最近は様々なシステムが各医療機関に導入され医療機関ごとで医療事務員を始めとする作業内容が多岐に分かれています。システム別に紹介します。
システムは、紙カルテ運用か電子カルテ運用に分かれます。
ここ十年ぐらいの間に電子カルテを採用する医療機関が多くなってきました。私は十五年間で約百軒の診療所開業支援を実施してきましたが、十五年前はほとんどの医療機関は新規開業であっても紙カルテが中心でした。
紙カルテ運用
紙カルテで診療をされている医療機関では、新しい患者様が来院されると、一人ずつのカルテ用紙を用意してカルテを作成します。その際、紙カルテに記入した保険証情報と同一の内容をレセコンにも患者登録をします。
患者登録が終わったら、紙カルテを診察室に運びます。診察が終了したら診察内容を確認してレセコンに入力します。計算された数字を紙カルテに転記します。会計が終了したら、所定のカルテ棚に収納します。
再診(既にカルテが作成されている方)が来院された場合は、カルテ棚から患者様のカルテを探し、患者様ごとに記入された注意事項を確認してから診察室にカルテを運びます。
収納時に院内で決められたカルテ保管ルールを無視した方法でカルテ棚に保管すると、患者様のカルテを探すのに何分もかかるので、保管ルールを確認してから、収納します。
アイウエオ順、保険者別のアイウエオ順、患者登録番号順……等の保管方法があります。
アイウエオ順を採用している診療所では、サ行が常に満杯になっています。佐藤さん、鈴木さん……。ラ行はガラガラです。
また、地域によって同じ姓ばかりの住民が居住している所があります。同姓同名も多数ありますので患者登録番号順がメインになっています。
何年も通院されている患者様のカルテは段々分厚くなってきて、時々修繕が必要です。
クリニックによっては、毎年全てのカルテをメンテナンスしている所もあります。眼科、整形では最近の新規開業であっても、運用のしやすさから紙カルテを選択する所もあります。
紙管理によるメリットがあるからです。カルテは最終診察から五年間保存しないといけないという規定があります。紙カルテの医療施設ではその保管に苦労されています。
電子カルテ運用
電子カルテは初診の患者様の登録を直接レセコンに入力するので、診察までの待ち時間を短縮できます。
診察が終了すると、基本的には診療内容が診察時に入力されているので、窓 口で再度計算・入力することはなく、各種書類(処方箋、領収書……等)を印刷し、患者様をすぐにお呼びし、窓口会計をしていただけます。
ただ、電子カルテを誰が入力しているかによって医療事務員の業務が違ってきます。多くの医療機関では医師が入力を全てしていますが、医療機関によっては一部またはほとんどを医療事務員(クラークまたはシュライバーと呼ばれています)が入力している所もあります。
このシステム運用をしている医療機関においては、基本全ての医療事務員がクラーク業務をできるように指導されます。窓口における患者様対応も大変な業務ですが、クラーク業務は医師と患者様との会話を聞き逃すことなく入力をすることが求められますので集中力がかなり必要となります。しかし、医師の片腕という重要な業務となり、やりがいのある業務です。
初心者にはできない業務なので、新入社員はまずは窓口業務から始まります。しかし、診察室での入力ミスがある可能性もあり、窓口医療事務員は医師、先輩社員を最終段階でチェックするという重要なポジションでもあるため、日々学習が必要になります。
出典:医療事務を目指す方へ勉強する前に読んでほしい本