いま、クリニックの看板を見ると、「日帰り手術」ができることを宣伝しているところがあります。
手術と聞けば、総合病院のような医療設備が整っているところでしかできないと思われますが、手術の中でも比較的、簡易的な術式に関してはクリニックでも行うことができます。
今回は、開業するクリニックで手術室を設けることのメリットやデメリット、そして建物や設備において注意するポイントをご紹介します。
クリニックで日帰り手術が増えている
現在、日帰り手術ができるクリニックが増えています。
手術となればいくつもの医療機器具や設備を用意するだけでなく、環境や建物に対しても厳しい施設基準があるため、クリニックで手術を行うリスクが高く、採算が合わないとされています。
しかし、医療機器の進化は早く、機器が小さくなったり人間では難しい細部までの治療を可能にしています。
これによって、クリニックでも扱える医療機器が増えていることで、医師ができる簡易的な手術を行うことができるようになりました。
また、明確な定義はありませんが、日帰り手術とは、体に負担の少ない手術のことを言います。
反対にクリニックでも整形外科や産婦人科などでは、入院治療が必要となる手術を行なっています。
手術室を設けるメリット
クリニックも慈善事業ではないので、しっかりと利益が上げられることが必要です。
手術室を設けるメリットについてご紹介します。
2-1.外来患者を増やすことができる
クリニック経営において、外来患者様の来院数を増やすことが必要です。
最近では、同じ診療科が周辺にか開業することもあるので、患者様の取り合いになっているケースも珍しくはありません。
マーケティング的に考えれば、競合との差別化は必須であり強みになります。
同じことをしていては、比較され外来患者様の来院数が減少することも考えられます。
ではなぜ、日帰り手術が強みとなるのでしょうか?
クリニックで診察する中で、診断の結果から治療として手術が必要な患者様もいらっしゃいます。
そうなると、近くの大規模な病院に転院することが必要となります。
大規模な病院は、高度な診察や治療をしてもらえますが、待ち時間が長く患者様の体にも負担がかかります。
全ての手術をクリニックで行うことはできなくても、対応できる手術だけでもかかりつけ医にしてもらうことで、転院の必要がなく患者様も安心して治療を受けることができます。
いつもと同じクリニックで安心して治療が受けられるのは、患者様にとって大きなメリットですから、クリニックで手術ができるのは必然的に外来患者様を増やすことができるのです。
2-2.術後のフォローがスムーズにできる
大規模な病院での治療の特徴としては、重篤な症状や高度な治療を要する人をメインとしています。
つまり、手術をして術後が安定している人は、今後の経過観察については自宅に近いクリニックでお願いしますと言われるケースも珍しくありません。
こうした術後のフォローについて、これまで一度も診察をしていない、病歴や状態について把握ができていない患者様が、紹介状を持参して診察にくることが考えられます。
大きなリスクはありませんが、すぐには十分な対応ができないこともあります。
もし、元々は通院歴があり自身の診断で転院をさせた患者様なら、全体の流れを把握しているから、余分な検査で患者様に負担を与えることなく、スムーズに経過観察をしていくことができます。
手術室を設けるデメリット
手術室があることで、やはりデメリットとなることもあります。
3-1.対応できる建物を必要
手術室を建設する場合、法律によって施設基準が決められているので、基準を満たすようなクリニックを建設する必要があります。
手術室内の衛生面、埃が浮遊しないような工夫が必要です。
また、手術前後に処置や待機ができるような処置室も必要となります。
こうした部分を開業時から設計する場合には、手術室も含めた広い土地を探す必要があります。
郊外で土地が探しやすい地域なら問題はありませんが、都心や駅周辺などで開業を考える医師にとっては、それだけの土地や店舗を確保するのが難しい場合もあります。
3-2.設備投資に費用がかかる
医療機器は最新のものや、高度な治療ができるものほど高額になります。
手術の内容に関わらず、手術のために揃える医療機器はどれも高額です。
最近の患者様は、インターネットで事前にクリニックについて調べてから受診に来る方も少なくありません。
そのため、開業時に古いタイプの医療機器では、調べたら分かってしまうので新しい医療機器を揃えているクリニックを探します。
手術が必要でない患者様であっても、医療機器の良し悪しで受診を決めるケースもあるので、費用がかかってしまいますが、手術をするからにはクリニックの目玉となるように設備投資をしたいところです。
日帰り手術ができる診療科
日帰り手術では、患者様の体の負担が少ないものをいいますが、実際に日帰り手術をしている診療科について確認してみましょう。
4-1.眼科
眼科では、早い段階から日帰り手術を行なっており、開業する眼科クリニックの多くが手術ができることを宣伝しています。
例えば眼科できる手術はこちらです。
- 白内障術
- 翼状片
- 眼瞼下垂
これらは、衛生的な環境下の元、手術をする必要がありますが、患者様への負担が少ない形で行えるので、日帰り手術が可能です。
4-2.消化器内科
消化器内科では、胃、大腸などをカメラを使って検査をすることができます。
検査するだけなら内臓の様子を見るだけですが、実際にはポリープを採取することができます。
患者様には、手術というより検査の延長程度のような感覚で治療ができるので、体だけでなく不安も解消することができます。
※患者様の中には、内科と外科の違いが分かりにくい方もいるので、看板やホームページでは明確に示しておくことが必要です。
4-3.外科
新たに日帰り手術として注目を集めているのは、下肢静脈瘤です。
下肢静脈瘤とは、ふくらはぎに流れる静脈に何らかの理由で血のかたまりができ血管が膨らむ病気です。
大きさやはそれぞれですが、いくつもできる患者様もいらっしゃいます。
血管が膨らむことによって、ふくらはぎの辺りがボコボコするので人から指摘されやすく患者様にとってはストレスとなります。
下肢静脈瘤の治療としてクリニックでも手術できる環境を整えることで、治療することが可能となりました。
治療方法は、レーザーを使って血のかたまりを焼いていきます。
血管内で血のかたまりを焼いていきますが、激しい痛みはほとんど感じないので安心して治療を受けていただけます。
4-4形成外科
形成外科は、大手術となる皮膚移植から皮下腫瘍など取り除く切開術までと幅広いですが、比較的にはクリニックできる手術が多くあります。
- ほくろ除去
- 皮下腫瘍の切開
他にも美容整形となる二重まぶたのするなど、入院を必要としない手術に対応しています。
建物・設備で注意するポイント
手術室を設計する時に注意したいポイントについて紹介します。
最初に考えなくてはいけないのは、チリや埃などクリーンに保つ環境を作ることです。
空気中に舞うチリや埃にはウイルスが付着しているため、手術して目に見えない感染リスクを減らす設備が必要です。
医療用の空気清浄機を使い、空気洗浄度を1,000〜10,000レベルに保つことを目標としてください。
次に、ストレッチャーで患者様を誘導することを想定して、廊下の幅や動線を考える必要があります。
日帰りで帰るとはいっても、術後すぐに患者様が動けるとは限りません。状況を考えて設計してください。
手術を行うクリニックの規模としては60坪から100坪程度を見込んで土地探しをしていきましょう。
まとめ
今回は、クリニックで行う日帰り手術についてまとめてみました。
医療が発達して、それと一緒に医療機器の精度も上がっています。
こうした人の努力によって、これまだ難しった治療が身近なものとなり、患者様を助けることができます。
かかりつけ医にずっと診察してもらえるというのは、患者様にとっては一番の安心です。
クリニックでできることがあるのならば、取り入れていきたいですね。