでしょう。
強みと弱みを知るだけで色々な発見があるので標榜科目を決めるときにはぜひ書き出してみましょう。
2.やることとやらないことを決める
強みと弱みを書き出して何を専門にすべきかが見えてきたらクリニックでやることとやらないことを決めましょう。
科目を決めるだけでなく、この線引きをはっきりさせることで何の設備を導入するべきか、看護師は何人雇用すれば良いかといったことが見えてきます。
すると事業計画書をより細かく作成できたり、初期投資を押さえたりといったことにも繋がります。
3.コンテンツの特化について考える
専門科目が絞れたらコンテンツの特化についても考えましょう。
コンテンツとは内科なら内視鏡や胃カメラ、歯科医ならインプラントといった何をウリにするのかということです。
こうした具体的なコンテンツを明示すると患者さんから見てどんな病院なのかが分かりやすくなり、その治療をして欲しい人には高い確率で選ばれるようになります。
もちろん、コンテンツを掲げるからといってこの治療だけを行うわけではありませんが、一部の方法に言及することで患者さんの目に留まりやすくなります。
4.専門を前面に押し出す
何かに特化するクリニックを成功させるためにはやはり専門を前面に押し出すことが欠かせません。特に医院の名前にはこだわるべきでしょう。
単に「〇〇内科」といったシンプルな名前ではなく「〇〇内視鏡内科」、「〇〇小児歯科」など専門性が一目で分かるようにすると集患効果があります。
クリニックの専門を的確に表した名前を考えましょう。
看板でアピールする。
専門分野に特化したクリニックのPR方法2つ
開業後に患者を集めるためにはクリニックのPRをすることが欠かせません。
そこで専門分野に特化したクリニックのPR方法を2つご紹介しましょう。
1.看板で専門をアピールする
専門分野に特化したクリニックでは専門性を浸透させるのに看板が大きな役割を果たします。
看板を通して病院があることに気がつきますし、どんな診療科目を扱っているのかも一目で分かります。
看板には病院の名前はもちろん、診療科目や治療内容の例を書いておくと集患効果が出やすいでしょう。
2.勤務している病院の近くに開業する
勤務医として働いていた病院の近くで開業することを「お膝元開業」と言います。
近くのエリアで開業すればあなたの専門を知っている勤務医時代の患者さんがそのままクリニックに流れるので専門を生かせて、さらに集患にも困らないという嬉しいメリットがあります。
近くで開業すると元の職場に良い顔をされないのではと心配になるかもしれませんが、大きな病院に通うほどではない症状の患者を診ることによって元の職場にとってはより重症で専門性を必要とする患者さんを受け入れられるというメリットが生まれます。
まとめ
クリニックを開業するとき、診療科目は幅広く診るかそれとも専門に特化するのかという2つの選択肢があります。
どちらも一長一短あり、開業で成功するためには自分や地域に合う方を選ぶことが重要になります。
今回ご紹介した専門分野に特化することのメリットや注意点を把握した上で後悔しない選択をしましょう。