医療保険制度についてまとめました。
日本では昭和三十六年に国民皆保険制度が制定され、日本国民は等しく医療を保険にて受け ることができるようになりました。国民医療費は人口の高齢化と共にすさまじい伸びが続いて います。
平成二十六年度の七十五歳以上の高齢者一人当たり医療費は約九十三万円でした(厚 生労働省調べ)。平成二十八年九月では国民の二人に一人(四十五・四パーセント)が五十歳以 上、二〇二三年には三人に一人が六十五歳以上という人口構成になります。
高齢化により 医薬品の使用量もどんどん上がり、年間八兆円を超えています。ジェネリック医薬品服用を国 が推進しているのは医療費の抑制をしないと医療の財源がパンクしてしまうという事情があります。
しかし、この国民皆保険制度があるおかげで国民全員が安心して医療機関に受診できる環境が整備されているのです。個人のお金がないと医療も受けられないという国は世界にはいくつもあります。それは先進国といわれる国でも例外ではありません。
医療費の財源は、社会保険の場合は給与天引き、国保の場合は世帯別に決められた保険料を個人が納付しています。年金の仕組みも概ね同じですが、日本人の助け合いの心があるからこそこの制度が維持されています。
医療保険加入の方は治療費の三割を個人が病院、薬局で支払い、残りの七割は給与等で徴収された資金で医療機関・調剤薬局に支払われる仕組みになっています。ただし、所得が少なくて国の制度で助成してあげないと医療を受けられない方や、高額な医療が必要な方には、負担率を低下したり、負担金の限度額を設ける等の制度も用意されています。医療事務の方は、この保険の仕組みと公費の仕組みを詳しく学習する必要があります。
子ども医療制度、障がい者医療制度、片親医療制度、難病医療制度、公害医療制度、感染症、予防医療制度、被爆者医療制度、戦障病者医療制度……等、多岐にわたる助成制度があることを知っておいてください。
なお、現在(平成二十八年)は社会保険加入者の本人は三割負担ですが、国の財政や国の方針により患者様の負担率は変化しています。国民皆保険制度発足時は六十歳以上の方は負担金〇円、社会保険加入者本人は一割負担、等という時代もありました。
昔はなかった言葉ですが、前期高齢者医療保険、後期高齢者医療保険制度等というものも追加 制度となっています。国の財政とは関係なく、地方自治体独自の医療補助制度もあります。子ども医療制度がその顕著な例です。財政の良い地方自治体では、十五歳まで医療費が無料。中には、十八歳の外来診療まで無料という自治体もあります。逆に財政が破たんした自治体では、三歳までしか無料にならないという所もあります。医療保険制度は不変ではなく、常に変化しています。
十年前に習った医療事務の講座で得た知識は全く中身が変わっていることもあります。常に変化を追い続けなくてはなりません。
出典:医療事務を目指す方へ勉強する前に読んでほしい本
参考文献
生労働省 統計情報・白書〉各種統計調査結果〉統計要覧〉厚生統計要覧(平成二十八 年度)〉第四編 老人保健福祉 第一章 老人保健・医療 第四–一図 一人当たり後 期高齢者医療費の状況,都道府県別
http://www.mhlw.go.jp/toukei/youran/data27k/4-1.pdf