近年、インターネットの普及に伴い、クリニックの経営環境は多様化が進んでいます。
開業医が自院を安定して経営していく上で、把握すべきものの一つが、マーケティング戦略です。
医療マーケティングを上手に活用することで、より多くの患者に医療サービスを提供できる環境を構築できます。
今回は、クリニックの運営を万全かつ安定させたいとお考えの方が知っておくべきことをご紹介します。
医療マーケティングについて
この章では医療マーケティングの意味や注意点をご紹介します。
医療マーケティング
マーケティングとは、商品やサービスを効率的に売るための仕組みを作ることを意味します。
医療業界におけるこの総称を医療マーケティングと言い、様々な特徴を持った他院との競争激化などを背景に重要性が高まっています。
現代では、患者自身が情報収集を行い、能動的にクリニックを選ぶ時代になっています。
医療マーケティングを戦略的に行うことで、より多くの集患が期待できるでしょう。
医療マーケティングの注意点
医療マーケティングを行う際は、やみくもに施策を打つことを控え、患者の行動や心理を把握することを強くおすすめします。
患者が利用しやすい環境を整備し、信頼関係を構築していくことがとても重要です。
インフォームドコンセントの実施のほかに、受付窓口や看護師の対応などが患者の満足度を上げることに繋がります。
また、Webサイトやチラシなどの広告を行う際は、医療広告ガイドラインを遵守することが必要不可欠です。
禁止項目をしっかりと確認した上で、信頼性が高く、透明性のある情報を伝えましょう。
医療マーケティング戦略のプロセス
医療マーケティングの具体的なプロセスは、以下の通りです。
集患に力を入れたいクリニックや開業予定のクリニックは、この5つのプロセスを実施しましょう。
市場分析
最初は、自院が置かれている医療市場を分析します。
マーケティングは、市場（マーケット）をよく理解することがとても重要です。
地域特性や参入する医療市場の規模、患者が求めるサービスなどを調査します。
運営成功率やリスクなどを含むさまざまなデータを収集し、必要な情報を明確化していきましょう。
SWOT分析やアクセス分析などの手法を利用して客観的に分析することをおすすめします。
ターゲティング
ターゲティングは、自院が提供する医療を求めている層を考えることです。
市場分析で得た情報を考慮して、来院が見込まれるターゲット層を絞り込みましょう。
年齢や患者のライフスタイル、診療科目などの多くの要素からアプローチしたい層を定めることが重要です。
ポジショニング
ポジショニングは、自院がどのような立ち位置を目指すかを決定することです。
市場分析やターゲティングにより明確化した情報をもとに、価格や医療サービス、診療科目などが優位なポジションを設定しましょう。
また、設定した目標を達成するために、ポジショニング戦略を立案することも重要です。
マーケティングミックス
マーケティングミックスとは、患者に理想的な行動を促すために、マーケティング手法を組み合わせることです。
また、このプロセスの後に、施策の実行へ移るため、実行戦略とも言われています。
予算やスケジュールに合わせてどのマーケティング手法を組み合わせるか検討しましょう。
一般的にこのプロセスでは、「4P理論」や「7P理論」などを用いて戦略を立てます。
実行および評価
上記4つのプロセスで設計した戦略にしたがって、医療マーケティング戦略を実行します。
実行した活動の成果を評価し、改善点を見つけましょう。
改善点は、アクセス解析ツールやアンケートなどを活用することで、より集患が見込める戦略を構築することが期待できます。
改善点のあるプロセスを発見して、効果が最大化するまで「PDCAサイクル」や「OODAループ」などのフレームワークを回し続けましょう。
医療マーケティングの代表的な手法
この章では、医療マーケティングで実行されることが多い代表的な手法をご紹介します。
SEO対策
SEOとは、Search Engine Optimization（検索エンジン最適化）の頭文字を取った略称です。
Google、Bingなどの検索エンジンに正しく評価されるように対象のWebサイトを最適化させることを指します。
検索エンジンの評価アルゴリズムを考慮して、技術的にSEO対策をすることにより、狙ったキーワード検索でWebサイトを上位表示させることができます。
検索エンジンからの流入は、ユーザーが自発的に検索しているため、信頼度が高く、集患に繋がりやすいといった特徴があります。
MEO対策
MEOとは「Map Engine Optimization」（マップエンジン最適化）の頭文字を取った略です。
地図検索エンジンにおいて上位表示されるように最適化させることを指します。
また、MEOは日本独自の言い方であり、海外では、一般的に「ローカルSEO」と言われています。
経路の確認や口コミなどのクリニックの情報が見つけやすいため、通院意思が高い患者にリーチしやすいという特徴があります。
但し、MEOは、検索結果が常に改良されており、ABテストも頻繁に行われているといったデメリットもあります。
そのため、継続的な更新と管理が必要になり、手間と時間がかかってしまいます。
SNS運用
SNS運用は、幅広い企業のマーケティングに取り入れられている手法であり、短期間での集患率向上が目指せます。
さまざまなプラットフォームを活用することで、幅広い患者層へのアプローチが可能になります。
但し、医療広告ガイドラインや個人情報の保護に配慮しながら、情報発信することが重要です。
医療マーケティングの分析方法
この章では、医療マーケティングで取り入れられている代表的な分析方法をご紹介します。
どんな分析方法があるのか、きちんと理解しておきましょう。
診療圏調査
患者満足度、診療圏の調査は、アンケートやインタビューなどを通じて、患者のニーズや満足度などを把握する手法です。
患者の意見を直接把握することにより、患者中心のサービスを提供しやすくなるため、業務改善や満足度向上などが期待できます。
電子カルテの利用
電子カルテとは、診療録や患者の情報などを一括して電子情報としてデータベースに記録するシステムのことです。
精度の高いデータ収集が可能なため、課題解決や集客などに役立てられるでしょう。
また、業務効率向上や物理的な保管スペースの減少などのさまざまなメリットがあります。
自社サイトのアクセス分析
サーチコンソールなどのツールを利用して、アクセス分析を行うこともおすすめです。
Webサイトがどのように利用されているか把握することが可能です。
アクセスが集中しているページや離脱率が高いページなどを把握することによりサイトをブラッシュアップしやすくなります。
SWOT分析
SWOT分析は、自院の外部環境と内部環境を以下の4つの要素で要因分析する方法です。
- Strength（強み）
- Weakness（弱み）
- Opportunity（機会）
- Threat（脅威）
社内・社外のプラス・マイナスの各要素を客観的に把握することができ、現状の理解を深めることや戦略を立てやすくなります。
まとめ
医療マーケティングは、持続的な集患とクリニックの成長を実現するために必要不可欠です。
データをもとに実践を行い、業務改善を繰り返し続けましょう。
ターゲット層との相性の良い手法や予算に合った手法を把握し、マーケティング方法を最適化していくことを強くおすすめします。
