2023年に入っても、新型コロナウイルス感染症の流行は続いています。確立された治療法はありませんが、ワクチン以外にも治療薬の開発が進んでおり承認を待つ声も聞かれます。
しかし、実際の現場では未来の話より、今の対応が問われています。厳しい状況の改善を望んでいます。
今回は、大忙しの発熱外来の対応を紹介します。
これまでにもご紹介していますが、他院での対応を知ることで効率よく外来を行うヒントが隠れていることもあります。
効率よく、検査、治療を必要する患者様が診察できるように対応を考えてみましょう。
まだまだ続く新型コロナウイルス感染症
流行に波はあるものの、慢性的に流行は続いています。
新型コロナウイルス感染症は、ウイルスが常に変化を繰り返しているため、効果のある治療や薬を明確にすることができません。
分類は下がる
そんな中でも、初期の頃から考えると、日常生活での制限は緩和され、クリニックなど医療機関の報告業務なども少なくなりました。
日本でも新型コロナウイルス症の分類が2→5へと下げられます。すでにご存知だと思いますが、この違いは「感染発症件数を報告する義務の有無」です。
分類を下げるのは、2023年の春ごろを予定しています。報告の義務はなくとも、現場には発熱外来の受診を希望される患者様が減るわけではありません。
インフルエンザの同時流行
冬に新型コロナウイルス感染症の流行が怖いのは、患者様が急激に増えることです。
これまでは消毒、うがい、手洗いが徹底されており、インフルエンザに感染する人はほとんどいませんでしたが、今年は制限が緩和されたためシーズンに入る前から感染者が増えることが予想されていました。
予想通り、今シーズンはインフルエンザ感染者が増えています。
すでに慌ただしさが考えられていたため、新型コロナウイルス感染症とインフルエンザの検査が同時にできる検査キットがあります。
内科は連日の混雑状況
冬の内科は繁忙期です。
昨年末から連日の混雑状況が続いています。限られた環境で感染度が高い二つの疾患の対応に追われています。
そんな中で、問題視されていることが3つあります。
他症状、疾患の患者様への配慮
どこのクリニックでも、発熱、感染が疑われる人は、院内に入ることはお断りをしています。それでも、他症状、他疾患で来院される患者様は不安になるものです。
限られた環境、人数での対応は大変ですが、安心できる方法を考えて実施することが伝わるような配慮も必要です。
駐車場問題
クリニックの駐車場が満車になり、通院が困難な患者様が増えています。
感染が疑われる患者様は、来院→診察→検査→会計→薬(調剤薬局) 、この一連の流れをクリニックの駐車場、車の中で行います。
待機の時間を含めると、一台の車が停車しているのは約1時間ほどです。駐車場を広く確保していても、定期的に通院される患者様にも迷惑をかけてしまいます。
検査センターのご案内
混雑する中でもクリニックで対応ができるように、受診をお断りするケースがあります。
こちらは、感染が疑われる患者様の中には、無症状の方もいらっしゃいます。全ての患者様に対応したいところですが、クリニックがひっ迫しないための対応ともいえます。
現在、検査ができる機関は様々なところにあります。内容はそれぞれですが、場合によってはクリニックで待つより早く終わることもあります。
無症状や比較的症状が軽症だと思われる方には、状況を説明して協力をお願いすることも必要です。
問題は、対応の仕方です。丁寧な対応を心がけてトラブルにならないように注意してください。
他院で見られる発熱外来の対応策
内科での混雑する中で挙げられる問題点について、他院はどのような対応をしているのかをご紹介します。
診察時間を決める
感染を拡大させない、駐車場問題から、発熱外来の診察時間を通常の診察時間とは別に設けています。
・午前、午後のそれぞれに1時間〜2時間
・昼間の休診時間に対応
・朝の診察前
時間帯はそれぞれですが、クリニックで安心して対応できるような時間を決めています。
担当者を決める
院内に感染が疑われる患者様が入ることはなくても「対応する看護師からウイルスが持ち込まれるのでは?」と考える患者様もいます。
そこでの対処法は、感染を疑われる患者様と接するスタッフを限定することです。実際、対応に追われるので、院内の業務と併用することは大変です。
患者様への配慮でありながら、限られた人数でスタッフの負担を軽減する方法でもあります。
来院前の電話連絡のお願い
感染が疑われる患者様には、来院前に電話連絡をしていただくように徹底しています。
告知方法としては、ホームページ、院内掲示です。
電話で症状や状況を確認して、当院での対応、検査が必要なのかを判断します。
来院から受診の流れを説明して、ご理解いただける患者様に来院していただきます。
来院後の待機時間に不安にならないように受診の流れを伝えるクリニックもあります。
対象者を明確にしておく
軽症、重症などクリニックで対応できる患者様を明確にしています。
これは、一人一人に必要な受診、検査をしていただくためです。
先述では軽症へ検査センターへの検査を促しましたが、重症患者様も同様です。クリニックでの対応は難しいです。対応できる医療機関への連絡や受診をお願いするケースも考えられます。
発熱外来の受診方法と同様に、対応している患者様を明確にしてお知らせをしています。対応方法はホームページと院内掲示です。
受け入れ人数を決める
対象者を明確にするように、受け入れできる人数も決めています。
事前に人数を明確にして、電話対応で予約を取ります。こうすることで、クリニックでも十分な対応ができます。
仮に1時間の診察時間として、10名を受け入れできるとしているクリニックもあります。クリニックの規模、スタッフの人数によっても変わるので、ご自身のクリニックで可能な人数を決めましょう。
窓口でも確認をする
患者様の意識にも変化が出てきています。これまでなら、マスクの着用、出入り口での消毒などは徹底して行われてきましたが、海外のマスクをしない日常を見て日本だけ過剰になっていると、予防の意識が薄れつつあります。
そのため、新型コロナウイルス感染症が疑われる症状であっても、無意識のままクリニックへ来院されることがあります。
・熱はありませんか?
・倦怠感はありませんか?
・咳は出ませんか?
こうした、本来なら風邪を疑うような症状を患者様に尋ねるようにしましょう。具体的な症状を言われると、自分のこととして意識が変わります。
窓口でも感染拡大を防ぐことはできるので、対応してください。
無理な対応は避ける
どんなに感染が拡大されても、クリニックでの対応の限界を知っておきましょう。
1人でも多くの患者様を救いたいのが、医師としての使命ですが無理は長続きしません。
スタッフにも休息は必要です。
まとめ
今回は、他院での発熱外来での対応についてご紹介しました。
どこでも問題となるのは、感染を拡大させない配慮と駐車場です。通常の診察と並行して行うところは、スタッフへの休息を考えてのこと。また、休診時間を活用しているところは、一人一人の労働時間をシフト制にしていたりと、どこのクリニックでも限られた環境、人数で行なっていますから、限界を知っておくことも必要です。
お互いに対応に良い方法があれば、情報を共有することも考えてみましょう。