医師としてどういったキャリアを積んでいくかは人それぞれです。最初は誰でも研修医として病院に勤めますが、ある程度医者として経験を積んだあとは開業する医者も少なくありません。
勤務医も開業医も仕事内容は同じですが、開業医は勤務医に比べて資金調達をしたり、経営の判断を下す必要があったりとするべきことがたくさんあります。それだけに、開業するタイミングをどうするかは非常に大切なポイントです。
かつて医者が開業する時期は大体40代くらいに集中していましたが、最近では開業する年代は幅広くなっています。開業するタイミングが多様化しているのです。
そこで今回はこれから開業しようとしている医師の方に向けて、開業する主な3つのタイミングをご紹介します。また、開業のタイミングを決めるポイントも解説しますよ。
開業するにはもちろん準備も必要ですから、勤務医の間に準備しておくべきこともまとめています。開業を目指している方はぜひ参考にしてくださいね。
一番多いのは40代前半。医師が開業するタイミング3つ
開業するタイミングを考えるにあたって、他の人がどの時期に開業しているかが分かると参考になりますよね。そこでまずは医師が開業する主な3つのタイミングをご紹介しましょう。
ボリュームゾーンは40代前半
医師が開業する年代として最も多いのが40代前半です。大学で6年間医学を学び、試験に合格すると早くて24歳で医師免許を取得できます。そこからさらに2年研修医として臨床経験を積むことが義務付けられています。つまり、開業できる一番若い歳は26歳になります。
しかし、さすがにこの歳で開業する人はあまりおらず、そこからさらに10年ほど現場経験を積み、専門知識や技術がついてから開業する人が多いです。医師としての自分に自信がつく頃ですし、資金もかなり貯まっている頃なので開業するタイミングとしてはとても良いですね。また、病院を建てるには銀行からの融資も必要ですが、40代にもなれば審査にも通りやすくなります。
ここが一番のボリュームゾーンなので、開業を考えるならとりあえず40代前半を目安にすると良いでしょう。
早い人は30代前半から
40代前半で開業する人が多いものの、最近ではそれよりも早い30代前半で開業する人も増えています。
最短で開業できるのは26歳ですが、2年の前期研修が済んだあと、3〜5年ほどの後期研修を積む中で、さらに専門性を高め、研修が終わったところで開業するのです。後期研修が終わる頃にはやっと一人前の医師と見られるようになるので、良いタイミングになります。
従来よりも早く開業する医師が増えているのは、病院に適した土地がだんだん少なくなっていることや、学費や医療機器に投資したお金を早く回収しようと考えていることなどが理由として挙げられます。
30代のうちに開業するならそれを見越して早くから計画を立てて準備する必要があります。
50代・60代で開業する人も
ボリュームゾーンを過ぎた50、60代で開業する人も増えてきています。近年、日本の平均寿命が延びたことから、50代や60代が昔よりも心身ともに若くなっています。そのため、これくらいの年齢になってからでも開業しようとするケースが多くなっているのです。
50代、60代は医師としての経験を30年〜40年積んでいるので、専門性はかなり高くなっています。ただし、勤務医としてのキャリアが長いだけに、開業医に必要な経営者視点に切り替えるのが難しくなります。また、開業に当たってたくさんすべきことがあるので、体力が持つかどうかという問題もあります。
ただし、開業を見据えてきちんと準備していればこの年代での開業もうまくいくでしょう。
開業するタイミングを決めるポイント2つ
現在は医師の開業のタイミングが多様化していることから、いつ開業すれば良いのか悩ましいという方もいるでしょう。そこで次に医師が開業するタイミングを決めるポイントを2つまとめました。
医師としてのキャリアプランを考える
いつ開業するか迷ったらまずは医者としてのキャリアプランを考えてみましょう。どれくらい現場経験を積みたいか、専門性をどれくらいつけたいか、何歳までには開業したいのかなど、医者人生の詳細を考えると、開業すべきタイミングも見えてきます。ここでしっかりプランを考えることで開業に向けた準備もできるようになります。
一人の人間としてのライフプランを考える
開業するタイミングを考えるならキャリアプランだけでなくライフプランを考えることも重要です。何歳で結婚したいか、子供はいつ頃までに欲しいか、何歳から老後の生活を始めるのかといった人生の計画を立てることで自ずと開業の適切なタイミングが見えてきます。特に女性は出産、子育てと仕事を離れる期間もあるので、ライフプランをしっかり立てる必要があります。
経営者視点で物事を考える。勤務医の間に準備しておくべきこと8つ
