長年、クリニックを続けてくると思うことは、建物の建て替えについてです。
建物が古くなることでリスクとなってくること、患者様への印象など、これまでの当たり前だった状況に少しずつ変化が現れることがあります。
そんな現状を変えるために、建て替えるタイミングや理由はどんな時がいいのでしょうか?
今回は、「診療をしながら、敷地内で建て替えをするなら」というパターンの一例をご紹介します。
建て替えを考える6つの理由
開業時の勢いとは違い、長年続けてきた実績もありますし、地域でも必要とされるベテラン医師ということで地位も確立されているはずです。
まずは、どんな時にクリニックを建て替えようと考えるのか、理由を考えてみましょう。
建物の老朽化
クリニックを開業したら、何か特別な理由がない限り、同じ土地・建物で診察を続けていきます。短く見積もっても20年から30年程度は続けられるはずです。
それだけの年月が経つと、建物は老朽化してくることが考えられます。
・外壁が汚れてくる
・内装が古くなる
・ひび割れがある
・欠損している
古いものを否定するわけではありませんが、新しいクリニックと比べられると、魅力がかけてしまうことがあります。
最新の医療機器を導入したい
建物と同様に老朽化してくるのは、医療機器です。
診察や治療のために必要となる医療機器は、最新のものほど性能が良く、病気の早期発見にも役立ちます。
しかし、大きな医療機器を導入するとなれば、
・建物が重さに耐えられない
・入り口が狭く入らない
・設置する場所がない
柱や梁が邪魔となることも考えられます。建物を理由に医療機器の導入を断念するしなければいけません。
設備を交換したい
電気の配線、水まわり、エアコンなど設備も老朽化してくるので、交換したいところです。古いものは、光熱費のコストが上がるとも言われます。
こちらも、開業当時と状況が変わっている可能性があるため、すぐに交換というわけにはいきません。
災害に備えたい
年々、地震や大雨による被害が多発しています。山や海の近くだから被害が大きいというわけではありません。
ご存知の通り、日本では建築基準法に基づいて建物が建設されます。しかし、この建築基準法には、2つのポイントがあります。
1つ目は、昭和56年を境に、「旧耐震基準」と「新耐震基準」に分かれます。日本では、地震大国のため、地震に強い建物を理想としています。近年、大規模な地震があり建物が倒壊する映像をご覧になったと思いますが、倒壊した建物のほとんどが旧耐震基準の建物だったと言われています。
2つ目は、大規模な地震があるごとに耐震をメインに改正が繰り返されていることです。開業時には耐震など基準をクリアしていても、現行の法律ではクリアできていないケースがあります。
建築基準法は、改正をして基準を変更していますが、既存の建物に対して、建て直しや補強、改修をするまでの強制力はありません。
こうした災害に対する不安は解消しておきたいはずです。
子供に継いでもらいたい
医師の子供が、医師になっているケースは多くあります。
都心や大病院で経験を積んだ後に、事業を継承してほしいと考えるのは、親心です。
子供が開業するのに、初期費用が抑えられますし、集客に悩む心配もありません。
患者様は離れ
古い建物、医療機器は、どうしても新しいクリニックより劣る印象があります。
実際、レントゲンやCTなどの解像度の差は比較にならないほどです。
先生の人柄や技術だけでは、患者様を確保できずに患者様が離れていくことが考えられます。
建て替える3つの不安
様々なケースによって、クリニックの建て替えを考える時がやってきます。
しかし、建て替えようと思っても、すぐに行動に移せない不安があるものです。
休診する不安
クリニックを建て替えるとなると、どうしても休診をしなくてはいけません。
患者様には、一時的に別のクリニックに通院してもらい、処方してもらう必要があります。そのために紹介状を作成します。
別のクリニックに行かれた患者様が再開院の時に、戻ってきてくれる保証もありません。
リスクは大きいと考えます。
お金の借り入れ
クリニックの建て替えとなれば、住宅より規模は大きく特殊な部分が多くあります。
そのため、費用も高額となるため、資金調達や銀行に借り入れをお願いしなくてはいけません。
若い時と違い、年齢を重ねてからの借り入れが負担に感じる方もいるはずです。
ここで、思いとどまる医師の方も多いはずです。
子供と診療科が異なる
子供にクリニックを継いでもらいたいと考えても、それぞれ専門とする診療科が違うことがあります。
その場合、標榜する診療科を増やすことはできますが、クリニックを一から作り直すことになります。
借り入れ、医療機器、引退などを考えると、折り合いをつけるのに、苦労されるケースもあります。
敷地内で建て替えをする一例
敷地内で建て替えをする流れをご紹介します。これは一例ですので、参考にしてください。
1.外来診療に必要な部分を残して、解体をする。この時、敷地内に自宅がある時も同時に解体します。
2.解体した部分に、新クリニックまたは、仮設となるクリニックを建設します。仮設にする場合は、検査等、治療に差し支えのないように、取り壊しと建設のスケジュールを調整する必要があります。
3.先に解体した部分に新クリニックを建設する場合、建物の完了後に搬入を始めます。備品などの移動が完了したら、新しくスタートできます。
4.仮設として場合には、外来診療の部分を解体して、建設をするのでもうしばらく時間はかかりますが、建設完了を待って仮設や新医療機器の搬入を始めます。
どうしても患者様のいない状態で搬入が必要な時には、一時的に休診としますがそれ以外は、通常通りに診察、治療をすることができます。
敷地内で建て替えをする3つのメリット
敷地内で建て替えをすることのメリットをご紹介します。
最小限の休診期間
施工スケジュールに合わせて、仮設などを使いながら診療を続けることができます。
新クリニックが完成して、搬入や引っ越し作業に数日休診する程度で終わらせることができます。
患者様の確保
敷地内で建て替えをするので、患者様も別のクリニックに通院する必要がありません。仮設などで多少の不便はかけますが、一緒に新しいクリニックが完成していく様子が見られるので、患者様としても期待がもてるはずです。
行政への手続きが簡単
新規や移転など、クリニックが場所を変えて新たにスタートさせるのは、意外と大変です。開業時のように行政に申請を出し、許可を得る必要もあります。
しかし、敷地内で建て替える場合には、衛生面などこれまで築いてきた「衛生的で安全なクリニック」という実績で手続きも簡単に終えることができます。
また、事業継承の手続きも進めていけば、全てのことが一度に完了しますので、安心して新しいクリニックでスタートさせることができます。
まとめ
敷地内でクリニックを建て替えるメリットについてご紹介しました。
開業する頃とは、年齢も立場も経験も違いますから、考えることやリスクも違ってきます。それでも、子供を若い医師として迎えることや、綺麗で新しいクリニックできるのことは、患者様にとってもは、とても嬉しいことでもあります。
新しいスタートにも希望がもてるのは、喜ばしいことですね。