勤務医と開業医は業務内容は同じでも必要とされるスキルが違います。また、開業するまで数え切れないほどのタスクがあります。つまり、開業に備えて準備が欠かせません。そこで最後に開業医になるために勤務医の間に準備しておくべきことを8つご紹介しましょう。
医療スキルを身につける
当然ですが、開業するに当たって医療技術を身につけておくことはとても重要です。最低条件といっても過言ではありません。勤務医の間は分からないことや相談したいことがあればすぐに先輩医師のところに行くことができましたが、開業医になるとそれができず、基本的に自分で解決することになります。
そこで開業医になるなら、将来独り立ちできるほどの知識をつけることを念頭に置いて勤務医の間に専門性を高めるように努力しましょう。
開業時期を考える
開業する歳を決めたら、次は開業する具体的な時期を考えましょう。一年中どの時期に開業しても同じなのでは?と思うかもしれません。しかし、開業時期は病院の経営を軌道に乗せる上で非常に大切です。
病院を開くには建設費や医療機器を揃えるための資金などかなりのお金がかかります。また、開業してからもテナントを利用しているなら家賃がかかるため、経営を続けるには開業してからすぐに収入を得ることが大事なのです。
そこで耳鼻科なら花粉症の患者が増える春、内科なら風邪をひく人が増える寒い時期など、ニーズがある時期に開業することを考えましょう。
スムーズな退職に向けて引き継ぎをする
開業するということはそれまで勤めていた病院を辞めるということです。一人医師が減るということは病院にとっては正直痛いもの。それなのにも関わらず自分のことしか考えず引き継ぎもせずに辞めてしまえば病院の関係者に恨まれますし、開業した病院に良くない噂が出るかもしれません。
そこで円満に退職するためにも自分が去ったあとでもスムーズに仕事が進むようにしっかり引き継ぎをしておきましょう。
資金調達
開業にはとにかくお金がかかります。病院の建設、医療機器の購入、家賃、人件費と多くの出費があります。お金が十分になければ開業できませんし、開業できたとしても、資金繰りが苦しくなって、結局すぐにお店を閉めなければいけなくなってしまいます。
そこで開業するなら勤務医の間からしっかりお金を貯めておきましょう。また、銀行に融資の相談もしましょう。資金は早く開業しようと考えている人ほど特に意識して準備した方が良いでしょう。
土地探し
病院をどこに建てるかはとても重要で、開業後の収入を大きく左右します。立地が良いところで開業できれば患者さんも集まりますが、立地が悪いと患者さんが来ず、収入も少なくなります。
そこで勤務医として働いている間から、どこかに良い土地がないか目を光らせておきましょう。また、経営が上手くいっている病院がどのような土地にあるのかを考えると自分の病院の場所を考えるときに役に立つでしょう。
設計、施工、建設の準備
土地が決まれば次は設計、施工、建設の準備に入ります。このあたりの作業は専門の会社に任せることになります。建設会社はたくさんありますが、利用しやすい病院にするためにも病院やクリニックの建設経験がある会社に頼むと安心です。知識が豊富で、実績もあり、さらにこちらの意見にもしっかり耳を傾けてくれるような信頼できる会社を見つけましょう。
経営者視点で物事を考える
勤務医と開業医の大きな違いは経営に関わるかどうかです。勤務医の間は自分の仕事だけに集中できましたが、開業医になると月の患者数や収入など経営に関わるようになります。つまり、勤務医とは違った経営者視点を持たなくてはいけません。この視点はある日から急に身につけられるものではなく、日頃から経営者として物事を考えるようにしてやっと身につきます。そこで開業がいよいよ本格的に見えてきたら単に医者としてではなく、経営者視点で物事を考えるようにしましょう。
開業経験者に相談する
開業は自分一人だけで何もかもやろうとすると必ずどこかで分からないことが出てきます。そこで開業経験者の知り合いを増やし、何か分からないことがあればいつでも相談できるようにしておきましょう。相手も自分が一度通った道で大変さも経験しているので快く教えてくれるはずです。いただいたアドバイスはかなり参考になるでしょう。
開業には人脈を増やすこともまた大切なポイントなのです。
まとめ
医者が開業する主なタイミングは40代前半でしたが、最近は30代前半や50代・60代で開業する人も増え、多様化が広がっています。開業するタイミングを決めるためには医師としてのキャリアプランとライフプランの両方を考えることが大切です。先の人生をしっかり見据えていればしっかり準備した上で開業医としてのキャリアを開けるでしょう。
また、開業するためには様々な準備が必要です。今回ご紹介した勤務医のうちからできる準備をしておき、スムーズに開業に移れるようにしましょう。